インタビュー
» 2011年09月06日 08時00分 公開

275ワードの宇宙:科学をできるだけ易しい言葉で――「太陽系 for iPad」の挑戦 (2/2)

[林信行,ITmedia]
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今度はつぶやきで宇宙を解説

―― チャウンさんのTwitterのIDは何ですか?

チャウン @marcuschown です。つい先日も、私が大好きな英国生まれの女性科学者、セシリア・ペイン・ガポシキンについてつぶやいて盛り上がりました。彼女はほとんど知られていない名前ですが、20世紀の天文学でおそらく最も重要な論文を書いた一人です。

 1920年ころの英国では、女性が大学で研究者の職を得ることは難しかったので、彼女はアメリカに渡りハーバード大学で量子論の研究をしました。研究の中、彼女は太陽が9割ほど水素とヘリウムでできていることを発見し、これを論文として発表しようとしました。これはショッキングな発表でした。なぜなら多くの人々は、ギリシア時代から太陽も地球と同じような組成要素でできていると信じてきたからです。

 論文を見た彼女の上司は「そんなことがあるわけはない」とそれに大反論。結局、彼女は「太陽の9割ほどは水素とヘリウムでできているという観察結果が出たが、私はおそらく間違っている」という論文を書かされます。

 しかし、それから10年経って、彼女の説が正しいことが証明されると、結局は彼女の上司が彼女の功績を奪ってしまったのです。

 ガポシキンは、もっと高い評価を得ていいはずの科学者の一人です。彼女の熱心なファンである私は、一度、週刊科学雑誌の「New Scientist」に彼女を紹介する長文の記事を寄稿し、一生懸命探し出した彼女の顔写真も載せるつもりだったのですが、なんということでしょう。印刷所から刷り上がってきた雑誌は、印刷ミスで彼女の顔が枠からハミ出て帽子の隅っこしか刷られていなかったのです。

 これまで彼女があまりに過小評価されていたので、なんとか彼女がもっと知られるようにと、なんとか記事スペースを確保し、こん身の記事を書いたのに、印刷されたのは帽子の端っこだけ……まったく、なんということでしょう!

―― その彼女についてTwitterでつぶやいてみたら、どんな反応があったんですか?

チャウン 大勢の人が彼女に興味を持って、Webサイトを立ち上げてくれる人まで出てきてうれしかったです。科学の世界ではしばしば、見過ごされてしまう光の当たらないヒーローがいるので、そうした人たちを取り上げていくことも私の仕事かな、と感じています。

―― いい話ですね。日本は最近、科学離れが深刻な問題になっていますが、チャウンさんの「太陽系 for iPad」のストーリーを読んで、世界の優秀な天文学者について知り、日本の子供たちがもっと科学に興味をもってくれればと思います。

チャウン 日本人はもっと自身の科学力に誇りを持っていいと思います。「はやぶさ」の成果もすごいですし、電子ニュートリノの出現をとらえた「スーパーカミオカンデ」も素晴らしい成果です。天文学の世界における日本の大勝利と言えるでしょう。

 もしかしたら、こうした科学的成果がどれくらい素晴らしいかは、難しくてなかなか理解されていないのかもしれません。もし、それらを簡単に解説することで日本人が日本の科学力に誇りを持ってもらえるというのであれば、喜んで日本のために本を書きたいですね(笑)。

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