PCに手描きで入力するとなれば、ペンタブレット、もしくは、タブレットを指先でなぞる、が主流だ。その中で地味に進歩しているものが、「手書き」と「デジタルデータ」を組み合わせた製品だ。ワコムが2011年8月に発表したInklingは、超音波と赤外線でA4サイズの範囲で動かしたペンの動きをキャッチしてデジタルデータとして保存し、保存した軌跡の位置情報をPCでチェックして利用できるというものだ。ワコムが考えるメインユーザーは「プロクリエーターのデザインスケッチ用」というが、紙に手書きした文字や絵をデジタルデータに保存して利用を目的とした入力機器として十分使えるはず。そこで、PCUSERとしては、もっと広いユーザーに向けて会議の記録やアイデアノートの手書きメモ用として使えるかを検証してみたい。
ペンとしての使い勝手だけでなく、持ち運びも考慮した結果か、Inklingのデジタルペンとレシーバを格納するケースは「高級な文具」に通じるデザインで、パカッと開くギミックはいかにも“筆箱”だ。ケースの中には、デジタルペンとレシーバ、そして、替え芯が4本並ぶ。ビジネス用途狙いだと思うが、“文具好き魂”を刺激してくれる風格がある。ケースのサイズは、170(幅)×61(奥行き)×22(厚さ)ミリ、重量は179グラムと、やはり筆箱に近い。
デジタルペンは、直径15ミリで長さは芯込みで153ミリ、重量22グラムだ。ケースから取り外すと自動的に電源が入り、頂点部のLEDが点灯する。先端部が独特の形状をしており、ここから発信する超音波と赤外線をレシーバで受信することでペンの位置を特定する。そのため、ペン先を持つのはNGで、グリップのある部分でデジタルペンを持つことになる。
デジタルペンの充電は、収納ケースにペンをセットし、レシーバをUSB接続すると自動的に充電が開始される。Inklingのペンは、Intuos4に付属するデジタルペンに近く、かつ、持ちやすい。
レシーバは、本体のサイズが70(幅)×30(奥行き)×16(厚さ)ミリ 重さが約39グラムとコンパクトで、操作ボタンは電源オンオフとレイヤー切り替えの2つだけだ。本体下部には用紙を固定するクリップがある。センサーは本体中央にあり、デジタルペンで入力された軌跡と筆圧を感知すると、レシーバ本体のLEDが点灯する。起動した直後はレシーバがペンを探している状態なので、20秒ほど間をおいてからLEDが点灯するかチェックしてみるといい。
用紙をセットしたらレシーバの電源を入れるだけだ。少し待てば取り込み可能な状態になる。なお、入力時には、センサ周辺(レシーバの周辺ということになる)はペンを感知しないことに注意したい。取扱説明書におよその範囲が記されているが、“体で”覚えたほうがいい。ページの切り替えは、セットしてある用紙を外し、新しい紙をセットすると自動的に新規ページに切り替わる仕組みだ。ただ、今回の評価作業では、この操作でもページの切り替えに失敗していたので、ソフト側でレイヤー追加ボタンを新規ページ切り替えに変更できると助かるだろう。
バッテリー駆動時間は4時間ほどで、測定のたびにバラツキがあった。充電時間はペンが2時間、レシーバが3時間くらいで満充電になるのを確認している。ただし、評価機材は製品版ではないので、現在出荷している量産版とは異なる可能性もある。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.