ネパールは中国とインドに挟まれた、ヒマラヤの山々と人口2800万人を抱える“観光大国”だ。ヒマラヤを越えなければならない中国とはあまり交流がないが、南に広がるインドとネパールでは往来が多い。
国境もSAARC(南アジア地域協力連合)に所属する国民は“顔パス”で通過できてしまう。驚くほど簡素な設備で守られている入出国管理所では、その存在を無視したかのようにトラックや車が通過していく。顔パスのインド人とネパール人は顔立ちが似ているが、ネパール人の多くは「中国人よりインド人のほうが品がない」といってしまうほどに、インド人を好きではないようだ。
ネパールの大都市から小さな町までよく見かけるのが語学やプログラミングを教える学校だ。街で見かける学校の数でいえば、インドよりネパールのほうがはるかに多かった。また、海外送金サービス「Western Union」の看板も多い。このあたりの事情は、ネパール人の多くが「ネパール政府はダメだ、何もしない」と考えていることと関係している。彼らは、「ネパール人が生きるためには、外国に出稼ぎに行くしかないんだ」という。そういう彼らは、語学やプログラミングなどを学び、海外で就職口を見つけたら、Western Unionでネパールに仕送りをするようになる。
語学学校で教える言語は英語が一番多い。しかし、ネパールでは日本語も重視されていて、日本語を扱う学校も多数ある。日本にやってきてカレー店やヨガ教室で働くネパール人は多く、彼らは時間に正確すぎる電車や公衆道徳を順守する日本の暮らしを肌で知っている。また、ネパールを訪れる日本人観光客が多いこともあって、地理的には遠い国であるにも関わらず、ネパールの人は日本に好意的だ。実際、日本語が使えるネパール人とよく遭遇して驚かされた。
いまネパールでは、東日本大震災の影響を心配して日本から帰ってきた人が多い一方で、「気にしないで働きに行くよ」というネパール人にもよく会った。ネパール人の親日的な心理からか「日本の名前をつけると売れる」と考えて「Yasuda」「Nippon」といったブランドの製品が家電を中心に販売されている(なお、Yasudaは香港の企業で、全世界で展開しているが、ネパールで一番売れているブランドという)。
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