Z800シリーズでは、チップセットが内蔵するSATAコントローラに加え、オンボードにLSI Logic製のSASコントローラを搭載しており、一般的なスピンドル回転数7200rpmのSATAドライブだけでなく、スピンドル回転数15000rpmのSASドライブをサポートする。消費電力の大きなSASドライブを長期に渡り安定して運用するため、HDDベイの真後ろには、冷却ファン2基が取り付けられており、高熱に弱いHDDを守っている。
HDDベイの後方に用意される拡張スロットは、グラフィックス用(PCI Express Gen2 x16)の2基に加え、PCI Express Gen2 x8が2基、PCI Express Gen2 x4とPCI Express x4が各1基の計6スロット(加えてPCIスロットが1本で、合計7スロット)。標準構成にはグラフィックスカードが含まれていないが、CTOオプションあるいはオプションとして1万円ちょっとで購入できる2Dグラフィックス対応のカードから、40万円を越えるハイエンドのQuadro FX 5800まで豊富にそろう。
Z800では、4Gバイトのグラフィックスメモリを搭載するこのQuadro FX 5800のSLI構成にも対応した。さらに仮想化ソフトウェアのParallels Workstation Extremeを組み合わせることで、特定のゲストOSに片方のグラフィックスカードのリソースを占有させる、といった使い方が実現する。このZ800は、Parallels Workstation Extremeの認定プラットフォームだ。
こういったヘビーユースを支えるのは、変換効率の高い(80 PLUS SILVER対応)1110ワット電源の採用だ。Z800の電源はボディ内の最上部に、シャシーの前後を貫通する形で実装されている。電源ユニットはシャシーとコネクタで接続される仕組みになっており、ケーブルの接続を必要としない。ハンドル1つで簡単に取り外し、交換することが可能だ。また、取り外した状態で電源に接続することで、電源ユニットが正常に動作しているかどうかのセルフチェックを行うこともできる。通常はなかなか気づきにくい電源ユニットのトラブルも、簡単に問題の切り分けができるというわけだ。
Z800の真価を図る最もよい方法は、高価な業務用アプリケーションを長時間稼働させ続けてみることだろうが、あいにくとそんな時間や環境を簡単にそろえるのは容易ではない。ここでは評価機で一般的なPC向けのベンチマークテストをはじめとした、いくつかのテストを実行して、その片りんだけでも探ってみることにした。また、比較用のPCでも同じテストを実行している。
| テストに試用したPC | ||
|---|---|---|
| 項目 | Z800(評価機の構成) | 比較用PC |
| CPU | Xeon W5580(3.2GHz)×2 | Core i7 Extreme 965 (3.2GHz) |
| マザーボード | HPオリジナル | Intel DX58SO |
| チップセット | Intel 5520 | Intel X58 Express |
| メモリ | 1GB×4(ECC付きDDR3-1333) | 1GB×3(DDR3-1333) |
| グラフィックス | NVIDIA Quadro FX 4800 (GT200GLコア) | ATI Radeon HD 4850 |
| グラフィックスメモリ | GDDR3 1.5GB | GDDR3 512MB |
| SAS I/F | LSI Logic(オンボード) | − |
| HDD | SAS 147GB(富士通 MBA3147RC) | Serial ATA 500GB(HDS725050KLA360) |
| 光学ドライブ | 日立LGデータストレージ GH40L | − |
| OS | 32ビット版Windows Vista Business(SP1) | |
一般的なPC向けベンチマークテストの結果だが、多くのテストでZ800と比較用PCの間に大きな差は見られない。特にCPUについて大きな差が見られないのは、比較用PCがクアッドコア+HTをサポートしており、軽くスレッド化されたアプリケーションに対しては十分な対応力を持っているためだろう。言い換えれば、Z800の真価を発揮させるには、もっと重い負荷が必要なのだと思われる。
そんな中にあって明らかに性能差が現れているのは、HDD関連のテストだ。言うまでもなく15000rpmのスピンドルを持つSASドライブの威力だが、ノイズレベルもそれなりに大きい点を覚悟しておく必要がある。逆にスコアがよくないのはゲーム/DirectX系のテストで、3DMark Vantageは途中で止まってしまったため、表からは割愛してある。これはグラフィックスカードの性格(ハイエンドOpenGL向け)を考えれば、やむを得ないところだろう。どんな目的でも、一番価格の高い製品が一番よいとは限らない。
そこで、もう少しワークステーショングラフィックス寄りのベンチマークテストを行った。CINEBENCHは、マルチコアCPUのデモンストレーション用としては定番だが、やはり論理16CPU(物理8コア+HT)の威力は大きい。OpenGLでの性能がRadeonを下回るのは、CINEBENCHの描画エンジンがQuadroのチューニング向きではないことが大きいのだろう。
それに対して、最後に行ったSPECviewperf 10.0では、Quadroの強みが十分発揮されている。シングルスレッド時のスコアがRadeonを用いた比較用PCを大きく上回るだけでなく、スレッド数を増やした際の伸び率の高さが目を引く。特に3ds Max、Maya、SolidWorksのテストで伸びしろが大きい。これらのアプリケーションには最適なワークステーションであることは間違いない。
ここで用いた評価機は、ハイエンドCPUのデュアルソケット構成で、グラフィックスカードにも17万円台(CTO構成時)の製品が使われている。HDDもSASドライブで、直販価格は90万円近い。誰でも気軽に買えるというわけには行かないが、最小構成のOSなしモデル(グラフィックスなし)であれば21万円台からと意外に安価に購入できるし、随時開催されるキャンペーンをうまく活用すれば、さらに安く買うことができるだろう。長期に渡る利用、高負荷アプリケーションの利用を考えているユーザーは、導入を検討する価値があるといえる。
究極の「Z」が今ここにある――日本HP「Z Workstation」が示す近未来
ハイエンドPCとワークステーションの境界線を考える
「Z」の名を冠する“究極のWS”──日本HP、デスクトップWS新シリーズ「Z Workstation」を投入
「こういう時代の答えだ」──Nehalem世代Xeonを国内で発表
Nehelem世代の「Xeon 5500」発表
アップル、“Nehalem”世代に生まれ変わった「Mac Pro」
今度の新型Macシリーズは何がスゴイのか
「企業の効率化を推進する」――デル、Xeon 5500搭載ワークステーション
Nehalem、正式発表──「Core i7」の機能と導入メリットを考える
Nehalemを理解しよう
Intel、最初のNehalemプロセッサを「Intel Core i7」にCopyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.