ソニーが2009年8月8日に発売する「VAIO W」シリーズは、同社初のNetbookだ。基本スペックは競合機種と同様に、Atom N280(1.66GHz)とIntel 945GSE Expressチップセットを組み合わせた構成だが、1366×768ドット表示の10.1型ワイド液晶ディスプレイや、細部まで凝ったボディデザインを採用し、既存のNetbookとの差別化を図っている。
VAIOのミニノートPCラインアップには、2009年1月に発売されて人気を博している“ポケットサイズPC”こと「VAIO type P」も存在するが、こちらはAtom Zを用いてNetbookでは実現できない小型軽量ボディとキーボードサイズのバランス、高解像度のワイド液晶ディスプレイ、高級感あるデザイン、そしてモバイルでのPC活用までも追求したワンランク上の製品であり、価格帯もNetbookより少々高い。
国内ノートPC市場におけるNetbookの構成比が30%を超えるまでに急成長する中、ソニーはNetbook対抗として投入したVAIO type Pに加えて、ライバルに真っ向勝負を挑む“正真正銘のNetbook”であるVAIO Wも投入することで、より幅広いユーザー層にアピールできるミニノートPCラインアップを構築し、シェア拡大にまい進する構えだ。
2009年7月7日の発表以来、PC USERではVAIO Wをさまざまな形で取り上げてきたが、ここではVAIO Wの内部構造が同じミニノートPCにカテゴライズされるVAIO type Pとどう違うのかを確かめるため、分解して中身をチェックした。
通常であれば編集部やライターが直接PCを分解するところだが、VAIO type Pのときと同様に発売前の試作機ということもあり、分解は遠慮してほしいとのこと。そこで、今回はVAIO Wのメカ設計を担当した正岡健吾氏(ソニー VAIO事業本部 PC事業部 3部 1課 エンジニア)に分解をお願いした。
また、製品開発の中心となった木村英二氏(ソニー VAIO事業本部 PC事業部 1部 3課 シニアプログラムマネジャー)と、VAIO Wの製品企画とマーケティングに携わった武上有里氏(ソニー ネットワークプロダクツ&サービスグループ VAIO事業本部 企画戦略部門 企画部 Mobile Device課)にも同席してもらい、話をうかがった。
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製品を分解/改造すると、メーカー保証は受けられなくなります。内部で使用されている部品などは編集部が使用した製品のものであり、すべての個体にあてはまるものではありません。
仕様が画一化しがちなNetbookにあって、VAIO WはVAIOらしさを持たせるためにデザインへこだわっている。武上氏は「コストが厳しい中で使い勝手や外観を納得できるレベルに落とし込むため、設計やデザイナーに頑張ってもらった。2層の塗装による色に深みがある天板、3色のボディカラーによって違う色のパームレストとプリント入りタッチパッド、プレゼント用途も想定したパッケージなど、社内でも評判のデザインに仕上がった」と自信を見せる。
正岡氏は「コスト面から、VAIO type Pが採用するマグネシウム合金のような高級な材料は使えないので、樹脂ベースのボディで全体の剛性を保ち、VAIOとしての品質を落とさないようにするにはどうすべきかに苦労した」と語る。具体的には、リブの追加やボディサイズいっぱいのマザーボードなどで剛性を確保し、ボディがたわまないようにした。また、スパッタリング塗装の採用、部品数やネジ数の削減などで、軽量化と低コスト化にも配慮したという。
デザインにコストをかける一方で、VAIO Wは薄さと軽さを極限まで追求してはいない。木村氏によれば、「やはりNetbookは価格が魅力の製品なので、あまり無理な高密度設計はせず、基板も含めてシンプルな設計にしてコストを抑えた。そのぶん、デザインや使い勝手のバランスにはこだわっている」とのことだ。ここが小型軽量を重視したVAIO type Pの設計思想と大きく違うところだ。
内部設計で小型化していないぶんは、デザインでうまくカバーしている。4隅の丸みやシルバーを間に挟んだようなデザインは携帯時に手になじみやすく、実際よりボディが薄く見える効果もある。液晶ディスプレイを開いたときに画面の高さが低くなる逆ヒンジ構造も見た目のコンパクトさを演出する工夫だ。
それでは、VAIO Wの中身を見ていこう。PCの分解前にはバッテリーを外すのが必須だが、ここにも特徴がある。底面のバッテリー着脱用レバーを操作すると、バネによりバッテリーパックがくるりと回転して外れる構造を採用しており、手軽に着脱が行えるのだ。「バッテリーを装着した状態で段差ができず、滑らかで流れるようなデザインに仕上げるため、あえてこのデザインを採用した」(正岡氏)。
バネで勢いよくバッテリーパックが外れるので強度面が少し気になるが、開発時に何度も着脱の試験を行い、ツメの部分の剛性は確認しているという。
底面にある3本のネジで固定されたカバーを取り外せば、2.5インチ/9ミリ厚のSerial ATA HDDにアクセスできる。そこからメモリモジュールが装着されたSO-DIMMスロットに到達するには、HDDのコネクタ付近にある1本のネジと、バッテリーパックを取ると現れる2本のネジを外し、フレキシブルケーブルで接続されたキーボードユニットを取り外せばよい。メーカー保証対象外の行為となるが、HDDやメモリの交換は容易だろう。
キーボードユニットは、スティック型ポインティングデバイスがないことを除けば、VAIO type Pとほぼ同じだ。ボディが樹脂フレームで強度が弱くなるため、0.5ミリ厚のアルミプレートをベースに使用し、キーボードの外周全体にしぼりを入れることで、輸送中にたわみや変形が発生せず、使うときも剛性感が出るようにした。
VAIO Wのボディサイズを考えれば、より大きなキーボードも搭載可能だったが、武上氏いわく「キーボード、タッチパッド、パームレストの全体のバランスを考えた結果、キーボードは定評があるVAIO type Pと同じサイズとし、タッチパッドとパームレストのスペースを広くとった」とのこと。開発当初はスティック型のポインティングデバイスも検討したが、幅広いユーザーにとっての扱いやすさを考慮し、タッチパッドを採用したという。
次のページではさらに分解し、マザーボードや液晶ディスプレイを取り出す。
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