Cintiq 24HDのエクスプレスパッドは、Intuos4のそれとはレイアウトが異なっているほか、タッチホイールの操作方法も変更している。ホイールの横に3つのLED内蔵ボタンを新たに設け、このボタンを選択することでタッチホイールの機能を切り替えるようになった。デフォルトでは、一番上のボタンが「オートスクロール/ズーム」、中央が「ブラシサイズ」、一番下のボタンが「回転」(カンバスの回転)となっている。
ディスプレイの上部には3つのタッチセンサー式ボタンが搭載された。左側の「i」ボタンを押すと、ボタンに設定された機能を表示できる。意外と忘れやすいボタンの機能を確認するのに便利だろう。一方、右側のスパナアイコンのボタンは、タブレットのプロパティを呼び出す。ここから筆圧センサーの感度調整といった各種設定をすばやく変更できる。
真ん中にあるキーボードアイコンのボタンをタップすると、オンスクリーンキーボードが現れ、ペンによるタッチ操作でキーボード入力が可能になる。これを活用すれば、レイヤー名を入力する程度のことなら、オンスクリーンキーボードで済ますこともできる。さらにWindowsの「Tablet PC 入力パネル」の機能を使い、手書き文字の認識も可能だ。評価作業では、ひらがなも漢字も高い精度で認識してくれた。


ディスプレイの右上に3つのタッチセンサーを搭載する(写真=左)。真ん中のタッチセンサーをタップするとオンスクリーンキーボードが立ち上がる(写真=中央)。手書き入力に切り替えて使うこともできる(写真=右)とはいえ、ハードウェアキーボードに比べるとやっぱり使いづらい。実際の作業ではキーボードを手元に置けるのがベストだ。ただ、スマートフォンやタブレットデバイスなど、フルスクリーンのインタフェースが普及している状況を考えると、ペンタブレットで操作を完結する方向での進化に今後も期待したいところだ。
ちなみに、Cintiq 24HDには平置きでキーボードを収納するスペースが確保できるように、ディスプレイを浮かせて固定するスタンドが両サイドに付いている。ただし、ディスプレイを机の手前に引き出したポジションではスタンドが利用できない。ボディ自体にキーボードを固定できる機構があると作業における操作性はより向上するだろう。
Cintiq 24HDは、Adobe RGBに対応しワイド化した液晶ディスプレイ、柔軟な姿勢設定と安定した設置が可能なスタンド機構、熱くなりにくいファン内蔵ボディなど、製作の現場で求める機能が着実に進化しており、評価作業でもそのメリットを感じ取れた。
一方、「ボディの大きさ」は、特にアマチュアユーザーや広いスペースを確保できない個人事業のデザイナーに導入をためらわせるだろう。大画面化による一覧性の向上や作業スペースの拡大は作業効率を改善する一方で、Cintiq 24HDのために設置場所の制約を解決しようとしてもできることは限られてしまう(作業場所の変更、引っ越しなどは労力とコストがかかる)。また、B4の漫画用紙を優に超える画面サイズではあるが、表示の精細度は紙に劣るため、紙と同じ作業をしようとすると、どうしても画面の拡大が必要になる。
製作に携わるユーザーとして今後の液晶ペンタブレットに期待するのは、「iPhoneのような精細で視差の少ないディスプレイの採用」だ。Cintiq 24HDの液晶精細度は約94ppiだが、iPhoneのRetinaディスプレイ(326ppi)のような精細さがあれば、画面が小さくても作業がしやすくなる。また、iPhoneの画面は表示面とパネル面とが密着しているため、視差が少なくなるメリットもある。
コストの問題や、細かい作画に耐えるセンサー精度の実現といった技術的なハードルもありそうだが、ペンタブレットをアナログのフィーリングに近づける上では、こうした方向の進化も今後期待したい。
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