新型VAIO Zで最大の特徴となるPower Media Dockも分解してもらった。ネジで固定されたサイドパネルを外すと、スロットイン方式でスリムタイプの光学ドライブを囲むようにすき間なく搭載された、逆L字型の両面実装マザーボードが現れる。
この狭い空間にAMD Radeon HD 6650Mと1Gバイトのグラフィックスメモリを実装するため、GPUのチップにはしっかりした銅製のヒートシンクを装着し、ファンを配置した基板の裏側を丸くくりぬくなどして、エアフローを確保している。HDMI出力、アナログRGB出力、USB 3.0×1、USB 2.0×2、1000BASE-T有線LANの端子も装備し、小型ながら多機能なドッキングステーションだ。こちらにも光信号と電気信号の変換を行うトランシーバーが実装されている。
ちなみにこのドックはACアダプタ(ノートPC本体のACアダプタより大型のもの)を接続して動作させる仕様で、バスパワーで駆動するようなことはできない。本体と一緒にPower Media Dockを持ち運ぶ場合、ドックを利用するには電源の確保が必須となる点は注意が必要だ。
最後に毎度恒例だが、開発陣に新型VAIO Zの満足度を100点満点で自己採点してもらったところ、金森氏は「フルフラットボディでこの薄さ、そして通常電圧版Core iシリーズの高性能、この両立は本当にすごいこと。前回の第2世代VAIO Zでは120点といったが、今回は明らかにそれを超えたので130点としたい」、井口氏は「基本性能を充実させたうえ、BIOSをしっかりチューニングして高速起動を実現し、SSDを含めたパフォーマンスも向上でき、薄くて軽いことがマイナスに働く部分がないと思う。確実に100点を超える」、只野氏は「機構設計担当として目指した、薄く、軽く、強いボディが実現できた。最高点を付けたいので140点で」との回答だった。
VAIOの開発陣に対して、新型のモバイルノートPCが発表される度、今回と同様のインタビューを繰り返していることもあり、最近は点数がインフレ気味ではあるが、全員そろってこれほど高得点を断言できるのは、やはり自信の裏付けといえる。開発陣が見せるすがすがしいまでの「やりきった感」は、なかなかほかでは見られない。
以上、個性的なセパレート構成に生まれ変わった新型VAIO Zがどのように生まれたのか、またいかにして薄型軽量ボディにハイスペックを詰め込んでいるのか、内部構造も含めてじっくり見てきた。
開発陣が“次の究極のモバイル”を目指すという確固たる信念を持ち、ノートPC単体でも、Power Media Dock接続時でも、状況に応じて従来より魅力的なPCソリューションとなるよう、新しい技術をいち早く採用しながら、過去の名機で蓄積したノウハウも惜しみなく投じ、細部に至るまで吟味して作り込んでいるのはさすがだ。
正直にいって、オールインワンモバイルからの路線変更は賛否両論かもしれない。だが、利用シーンに合わせて最適なスタイルを選択できる構成への移行は、特にビジネスでモバイルノートPCを活用している多くのユーザーにとって、より合理的なシステムになったと支持されるのではないだろうか。
個人的にはすべてが詰まったモンスターマシンをコンパクトに携帯できるという、“PCマニアの理想”を具現化したような従来機種の面白みが少々薄れてしまった点は残念だが、実際に使ってみるとセパレート構成の利便性は高く、薄型軽量で頑丈なノートPC本体の存在感は「確かにこれは新世代のVAIO Zだ」と思わせるだけの説得力があると感じた。PC単体ならば、ソニーストア直販のVAIOオーナーメードモデルで14万4800円から購入でき、ハイエンドモデルながら手が届きやすい点も見逃せない。
ともあれ、VAIO Zが単純にオールインワンモバイル路線をやめ、外部GPUや光学ドライブを切り離したから、薄型化と軽量化ができたのは当然、などと解釈するのは早計だ。特に新しいVAIO Zの登場を待ち望んでいたユーザーは、一度は手に取って、その薄さと剛性感あるボディを味わってみることを強くおすすめする。
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