蒸し暑いアキバでマイナス180度の戦い!MSI主催オーバークロック大会日本決勝(2/2 ページ)

» 2011年06月27日 15時00分 公開
[長浜和也,ITmedia]
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白煙が立ち込める。ここは戦場

 13時から始まったSuperPI 32Mでは、参加者が水冷、液体窒素、そして、空冷とそれぞれが自分で考案した冷却ユニットをシステムに組み込んで、ベンチマークテストの完走に挑むが、1分10秒台で完走できた“8M”設定と異なり、32M設定では完走に6分半前後かかる。そのため、完走できないシステムが続出し、競技開始から1時間以上たっても、エントリーされた記録はわずかに1件、という実に厳しい戦いとなった。

 しかし、終了直前になってようやく完走するようになり、すべての参加者が記録を出すことができた。この時点のトップは、予選5位のCAL930氏が出した6分29秒671。これを、空冷で奮闘した2位のGyrock氏が6分33秒868で追いかけるが、3位がBooooon氏の6分33秒875で、2位との差はわずか0.007秒に過ぎなかった。

 本来なら、SuperPI 32M戦の終了後に30分の休憩が用意されていたが、各参加者は休む間もなく、3DMark11戦に向けてグラフィックスカードの“冷却工作”に取り組んだ。決勝スコアの配点はSuperPI 32Mが40%で3DMark11が60%と高く設定されているため逆転が期待できる。各自、N580GTX Lightningのオリジナルクーラーユニットを取り外して基板の状態にした上で、マザーボードとグラフィックスカードのそれぞれに液体窒素の冷却で発生する結露に対する“養生”と、液体窒素対応の大型クーラーユニットの取り付けに挑んだ。

 結露対策の養生では、多くの参加者がキッチンペーパーによる“堤防”と白色ワセリンによる“パック”を行った。欧米では基板の養生に粘土を使う例が多いが、これについてCAL930氏とBooooon氏は、「基板と粘土に剥離が発生しやすく密着した状態が保ちにくい。白色ワセリンは密着性を維持するのに適している」と述べている。実際、白色ワセリンを基板に塗りつけた後にドライヤーでやわらかくして“流す”ことで基板の細かい凹凸も覆うようにしていた。

3DMark11のオーバークロックに向けてクーラーユニットの取り付けにかかる参加者。電圧やクロックのチューニングが注目されるオーバークロックだが、競技ではこういった「工作」も重要な要素となる(写真=左)。結露対策で重要なのが基板の養生だ。粘土を使う海外と異なり日本ではワセリンが主流だ(写真=中央)。ワセリンはドライヤーで温めて細かい凹凸がムラなく覆うようにする

“ジャカルタ”への道を僅差で争う!

 3DMark11の戦いでは、すべての参加者が液体窒素冷却を行った。液体窒素冷却では、クーラーユニットに金属製の円筒を取り付けたジャケットに直接液体窒素を注ぎ込んでCPUやGPUを冷却する。注いだ液体窒素は短時間で蒸発してしまうため、その注ぐタイミングは走らせるベンチマークテストの負荷とチップの温度を監視しながら判断しなければならない。このあたりが極端なオーバークロック設定で長時間かかるベンチマークテストを完走させるテクニックといえる。

 液体窒素をザブザブと注入し続ければそれでいいというわけでなく、冷やしすぎるとコールドバグとなってシステムが起動しなくなる。この状況を回避するため、ジャケットに取り付けた温度計が下がりすぎるとバーナーでクーラーユニットを加熱するという見た目には強烈な戦いが繰り広げられた。

潤沢に用意された液体窒素をザンブザンブと注ぐ(写真=左)。ザンブザンブと注ぐので白煙も立つ(写真=中央)。ザンブザンブと注ぐので冷えすぎてバーナーで温める(写真=右)。そして最初に戻る

極限ぎりぎりの冷却ではマシンの状態把握が重要になる。そのため、リアルタイムで測れる温度計と電圧計を戦闘機のコックピットのように並べて戦うことになる(写真=左)。それでも、過度の冷却でグラフィックスカードの描画は乱れる(写真=中央)。激闘のあと、クーラーユニットのジャケットをGPUから外すと収縮率の差で発生した“グリスのしわ”が確認できた。こういうはく離で冷却効率は大幅に落ちるという(写真=右)

 こうして、2時間半に及ぶ3DMark11の戦いは終わった。CAL930氏は、この戦いでもトップとなって日本優勝を決めた。また、僅差だった2位と3位の争い(それは、インドネシアで行われるMOAアジア太平洋州決勝進出をかけた戦いでもあった)では、Booooon氏が9976ポイントとGyrock氏の9794ポイントを大きく引き離して総合2位を確定させ、逆転で日本代表の座を射止めた。

 MOAアジア太平洋州の決戦は7月9日にインドネシアのジャカルタで行われる。日本決勝で激しく戦ったCAL930氏とBooooon氏は「Team Japan」を結成して、共同でアジアの強豪と戦うことになる。この戦いで上位となった場合、次は台北で行われる世界大会決勝が待っている。トップクラスと世界が認める日本のオーバークロッカーチームだけに、好成績を期待したい。

MOA日本大会決勝総合順位
1位 CAL930 159.275ポイント(SuperPI 1位、3DMark11 1位)
2位 Booooon 156.30ポイント(SuperPI 3位、3DMark11 1位)
3位 Gyrock 154.487ポイント(SuperPI 2位、3DMark11 3位)
4位 motoleader 150.95ポイント(SuperPI 5位、3DMark11 4位)
5位 yanchan 147.61ポイント(SuperPI 4位、3DMark11 5位)

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