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「こういう時代の答えだ」──Nehalem世代Xeonを国内で発表

» 2009年04月06日 18時00分 公開
[長浜和也,ITmedia]

革命的な技術で前に進んでいかなければならない

 今回の説明会は、先日発表されたXeon 5500シリーズによって可能になるサーバプラットフォームの性能向上と投資したコストを早期に回収できる高い効率をアピールするものだ。そのために来日した米Intel 上席副社長 兼 デジタル・エンタープライズ事業本部長のパット・ゲルシンガー氏の講演に先立って、インテル代表取締役社長の吉田和正氏は、経済状況が悪化しているタイミングでXeon 5500が登場したことについて、「こういう経済状況だからこそ、革新的な技術で前に進んでいかなければならない。Xeon 5500シリーズは、高性能に対する高まるニーズ、求められる低消費電力、使用効率を高める仮想化技術などにおけるインテルの答えだ。日本法人としてはXeon 5500シリーズの利点を推進することで、市場の活性化に貢献したい」と述べた。

 ゲルシンガー氏は、講演の冒頭で「Xeonの元となる、標準量産型サーバというカテゴリーを確立した」と評価されているPentium Proを示して、当時の最も高い技術を取り入れた最新で高度なX86系サーバ向けCPUが登場した当時、インテルのサーバはファイルサーバやプリンタサーバなどの比較的重要でない業務に使われていたが、現在では80%のサーバでX86系CPUが導入されている状況を紹介している。

 加えて、インテルが重視している組み込み型インターネットシステムでは、高い効率と拡張性に優れたサーバプラットフォームが望まれているが、それもXeon 5500の登場によって可能になるという見解も示した。

Xeon 5500シリーズで市場の活性化に貢献したいと述べるインテル代表取締役社長の吉田和正氏(写真=左)と、Xeon 5500シリーズのパッケージとウェハを手にしたIntel 上席副社長兼デジタル・エンタープライズ事業本部長のパット・ゲルシンガー氏(写真=右)

ゲルシンガー氏がお気に入りのIntel Turbo Boost Technology

 ゲルシンガー氏は、工業製品の開発における問題点を航空機の開発に例えて紹介している。そこでは、航空機に対して求められる「超音速飛行」「大量輸送」「長距離飛行」は、素材などの物理的制約ですべてにベストな性能を持たせることが不可能としている。しかし、ゲルシンガー氏は、インテルが手がけている半導体の開発では、シリコンであるがゆえに、1つの製品開発において「性能」「スループット」「エネルギー効率」という相反する要素でベストなものを導入することが可能であると説く。

 45ナノメートルプロセスルールとHigh-kゲート絶縁体を導入したクアッドコアのXeon 5500シリーズは、相反する要素でベストな性能を発揮することで、ゲルシンガー氏に「これを実現したオレゴンのチームに脱帽です」と言わしめたが、同時にゲルシンガー氏は、「コアだけでなく、アンコア部分の設計改良も素晴らしい」とアピールしている。ここで紹介されているのは、従来の製品に対して群を抜く効率性と新技術の導入で向上した仮想化性能だ。ほかにも、Nehalemコアの導入によって実現した、CPUに統合されたメモリコントローラで制御される3チャネルメモリバスや、CPUの外部やほかのCPUとのリンクに使われるQPI(QuickPath Interconnect)などによって大幅に改善された帯域幅も紹介されている。

製品の開発で求められる性能には、実現不可能な相反関係が存在する(写真=左)。しかし、Xeon 5500シリーズで困難を克服したオレゴンの開発チームを、ゲルシンガー氏は「彼らに脱帽する」と称えた(写真=右)

 特に、ゲルシンガー氏が「最も気に入っている新しい技術」として取り上げたのが、「Intel Turbo Boost Technology」だ。Nehalemコアで導入されたこの技術はCore i7シリーズにも実装されているが、システムの負荷や処理しているスレッドの数に合わせて、マルチコアのうち、いくつかのコアを休止させ、そのおかげでできた熱設計のマージンを使って、動いているコアの動作クロックを上げるものだ。説明会では、ベンチマークテストが走っているシステムの負荷に合わせて、マルチコアのいくつかがアイドル状態になり、それと同時に動いているコアの動作クロックが上がる状況がリアルタイムで示された。

Nehalemコアを採用したXeon 5500の導入によって、プラットフォームも一新されるだけでなく(写真=左)、Nehalemに実装された新しい技術も利用できるようになる(写真=右)

Xeon 5500から導入されたIntel Turbo Boost Technology(写真=左)。説明会では、動作するコアと変化するクロックの変化がリアルタイムで紹介された(写真=右)

インテルが示した従来のXeon 5000番台シリーズとXeon 5500シリーズとで比較したパフォーマンスの違い(写真=左)。インテルは、サーバベンダーが測定したベンチマークテストの結果でも従来を超える値が続出したことをアピールしている(写真=右)

厳しい経済状況だからこそ“Xeon替え”

 説明会の冒頭で吉田氏が述べたように、厳しい経済状況において、ユーザーにサーバの更新をうながすのは難しい。Xeon 5500シリーズの発表リリースでインテルは、大規模データセンターで稼働している既存のサーバシステムをXeon5500シリーズを導入した新しいプラットフォームに変更しても、性能効率の高さや電力消費などの改善によって生じるランニングコストの削減によって、購入コストは8カ月程度で回収できると説明している。ゲルシンガー氏も、説明会の講演でこの点に言及し、2008年のデータでIT予算の用途として最も高い比率を占めているのが保守コストであって、Xeon 5500シリーズへの更新でこのコストが大幅に削減されると主張している。

 説明会では、「2005年導入のXeonサーバ184台を同じ台数のXeon 5500シリーズに更新すると最大9倍のパフォーマンスを発揮し、年間電力コストをおよそ18%削減」「(ほぼ同じ性能を発揮する)21台のXeon X5500サーバに更新すると年間電力コストを92%削減できて購入コストを8カ月で回収」という試算が示されたほか、サンマイクロシステムズのUltraSPARK T2+やIBMのPOWER6と比較したデータとして、「UltraSPARK T2+よりシステムコストで2分の1、最大で1.71倍のパフォーマンス」「POWER6よりシステムコストで10分の1、最大で2.45倍のパフォーマンス」を発揮できるというデータが紹介された。

厳しい経済状況で新規のハードウェア購入をためらうユーザーに対して、インテルは投入コストが8カ月で回収できると主張する(写真=左)。また、RISCサーバのユーザーに対しても、システムコストが削減され性能が向上すると訴える(写真=右)

インテルでは、次のステップとして32ナノメートルプロセスルールを導入した「Westmere」(開発コード名)の投入を予定している(写真=左)。また、Nehalem世代のXeonとしては、最大8コアを実装する「Nehalem-EX」を2009年後半から量産を開始する予定だ(写真=右)

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