では本機の基本スペックを改めて確認しよう。
基本システムは、Atom Z600シリーズのCPUとIntel SM35 Expressチップセットの組み合わせだ。こちらは開発コード名でOak Trailと呼ばれたインテルのタブレット/ミニPC向けプラットフォームである。Oak Trailは、従来のAtom Z500シリーズおよびIntel US15W/US15Xチップセットの組み合わせと比べて、グラフィックスやストレージまわりの機能を強化するとともに、チップセットのパッケージサイズの小型化やプラットフォームレベル(CPU/チップセット合計)での消費電力低減などが行われている。ちなみに本機はファンレス設計である。
CPUは、Atom Z600シリーズにおける2011年10月現在の最上位モデルであるAtom Z670を採用する。動作クロック1.5GHzのシングルコアCPUで、Hyper-Threading Technologyにより2スレッドの同時処理を可能とし、512Kバイトの2次キャッシュを搭載。グラフィクスコアとしてDirectX 9世代の「Intel GMA 600」を内蔵し、HD動画再生支援機能として1080PのH.264/VC-1のハードウェアデコードに対応している。
メインメモリはPC2-6400 DIMMに対応し、容量は2Gバイト(固定)。データストレージには64GバイトのSSDを搭載する。SSDは、本評価機のデバイスマネージャーで確認したところ東芝の「THNSNB064GCJ」という型番のモデルが採用されていた。通信機能は、IEEE802.11b/g/n準拠の無線LANとBluetooth 2.1+EDR。搭載インタフェースはUSB 2.0×2、SDHC対応SDメモリーカードスロット、HDMI出力、ヘッドフォン/マイク端子と、薄型のタブレットPCとしてはそこそこ充実した内容だ。表面上部には有効131万画素のWebカメラも内蔵する。OSは32ビット版のWindows 7 Home Premium(SP1)だ。
続いてベンチマークテストを行おう。今回は、同じく「2Wayスタイル」をうたい、同じAtom Z670を搭載するキーボード付きWindowsタブレット、富士通「FMV LIFEBOOK TH(TH40/D)」の結果も併記する。
まずはSSDのパフォーマンスをCrystalDiskMarkで確認してみよう。ライト性能は廉価版SSDらしい無難なスコアだが、シーケンシャルリード性能は152.8Mバイト/秒をマークした。総合的にミニノートPC/Netbook/Windowsタブレットに搭載されるストレージとしてはかなり優秀だ。FMV LIFEBOOK THが搭載する1.8インチHDDの値と比べるとその差は歴然である。
Windows 7のエクスペリエンスインデックスは、プロセッサ、メモリ、グラフィックスのスコアはFMV LIFEBOOK THと同じ。プロセッサのスコアはそれぞれ2と低調で、SSD効果かLaVie Touchはプライマリハードディスクのスコアが5.9とやや良好という結果だった。また、メインメモリ容量が多いためか、ゲームグラフィックスでもFMV LIFEBOOK THに比べてスコアが良好だった。
PCMark05やPCMark7でも、FMV LIFEBOOK THより全体的によいスコアが出ている。PCMark05のHDD Scoreは9922、総合のPCMarksで1508と、Atom Zシリーズ搭載のWindows 7マシンとしてはハイクラスの性能を持っている。
ただ、Atom搭載機ならではのワンテンポ遅れる動作感覚は解消できておらず、タッチ操作のレスポンスも“すばらしい!”……とはお世辞でも言いがたい。拡大/縮小などの操作にしてもワンテンポ、ツーテンポ待ってようやく反応するいった感じであり、前述した某タブレットには残念ながら遠く及ばない操作感である。
バッテリー実動作時間はBBench 1.01(海人氏作)を用いて計測する。設定は「60秒間隔でのWeb巡回(10サイト)」「10秒間隔でのキーストローク」、無線LAN(IEEE802.11g)で常時接続し、WebブラウザはInternet Explorer 9を使用。電源プランは標準の「LaVie」(ディスプレイ輝度40%)にて実施した。
実動作時間は、残量5%で休止状態に移行した時点で約288分(約4時間48分)だった。Windows 7搭載ノートPCとしては悪くない数値であり、ディスプレイ輝度を最も低く、かさらに電力プランを「省電力」にすればもう少し伸びると思われ、かつ本評価機は試作機であるため、製品版とはパフォーマンスが異なる可能性がある点は十分留意願いたいが、カタログ値である約10時間の半分以下にとどまった。
とはいえ……、バッテリー容量が34ワットアワーであることや、同じプラットフォームであるFMV LIFEBOOK TH製品版の結果(23ワットアワーバッテリーで約239分)から類推すると、プラス数時間単位で動作時間が急激に伸びるとは思えないのが正直なところだ。常時無線LAN接続環境で利用することが前提なら、カタログ値の約10時間からはかなり割り引いて考えるほうがいいだろう。
一方、ファンレス設計でデータストレージにSSDを搭載するため、動作音はほぼ皆無。こちらは、アイドル時でも負荷をかけても変わらず、非常に優秀だ。発熱については、Webサイト表示やWeb動画の再生などをしばらくし続けているとNECロゴのある部分(表面、裏面とも)のあたりが少し熱を持ってくる(裏面で約43度)。ここはしっかり握って持ち続けるには少々つらくなる温度だが、それ以外はそれほど熱くならないので、別の部分を持てばよい。
さて、LaVie TouchをアップルのiPad/iPad 2や、Android搭載最新タブレットの感覚で選ぶと、イメージとはだいぶ違うかもしれない。Windows 7でのテキスト入力など、比較的ライトな作業に制限して使うのであれば少し慣れれば問題ないが、タッチ操作や画面回転時のレスポンスはかなり厳しい。拡大/縮小やスクロール機能などを使ってWebブラウズを行う際の快適さも、iPad/iPad 2はもちろん、ひと昔前のCPUを搭載したAndroidスマートフォンと比べても物足りない。基本的に、OSがWindows 7である必要性があるユーザー以外には勧めにくい。
価格はどうか。発売時の想定実売価格は10万円前後だ。(日の経過とともに価格変動はあるが)専用のドッキングステーション、キーボードとマウス、Office Home and Business 2010付き、そして新設計の2Wayスタイルを採用した新シリーズとはいえ、昨今2011年10月現在のA4スタンダードノートPC、あるいはタブレットデバイスの価格帯と比べてしまうと、コストパフォーマンスはそれなりという評価にならざるを得ず、もう少し“おぉっ”と驚かされる何かがほしい。
ただ、Windows 7搭載タブレットとしてはよくまとまっており、完成度はそれなりに高い。初心者・ライト層でも使える工夫がしっかり盛りこまれている。
小型軽量のボディに視野角の広い液晶ディスプレイ、ドッキングステーションが標準で付属し、簡単タッチ操作向けのソフトウェア的工夫もぬかりはない。基本スペックもAtom搭載PCとしてはハイレベルであり、プラットフォームのポテンシャルはほぼ最大に引き出している。キーボードでの入力/ノートPC風の使い勝手を前提、あるいは主とするならば、やはりWindows 7搭載の本機のほうがiPadやAndroidタブレットよりも万人受けし、使いやすいと思われる。
新しく手軽なタッチ操作スタイルで使えつつ、普通のPCスタイルでも使いたいと思うライト層、Windows 7でしか動かないソフトウェアとともにタブレットスタイルでも使いたいと思うライトビジネス層(同形状の法人モデル「VersaPro タイプVT」も存在する)、とにかく軽いWindows 7搭載PCが欲しいと思う層、それらを総合して、たまにタッチ、でも普段はキーボードにてという人に検討の価値があるだろう。
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