インタビュー
» 2011年07月05日 13時15分 公開

完全分解×開発秘話:なぜ薄型軽量ノートPC+ドックなのか?――新生「VAIO Z」を丸裸にする (5/6)

[前橋豪, 撮影:矢野渉,ITmedia]

薄型ボディをきちんと冷やすためのデュアルファン

マザーボードと同様、ヒートシンク付きのデュアルファンも高さをグッと抑えている

 マザーボードとともに薄型化を進めたのが冷却ファンだ。外部GPUという大きな発熱源をPower Media Dockに分離したとはいえ、16.65ミリの薄型フルフラットボディにTDPが35ワットになる第2世代の通常電圧版Core iシリーズを無理なく搭載するのは難しく、新たに薄型のデュアルファンユニットを開発して放熱に注力した。

 ファンが1基増えるため、実装面積では不利になるが、井口氏は「1つの放熱ユニットに2つのファンを内蔵するというのは、VAIOノートで初めての試み。この薄さの中で十分な放熱を行い、かつ静音性にも配慮すると、デュアルファン構成が最適だと判断した」と採用の理由を述べる。

 旧機種の冷却ファンと比較した場合、ヒートシンクの厚さを12ミリから6ミリに、ファンの厚さを10.5ミリから6ミリに薄型化し、ファンを含む放熱部全体の占有体積を27%削減することで、全体的に非常に薄い冷却ファンを実現している。

 こだわったのは薄さだけではない。この2つのファンは羽根の枚数が異なり、1つは37枚、もう1つは41枚といずれも素数で構成している。1とその数自身以外の整数では割り切れない素数の羽根を持つファンの組み合わせにより、2つのファンが同時に回転することで発生する、うなるような風切り音を抑えたという。また、ファンユニットの厚さに合わせて羽根の形状を最適化し、各ファンを独立して制御することで、ファンの回転数に起因する騒音も抑えた。

取り外したデュアルファンユニット。CPUとIntel HM67 Expressを冷やすため、銅製のヒートシンクが設けられている

 さらに、底面に設けた2つの六角形の吸気口に加えて、キーボード両脇のエアインテーク、キートップ下に設けられた穴やすき間から吸気するなど、放熱設計も大きく見直し、これらエアフローの改善で風量を25%向上させたという。

 積極的にボディの上下から吸気する設計だが、もちろん、ヒザの上など十分な吸気が行えない場所に設置して使う場合も想定している。只野氏によれば、「ある程度、吸気口をふさいだ場合の発熱評価も行っており、社内のテスト基準はクリアできているので、ちょっと使うくらいで問題が発生することはないだろう」とのことだ。

 なお、外部GPUを搭載したPower Media Dockにも冷却ファンは内蔵されている。井口氏によれば、「ノートPC単体で使っている場合はCPU内蔵グラフィックスのIntel HD Graphics 3000を用いるが、従来より性能が大幅にアップしたため、メモリコントローラの利用効率が高まり、特に高負荷時ではメモリの発熱量が大きくなる。Power Media Dockを接続すると、ドック内のGPUが描画を行うことで、ノートPC本体の放熱に余裕が出てくるため、ドックを接続して高パフォーマンスで運用すると、かえってノートPC本体が単体利用時より静かでクールになることもあり得る」という。

底面にはデュアルファンの吸気口が設けられており、ボディの形状(ヘキサシェル)に合わせて、六角形にデザインされている(写真=左)。キーボード両脇に設けられた細長いエアインテークからも吸気を行う(写真=中央)。このエアインテークを採用したため、新型VAIO Zにキーボードウエア(薄型シリコン製キーボードカバー)のオプションは用意されていない。キートップの下に、表面から見えないように穴を空け、キーボードからも吸気している(写真=右)。四角いキートップのパターンの切りかき部分が吸気口だ。キーボードの穴の位置は効率的なエアフローに配慮して決められており、例えば、ファンの直上は穴が開いていない

キーボードユニットにもスリム化の工夫

 マザーボードを外すと、キーボードユニットの裏側に貼られたバックライトのシートが露出する。新型VAIO Zでは、従来のLEDバックライトが厚さの関係で実装できないため、薄型化が可能なELバックライトのシートを装着した。この変更により、キーボードバックライトの絶対的な光量が減ったため、視認性を確保すべく、文字部分を中心に輝度が上がるような構造にしている。

 さらにキーボードは薄型化を追求するため、キーストロークは約1ミリに抑えられ、従来の約半分の深さとなった。これはVAIO Xの約1.2ミリより浅いストロークだが、きちんと長文も入力できるよう、キートップの下に敷くラバードームは専用のものを何種類が用意し、それぞれ硬さのフィーリングを試しながら、決めていったという。

 新しいキーボードについて井口氏は「最初はキーストロークが浅くなったので、従来のように使えるか実は心配だったが、軽いタッチで入力できるため、長時間使っても疲れにくいと感じた。横方向のキーピッチは約19ミリのフルピッチを確保しており、頑丈なボディが安定したキー入力を支えてくれるので、一度ストロークに慣れてもらえれば、それほど気にせずに使えると考えている」と評価している。

各パーツを外した状態のキーボード/パームレスト一体化ベゼル(写真=左)。さらにキーボード部を覆う黒いシートをはがした状態(写真=中央)。表から見たキーボードとパームレスト(写真=右)。タッチパッドはVAIOノート初となるパッド/ボタン一体型のクリックパッド型となっており、パッド部分には六角形の細かいテクスチャが施されている

高解像度・広色域の液晶ディスプレイは健在

 第2世代のVAIO Zが支持されてきた理由の1つが、高解像度・広色域の13.1型ワイド液晶ディスプレイだ。こちらは従来通りで、標準仕様モデルが1600×900ドット表示/NTSC比100%(u'v'色度図)の液晶パネルを採用し、VAIOオーナーメードモデルではさらに1920×1080ドット(フルHD)表示/NTSC比100%/Adobe RGBカバー率96%というハイスペックな液晶パネルも選択できる。

 金森氏は「13型クラスでフルHDの高解像度と広色域の液晶ディスプレイを提供できているモバイルノートPCは、ほかに見当たらない。日本のソニーストアでは購入者の半分以上がフルHD液晶を選んでおり、海外でも支持されているので、今回もこの部分は継承した」と語る。

VAIOオーナーメードモデルでは1920×1080ドット表示のフルHD液晶パネルも選択できる(写真=左)。液晶ディスプレイのフレーム部を外すと、左右に無線LANのアンテナ、上部にExmor CMOSセンサー搭載Webカメラが現れる(写真=中央)。写真のサンプルには搭載されていないが、BluetoothやワイヤレスWANのアンテナも画面の両脇に内蔵される仕組みだ。アンテナが入る液晶ディスプレイ部のフレームや天面の左右端は電波が通るように樹脂製となっている(写真=右)。ちなみに、ワイヤレスWANは新たにNTTドコモのLTEサービス「Xi」が選べるようになった(8月より提供予定)

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