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LSIロジックが自作PCユーザーに注目する理由

» 2010年11月26日 18時49分 公開
[長浜和也,ITmedia]

まずは米LSI本社の人に聞いてみよう

米LSI ワールドワイド・チャネル・セールス&マーケティング担当ディレクターのブレンド・ブランチャード氏

 LSIロジックのラインアップは、ハイエンドなストレージ用高速インタフェース関連製品がメインだ。6Gbps対応のSASコントローラとそのコントローラを搭載したインタフェースカード、そして、そのインタフェースカードを組み合わせて多数のデータストレージを搭載できるストレージシステムまでそろっている。その多くがシステムインテグレータや情報システム部門などの法人向け製品で、ストレージシステムは数百万円と、個人ではとても購入できない価格帯であったりする。

 ただ、そういうLSIロジックが、自作PCユーザーのイベントなどで展示ブースを設けて、来場者との交流に積極的に取り組んでいる。大規模ストレージシステムや高速インタフェース関連製品をSIに対して訴求すると同時に、自作PCユーザーにも自分たちの存在をアピールする活動をするなど、その方向性は両極端にも見える。果たしてLSIロジックの軸足はどちらにあるのだろうか。ひょっとすると自作PCへの訴求は日本独自の活動で米LSI本社の許可なしなのか?

 そんな、疑問を抱きながら、米LSI本社から来日したワールドワイド・チャネル・セールス&マーケティング担当ディレクターのブレンド・ブランチャード氏に話を聞いてみた。

 ブランチャード氏によると、米LSI、そして日本で活動しているLSIロジックのメイン事業は、やはりストレージ部門だという。3-Wareの買収などでRAIDコントローラ搭載インタフェースカードや6Gbps対応製品では、業界で最も多くの製品を出荷するまでになった。6Gbps対応製品はこれからも積極的に展開していくとブランチャード氏は述べている。

 SI企業は、PCを自作するようにストレージシステムも柔軟に構築できるように多様な製品を用意してほしいと考えており、LSIは、その要求に応えるためにさまざまはカテゴリーの製品を投入していきたいと考えている。それゆえ、すべてのカテゴリーで6Gbps対応の製品をそろえるなど、最新の規格を採用する製品を充実させるだけでなく、マルチポートアダプタやストレージ管理用ソフトウェア、ストレージサブシステムといったLSIにとって新しいカテゴリーの製品を開発して出していくことも重要な活動と認識している。

 ブランチャード氏は自分たちの優位性について、「LSIの強みとしてはコントローラというチップからインタフェースカード、そして、ストレージサブシステムまですべてのカテゴリーに対して製品を提供できることだろう。これができるのはLSI以外にはない」と語っている。

LSIは6Gbps対応製品を積極的に展開するとともに、ストレージサブシステムなどの“新しい領域”の製品にも挑んでいる(写真=左)。ブランチャード氏は、LSIの強みとして、コントローラなどのチップからHDDを多数実装できるストレージサブシステムまで、すべて自分たちの製品でSI企業に提供できることを挙げている(写真=右)

ストレージシステム最大手のLSIが自作PCユーザーに期待すること

 このように、LSI(と日本法人のLSIロジック)はSAS対応インタフェース製品の最大手として、ハイエンドストレージシステムに耐えられる高品質の製品を提供するベンダーとして認識されている。また、LSIは業界の標準化団体に対しても積極的に参加している。このような標準化策定作業に参加することで、革新的な技術を市場にいち早く投入できる立場にある。

 ブランチャード氏が語った内容は、SI向けの法人需要に関するテーマに終始した。では、日本でLSIロジックが行っている自作PCユーザー向けのプロモーションはどのように評価しているのか。そもそも、知っているのか知らないのか?

 まず、LSIロジックが自作PCユーザーに対して、何を目的としてプロモーションを行っているのか、LSIロジック マーケティングコミュニケーションズマネージャーの秦和哉氏に確認してみた。秦氏によると、自作PCユーザーの多くは高いパフォーマンスを志向しており、その中には高性能のストレージコントローラを組み込んでいるユーザーも少なくないという。また、PCの自作だけでなく、ビデオストリーミングサーバを構築するユーザーもいて、そのようなユーザーもRAIDコントローラを搭載したマルチポートインタフェースカードを使っている。

 もともと、LSIロジックが扱っているインタフェースカードはコンシューマーユーザーも想定した価格設定をしているので、自作PCユーザーに向けて訴求するのはそれほど不自然ではないというのが秦氏の見解だ。そして、この日本における自作PCユーザーに向けた活動は米国のLSI本社でも把握しているいう。ブランチャード氏は、自作PCユーザーのアイデアは独創的で、彼らと交流をすることは新しい利用方法を学ぶ貴重な機会になると考えている。

 LSIのビジネスは、あくまでもSASなどを利用したハイエンドストレージシステムがメインだ。しかし、日本でLSIロジックが展開している自作PCユーザー向けのプロモーションで得られるフィードバックは、LSIの製品開発に貴重なヒントを与え、それが、LSIが参加する標準規格の策定作業などに取り入れられて、自作PCユーザーのストレージ環境を将来的に進化させることにつながっているといえるだろう。

SASインタフェースも搭載する6Gbps対応インタフェースカードは自作PCユーザーも購入しているという(写真=左)。6基のSSDを1枚のPCI Express拡張カードに搭載した製品。価格は「200万円に届きますね」とのこと(写真=右)

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