ワークステーションらしいワークステーション「HP Z800」を試す:元麻布春男のWatchTower(1/2 ページ)

» 2009年06月19日 11時44分 公開
[元麻布春男(撮影:矢野渉),ITmedia]

PCとワークステーションは何が違うのか

「HP Z800 Workstation」

 PCとワークステーションは何が違うのか。昔からよく議論されたテーマの1つである。

 20年近く前、ワークステーションの主流がRISCプロセッサを搭載したUNIXワークステーションであった時代は、プロセッサのアーキテクチャやOSに差異を見つけることも可能だった。ところが、ワークステーションのCPUがPCと同じx86になり、OSも同じWindowsになってしまうと、2ソケット構成にでもしない限り、スペックからPCとワークステーションの差を見つけることが極めて困難になってしまった。ベンダーによっては呼び名までPCワークステーションとなり、余計に差が分かりにくい。

 両者の差についてベンダーは、負荷の高い業務アプリケーションの長時間連続稼働を前提に設計、製造しているものがワークステーションだという。それは例えば、ワークステーションにはECC付きのメモリモジュールを採用する、といったスペックにも現れる。ところが、こうした違いを一般のユーザーがパッと見て分かるかというと、必ずしもそうとは限らない。結局、一般的なPCとは少し違うグラフィックスカードが載った、少し高いPCといった認識を持たれることが多かったように思う。

持ちやすいハンドルを標準で装備

 日本ヒューレット・パッカード(HP)のパーソナル・ワークステーションZ800シリーズは、そうしたユーザーが見ても、PCとは違うことがハッキリと理解できる製品だ。まず最初にそれに気がつくのは、本機を梱包から解く時だろう。標準構成時のZ800の重量は約21キロ。これは一般的なタワー型デスクトップPCのおおよそ2倍、省スペースタイプであれば3倍以上に相当する。

 本機には上部の前後2カ所に持ち運び用のハンドルが用意されているが、それなしには箱から出すのも大変だ。ハンドルのついたワークステーションというと、アップルのMac Proが思い浮かぶが、Z800シリーズのハンドルは直方体のフォルムに埋め込むようにデザインされているため、上部にバックアップデバイスなどを載せておくといった使い方でもじゃまにならない。

 約21キロという重量の秘密は、本体がスチール製のシャシーと厚手のアルミ板によるサイドパネルで構成されていること。サイドパネルは、複雑な曲線で構成されており、たたいてもコツコツとした音が返ってくる。どこをとっても薄っぺらい部分がなく、非常にガッシリとした作りだ。

 本機は全部で10個の冷却ファン(2ソケット時、グラフィックスカードを除く)を内蔵しているが、パワーマネージメントが有効にさえなればそれほど騒音が気にならないのは、この質量がノイズや振動を抑え込むことに貢献しているからだろう。

最上位のZ800とミドルレンジのZ600には、上部に2つのハンドルが用意されている(写真=左)。重量は20キロを超えるが、ハンドルがあるため本体は持ちやすい(写真=右)。ボディサイズは203(幅)×525(奥行き)×444(高さ)ミリある

数万円以上の価値が感じられる高品質なボディ

 本機の内部へアクセスするには、サイドパネル上部のロック解除を兼ねたノブを手前に引いて、パネル全体を取り外す。ノブを引く感覚は、乗用車のドアを開くそれに近い。本機の外観デザインは、BMW Group DesignworksUSAの工業デザインを参考にしたということだが、このサイドパネルのラッチにも生かされているようだ。

 サイドパネルを開くと、自動車ライクなデザインという印象はますます強まる。内部は冷却風を適切に流す目的から、樹脂製のフェアリングで覆われており、サイドパネルを開いたところは、自動車のエンジンルームを連想させる趣がある。

 上下に2分割されたフェアリングは、上はCPUとメモリ、下は拡張スロットとストレージデバイスベイをカバーする。基本的には、それぞれのエリアの冷却風が前から後ろへストレートに流れるようにデザインされている。フェアリングそのものは軽量で、簡単に工具を使わず取り外すことができるが、冷却風の流れを計算してかなり複雑な形状になっている。自動車を連想させるイメージから、「空力」などという言葉が頭に浮かぶほどだ。これだけでも単に部品を寄せ集めただけのPCと一線を画すことは間違いない。このボディだけでも、ゆうに数万円以上の価値が感じられる。

Z800の背面。無数の穴が開いている
サイドパネルを取り外したところ
Z800の前面。精悍(せいかん)なデザインだ

頑丈に作られたサイドパネル(写真=左)。効率的なエアフローを実現するために取り付けられたフェアリング(写真=右)

 フェアリングを取り外すと、内部の冷却ファンやマザーボードが現れる。ファンは、ボディ背面に2つ、ストレージベイ下部のHDDベイに2つ、メモリモジュール上に内部フェアリングと一体になった形で2つ、そしてシャシー最上部の電源ユニットに2つある。電源ユニットは空冷的には完全に独立しており、ボディ内の冷却に電源ユニットのファンは利用しない。この8つが標準で、構成に応じてCPUのヒートシンクに最大2つ、2枚のグラフィックスカードに各1つの計12個の冷却ファンが搭載される。コールドスタート時は、これらのファンがいっせいにフル回転するため驚かされるが、セルフチェックが完了しパワーマネージメントが有効になると、ファンの回転数が下がり、騒音もそれほど気にならないレベルになる。

背面やCPUには90ミリ角の冷却ファンが2基ずつ並ぶ
メモリスロットには80ミリ角のファンを2基実装している
こちらはHDDベイに取り付けられた90ミリ角のファン

Xeon 5500番台のCPUとIntel 5520チップセットを採用

5500番台のXeonを最大2基搭載可能だ

 マザーボードは、インテルの5520チップセットを用いた独自のもの。最上部に12本のDIMMスロット(ソケットあたり6基)があり、アンバッファドあるいはレジスタードのECC付きメモリ(最大DDR3-1333MHz)を搭載可能だ。アンバッファドとレジスタードは自動認識されるが、両者を混在させることはできない。現時点では4GバイトDIMMを12本備えた48Gバイトが最大メモリ搭載量となるが、年内には8GバイトDIMMのサポートで96Gバイトメモリが実現するほか、Meta RAMによる16GバイトDIMMで最大192Gバイトのメモリが搭載可能になる見込みだ。メモリスロットの上部はファン付きのフェアリングでカバーされており、大容量メモリの発熱にも対応できるデザインとなっている。

 搭載可能なCPUは、インテル最新のNehalemアーキテクチャに基づくXeon 5500シリーズが最大2基となる。シングルCP、デュアルCPU、いずれの構成でも購入できる。ローエンドのE5504(2.0GHz)からハイエンドのW5580(3.2GHz)まで、幅広くサポートする。今後もインテルの発表に合わせて、適宜サポートCPUは拡張される予定だ。マザーボード上、2基のCPUソケットは直列しているが、前面側CPUに取り付けられたヒートシンクの排気が背面側のCPUに影響を与えないよう、フェアリングが装着されている。

Z800に採用されるマザーボード。チップセットはIntel 5520で、SASコントローラを実装する
12本のメモリスロットを搭載し、将来的には最大192Gバイトまでサポートする
マザーボードの裏面

 CPUの前方には、前面アクセス可能な5インチベイが3基用意されており、光学ドライブと3.5インチFDDなどが取り付けられる。その真下、下部フェアリングの前方には3.5インチHDDベイが4台分用意される。HDDは樹脂製のマウントに装着して固定するが、取り付けに工具は要らない。メンテナンス作業全般において工具を必要としない、というのはZシリーズワークステーションに共通する特徴で、上の光学ドライブや拡張スロットへのカードの取り付けなども工具は必要としない。

HDDベイは4基あり、最大4Tバイトまで選択が可能だ
HDDのカートリッジ。工具を使わずに着脱できる
5インチベイは3基あり、Blu-ray DiscドライブやFDDなどが選べる

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