「FlexScan SX2762W-HX」実力診断――27型“2560×1440”表示+広色域のIPS液晶10ビット入力対応のMini DisplayPortも装備(3/4 ページ)

» 2011年05月11日 12時15分 公開
[榊信康(撮影:矢野渉),ITmedia]

EIZO独自のカラーマッチングツール「EIZO EasyPIX」も大幅強化

 機能面においては、EIZO独自のカラーマッチングツール「EIZO EasyPIX」に対応している点も触れておきたい。EIZO EasyPIXは2011年春、ソフトウェアがVer.2.0にバージョンアップし、従来のモードに加えて「キャリブレーション(上級者向け)」モードが装備された。これにより、ディスプレイの目標値を数値指定してのハードウェアキャリブレーションが可能となったのは大きな進化といえる。

 キャリブレーションモードの操作手順は簡単だ。輝度、色温度、色再現域、ガンマなどの目標値を設定し、画面の案内に従い、専用センサー(EX1)をセットして測定を開始する。数種のパッチをセンサーで自動的に測定した後、調整名を入力する画面になるので、分かりやすい名前を付けて終了すればよい。

 もちろん、リマインダ機能も用意されており、OSの起動時に立ち上がる。リマインダのウィンドウには「微調整する」というボタンがあるが、これを使用してディスプレイの表示を微調整すると、その結果に基づいて調整目標が更新される。

 キャリブレーションモードを使用するには、専用センサー(EX1)を含むEIZO EasyPIXのパッケージ版が必要になるが、ナナオ直販のEIZOダイレクトでは、SX2762W-HX単体の価格に5000円を上乗せするだけで「EIZO EasyPIXセット」が購入できる。EIZO EasyPIXのパッケージ版は1万9800円なので、セットで購入すると買い得感が高い。

EIZO EasyPIXのソフトウェア最新版では、「キャリブレーション(上級者向け)」モードが利用可能になった(画面=左)。キャリブレーションモードでは、輝度、色温度、色再現域、ガンマなどの目標値を個別に設定できるほか、用途別の推奨設定として画面右上に「プリセット調整目標」も用意されている(画面=中央)。目標値を定めた後は画面の案内に従い、専用センサー(EX1)をセットすれば、自動的にキャリブレーションが完了し、名前を付けて設定を登録できる(写真=右)。調整結果は3つまで保存でき、ソフトの初期画面から切り替えられるようになる

異なる色域の再現性はどうなっているのか?

 それでは、実際にSX2762W-HXの色再現性はどうなっているのか、エックスライトのカラーマネジメントツール「i1Pro」(製品パッケージとしては「i1Basic」)を用いて、表示性能を検証してみた。テスト内容は、SX2762W-HXにソフトウェアキャリブレーションを行い、その結果からガンマカーブの精度をチェックし、作成したモニタプロファイルから色再現性を確認するというものだ。

 Adobe RGBの色域を再現するのに向いた「User 1」モードと、sRGBの色域を再現する「sRGB」モードのそれぞれを選択し、輝度を80カンデラ/平方メートルにセットしてキャリブレーションしたところ、いずれも目標値に近い良好な結果となった。

 RGBのグラフがキレイに重なっており、入力と出力の関係がほぼ1:1の直線を描いているため、全域でグレーバランスが整っていることが分かる。sRGBモードの暗部階調において、わずかに1:1の直線から外れているくらいだ。もともと広色域の液晶パネルを内部で色域変換することで、sRGB色域に狭めて表示していることを考慮すると、この結果は合格点といえる。

User 1モードで輝度を80カンデラ/平方メートルにセットし、i1Proによるソフトウェアキャリブレーションを実施した結果(画面=左)。sRGBモードで輝度を80カンデラ/平方メートルにセットし、i1Proによるソフトウェアキャリブレーションを実施した結果(画面=右)

 色再現性の確認では、先ほどソフトウェアキャリブレーションを行って作成したUser 1モードとsRGBモードのモニタプロファイルを、Mac OS XのColorSyncユーティリティで表示した。User 1モードではAdobe RGB規格の色域、sRGBモードではsRGB規格の色域を地のグレーとして表示し、モニタプロファイルの色域をその上にカラーで重ねている。

 結果を見ると、User 1モードはRからBにかけてAdobe RGB規格を上回る色域をカバーしており、sRGBモードではほぼsRGB規格通りの色域が再現できていた。特にsRGBモードの再現性の高さは見事だ。これなら、Adobe RGB環境でもsRGB環境でも色再現性を重視する作業環境に十分対応できるだろう。

i1Proで作成したUser 1モードのモニタプロファイルをMac OS XのColorSyncユーティリティで読み込んだ結果(画面=左)。Adobe RGB規格の色域は下にグレーで重ねて表示している。1Proで作成したsRGBモードのモニタプロファイルをMac OS XのColorSyncユーティリティで読み込んだ結果(画面=右)。こちらはsRGB規格の色域を下にグレーで重ねて表示した

 なお、EIZO独自のカラーマッチングツールであるEIZO EasyPIXを使って作成したモニタプロファイルもMac OS XのColorSyncユーティリティで表示してみた。EIZO EasyPIXの設定はキャリブレーションモードを選択し、「写真を見る/調整する」設定(80カンデラ/平方メートル、5500K、Adobe RGB、ガンマ2.2)と「Webを見る」設定(100カンデラ/平方メートル、6500K、sRGB、ガンマ2.2)の2パターンを試したが、それぞれ想定した通りの結果だった。

 「写真を見る/調整する」設定では、GからRの色域がAdobe RGB規格の色域より少し狭まっているが、これは色温度がAdobe RGB規格の6500Kではなく、写真を晴天の昼間の日光に近い環境で見るような5500Kと少し低い値に設定されているからだ。色温度を6500Kに上げてキャリブレーションすることで、Adobe RGB規格の色域にかなり近づく。一方の「Webを見る」設定では、WebコンテンツやWindows環境で標準となっているsRGB規格にほぼ一致する申し分ない結果だ。

 さすがにFlexScan SXシリーズの最新モデルと、高機能化したばかりのEIZO EasyPIXといったところで、しっかりと作り込まれているのは好感が持てる。キャリブレーションモードがなかった従来のEIZO EasyPIXは、簡易カラーマッチングツールといった認識だったが、バージョンアップした現在ではハードウェアキャリブレーションツールとしての運用も十分行えるレベルに到達していることが確認できた。

EIZO EasyPIXのキャリブレーションモードで作成したモニタプロファイルをMac OS XのColorSyncユーティリティで読み込んだ結果。「写真を見る/調整する」設定(画面=左)と、「Webを見る」設定(画面=右)を選択し、そのままキャリブレーションした結果となる

エックスライトのカラーマネジメントツール注目製品

 今回の測定に用いたエックスライトの「i1Basic」は、測色器の「i1Pro」が付属し、ディスプレイのキャリブレーションに機能を特化したパッケージだ。名前の通り、i1シリーズの中ではエントリーモデルにあたるが、i1Proはスペクトル方式を採用した測色器で、フィルター方式のエントリーモデル「i1Display 2」に比べて、検出精度がかなり高い。i1Basicをベースとして、より高度なカラーマネジメント環境を構築したい場合は、必要に応じてソフトウェアの機能を拡張することも可能だ。i1シリーズの製品情報はこちら

 また、エックスライトはオールインワンタイプのカラーコントロールソリューションとして「ColorMunki」シリーズも用意している。こちらはi1Proに近い精度を確保したスペクトル方式の測色器とウィザード形式の専用ソフトを備えており、ディスプレイ/プロジェクター/プリンタのキャリブレーション、スポットカラーの測定、カスタムカラーパレットの作成などが行える。ラインアップはフォトグラファー向けの「ColorMunki Photo」と、デザイナー向けの「ColorMunki Design」があり、いずれもi1Pro付属のパッケージより安価だ。ColorMunkiシリーズの製品情報はこちら

 日本国内ではこれらの製品を加賀電子が取り扱っており、クリエイター向けオンラインショップ「KGDirect」や「CGiN」で購入できる。両サイトでのi1Basicの販売価格は16万7160円、ColorMunki PhotoとColorMunki Designの販売価格はいずれも5万4800円だ。

左が「i1Basic」、右が「ColorMunki Photo」



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