すでに一般配布を開始している「Windows 8 Consumer Preview」(W8CP)は、新たにサポートした日本語環境のおかげで、日本でも体験しているユーザーが多い。3月の配布開始から時間もたっているので、W8CPがメインのWDDでは目新しいトピックがないと考えてしまうが、それでも、興味深い話題が紹介された。
その1つが、Windows開発部門トップのスティーブン・シノフスキー氏が来日して、日本の関係者に講演を行ったことだ。米国におけるWindows 7の発表では「ウルトラセブン」のテーマをかけて場を盛り上げるなど、日本文化に詳しいシノフスキー氏だが、Windows 8の開発で多忙を極めるこの時期に来日して、日本のパートナーや開発者を鼓舞すること自体、非常に大きな意味がある。
そのシノフスキー氏は、W8CPの次のマイルストーンとなる「Release Preview」の配布を6月第1週に行うとWDDの基調講演で発表した。過去にリリースされたWindows 8 Developer Preview(W8DP)とW8CPは、「β版」という扱いで、最終リリースであるRTM(Release to Manufacture)が登場する工程までに「RC」(Release Candidate)版を残している。このRCにあたる「Release Preview」が6月初旬に提供することが初めて明らかにされたことになる。これまでは、x86/x64版のみが提供されてきたWindows 8だが、このRelease Previewでは初めて「ARM」版を提供する。
WDDの基調講演では、W8CPの特徴を紹介し、デモストレーショも行われていたが、すでに多くの参加者が基本機能を理解しているということもあって、講演の多くは、アプリの連携機能や、Windows Storeの紹介に割かれていた。シノフスキー氏は、来場した開発者らに対して「Windows 8はMetroスタイルといった新しい機能を取り込む一方で、既存のWindowsで培われてきた強力なプラットフォームの上に成り立っている。既存のアプリケーションがそのまま動作するだけでなく、それがより高速で、少ないメモリ消費量となる」など、さらに強力なプラットフォームとなっている点を強調する。
デモストレーションでは、従来からのWindowsプラットフォームに加え、新機能やアプリの連携が新たな可能性をもたらすことを紹介した。SkyDrive連携やSNS、Webメールサービスなど、各種オンラインサービスの利用をOSレベルでサポートするなど、新世代OSの姿が垣間見える設計になっている。例えば、Charmと呼ばれるWindows 8で採用した新しいシステム共通メニューを使うことで、アプリ内の情報を複数ユーザーで共有できる。写真をSNSにアップロードしたり、相手にそのまま送信したりといった形だ。今回のデモストレーションでは「フォト」と呼ばれるアルバムアプリで複数の写真を選択して、メールで相手に送信する方法を紹介した。ただし、写真はメールにそのまま添付するわけではなく、大きいサイズのものはSkyDrive上にアップロードされ、サムネイルのみを相手に送信する。
デモストレーションでもう1つ紹介したのが、BUILD Windowsカンファレンスでも紹介していた「Windows To Go」という機能だ。これは、USBキーにWindows 8のブータブルイメージを保存しておき、これを差したPCでWindows 8を起動して、どこでも自分のデスクトップ環境をそのまま再現可能というものだ。「さまざまなデバイスや環境で仕事を行う」というワークスタイルを反映した企業ユーザー向けの機能で、Window 8 Enterpriseエディションで提供する。
その特徴は2つあり、1つが、LiveCDのように起動して元の環境に影響を与えず、システムをシャットダウンするとすべてのテンポラリの作業データが消えること。もう1つは、USBキーを差している間だけマシンが使用できるというセキュリティ方式を採用しており、作業中にUSBキーを抜くと動作をロックし、さらに、抜いたまま放置すると自動的にシャットダウンする。セキュリティを確保しつつ、その場ですぐ使えるPCで作業する用途に特化している。
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