ドコモの“透過型ディスプレイ”が実用化できない理由ワイヤレスジャパン2012

» 2012年05月30日 18時30分 公開
[池田憲弘,ITmedia]

操作のバリエーションを広げる新しいUI

photo ワイヤレスジャパン2012ドコモブース

 NTTドコモは、半透明の有機ELを使い、両面からのタッチ操作を可能とするディスプレイをワイヤレスジャパン2012(2012年5月30日〜2012年6月1日、東京ビッグサイト)で展示している。

 展示ブースでは、Android 2.3を搭載し、手のひらサイズでスマートフォン風のデモ機を用意した。端末はディスプレイを内蔵しているだけで、CPUやメモリ、バッテリーなどを搭載した本体と接続して使用する。

 タッチパネルは感圧式を採用した。静電容量式にしなかったのは、表から触っても、裏面が反応してしまうリスクがあるためだ。ただ、「誤動作が起こるケースはまれで、基本的には静電容量式でも問題はない」(説明員)そうだ。

 “透けるディスプレイ”は新しいユーザーインタフェースや操作感を生み出すことを目的とし、約1年前から開発が始まった。両面からタッチできることで、操作のバリエーションが増えるという。イベント会場では、ルービックキューブを使ったゲームアプリのデモを行っているが、キューブ全体を回す動作に加え、背面を人差し指でタッチしてキューブを固定することで1面のみを回す操作を披露していた。

 このほか、アイコン移動時に親指でアイコンをホールドしながら、裏面の人差し指でホーム画面のスクロールを行うなど、面倒だった動作が楽になる可能性を秘めている。説明員は「親指で画面上部の通知バーを降ろそうとすると面倒ですが、人差し指ならば簡単に届きます」とアピールした。

photophoto ディスプレイの後ろにある人差し指が透けて見える(写真=左)。通知バーの表示も人差し指ならば楽に行える(写真=右)

輝度と耐久性に課題、HMDが現実的

photo ディスプレイの厚さは公開していない。薄くしすぎると耐久性が落ちてしまうので、注意が必要だという

 このディスプレイは参考出展で、現時点で商用化は未定だ。実用化に向けてネックとなるのは輝度と耐久性だという。特にスマートフォンへの搭載においては問題点が多い。「ディスプレイの光量が足りないので、外で使うと太陽光などが反射して画面が見えなくなってしまうし、両面ともディスプレイがむき出しなので、スマートフォンをおしりのポケットに入れたまま椅子に座ると、圧力に耐えられず割れてしまう」(説明員)。

 耐久性については、ディスプレイに強化ガラスを使用するといった方法もあるものの、ディスプレイを囲む枠に依存する部分が大きいようだ。その一方で、「今回は試作機なので、スマートフォン程度のサイズにしているが、ディスプレイを大きくすることもできる」(説明員)。枠や耐久性の問題をクリアすれば、両面タッチに対応したタブレットも作れるという。

 説明員は「スマートフォンに搭載するよりも、HMD(ヘッドマウントディスプレイ)やコントローラーのサブディスプレイなどで採用するのが現実的」と話す。「透過型なので、ウェアラブルなデバイスと相性がいい。スマートフォンからは離れてしまうが、アクセサリに搭載するところから技術の進化が起きるというパターンにも期待している」(説明員)

photo 透過型ディスプレイの説明

 透過型であることのメリットとして、AR(拡張現実)との相性も挙げられる。現在のARは、スマートフォンなどのカメラが映した画像に情報を重ねるが、透過型のディスプレイなら、現実世界の風景に情報を重ねられるので、“カメラ越し”より直感的な操作が可能だ。

 コストも大きな問題はないようだ。「確かにディスプレイの価格は上がりますが、既存のシステムで動作するので、全体的に大きな影響はありません」(説明員)。背面タッチの対応はAPIを追加するだけでいいので、背面タッチに対応するアプリの開発も簡単に行えるという。「スマートフォンのみではなく、HMDやおもちゃなど、さまざまな機器に応用できる。ゆくゆくはスカウターを作りたい」と説明員は語っていた。

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