「ThinkPad T430s」の“6列”キーボードをねっちり使ってみた正直、“Ivy Bridge”より気になる(3/3 ページ)

» 2012年06月22日 12時36分 公開
[長浜和也,ITmedia]
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“Ivy Bridge”世代のミドルレンジCPUを搭載した評価機材の実力は?

 ThinkPad T430sは量販モデルを用意せず、Web販売限定となっている。購入のときに、OS、CPU、システムメモリ容量、ウルトラベイ・スリム搭載ドライブ、液晶ディスプレイの解像度、外付けグラフィックスコアの有無、無線接続対応規格、Webカメラ、指紋センサー、バッテリー容量を選択できる。CPUでは、“Ivy Bridge”世代のCPUで、Core i7シリーズからCore i5シリーズまで、TDP 35ワットタイプを用意する。Core i7シリーズを搭載した場合のみ、本体に搭載するMini DisplayPortはThinderbolt対応インタフェースとして機能する。

 システムメモリはDDR3-1600を最大16Gバイトまで搭載可能(メモリスロットは2基)で、ウルトラベイ・スリムに搭載するドライブとしてはDVDスーパーマルチか、セカンドHDDパック(容量500Gバイト)が選べる。液晶ディスプレイの解像度は1600×900ドットか1366×768ドットを、バッテリーパックは6セルか4セルをそれぞれ用意する。無線接続では、IEEE 802.11a/g/nとWiMAXに対応するCentrino Advanced-N + WiMAX 6250を内蔵できるほか、Bluetooth 4.0も利用できる。

 今回の評価用いた機材は、CPUにCore i5-3320M(2.6GHz、Turbo Boost Technology有効時で最大3.3GHz)を搭載し、システムメモリは8Gバイト、データストレージに容量128GバイトのSSD(評価機材はマイクロンのC400-MTFDDAK128MAM)を搭載し、さらに、外付けグラフィックスコアとしてNVIDIAのNVS 5200Mを組み込んでいた。CPUはミドルレンジクラスだが、データストレージとグラフィックスコアはハイエンドという構成だ。

評価機材の構成をデバイスマネージャーで確認する

 ベンチマークテストのPCMark 7、CristalDiskMark3.0、CINEBENCH R11.5、CINEBENCH R10、3DMark Vantage、3DMark 06で測定した結果を、”Sandy Bridge”世代のCore i5-2520M(2.5GHz、Turbo Boost Technology有効時で最大3.2GHz)と4Gバイトのシステムメモリ、データストレージにSSDを採用したThinkPad X1 Hybridと比較した。全般にThinkPad T430sの結果はThinkPad X1 Hybridを上回るが、特に3DMark関連のテスト結果は大幅に向上している。

 バッテリー駆動時間は、BBench 1.01(海人氏作)で測定した。条件を、10秒ごとにキーボード入力、60秒ごとに無線LANによるインターネット巡回(10サイト)とし、ThinkPad T430sの電源プランを「バランス」に、液晶ディスプレイの輝度を15段階の8レベルに設定して測定したところ、満充電状態からバッテリー残量5パーセントで休止モードに移行するまで、4時間24分かかった。

ベンチマークテスト項目 ThinkPad T430s ThinkPad X1Hybrid
PCMark7 PCMarks 3706 3505
lightweight 4605 3447
productivity 3945 2988
creativity 4348 5868
entertainment 2910 2632
computation 3210 7896
system_storage 5153 4113
CrystalDiskMark3.0 1000M:Read Seq 446.4 198.1
512K 342.7 180.3
4K 26.48 17.68
4K QD32 304.2 19.73
1000M:Write Seq 199 184.6
512K 198.8 147.8
4K 58.3 33.67
4K QD32 173.5 30.29
CINEBENCH R11.5 OpenGL 26.41 8.88
CPU Multi 3.09 2.78
CPU Single 1.33 1.21
CINEBENCH R10 CPU Single 5576 4968
CPU Multi 11794 10666
3DMarkVantage Entry 14357 8784
Professional 4385 1777
3DMark06 3DMarks 8365 3717
CPU 3771 3533

快適な表面温度を高負荷状態でも実現

 表面温度の測定は、NECAvio赤外線テクノロジーの赤外線サーモグラフィー装置「InfReC Thermography R300」を用いて行った。キーボード面における温度をアイドル状態とWebページの連続アクセス、そして、3DMark Vantage連続ループ動作時のそれぞれで、InfReC Thermography R300を使って撮影している。測定したときのテストルーム温度は25度だ。画像で示したサーモグラフィ装置の計測結果は、すべて下限を22度、上限を46度に設定した。低温から高温になるにつれて、黒、青、緑、黄、赤、白と色が変化する。それぞれの計測結果で最も高温になったポイントは、画像内に温度の値とともに示した。

 アイドル状態とWebページ連続アクセス実行状態では、キーボード面のどの場所も体温を下回る温度にとどまっている。Webページ連続アクセス実行状態で、最高温度はキーボード左人差し指ホームポジションのやや上で34.3度だ。どちらの状態でも液晶ディスプレイ下部で45度を超えているが、PCの操作において特に影響はない。3DMark Vantageを連続実行した直後では、キーボード左半分でボディ表面が40度を超えている。ただ、キートップとパームレストは、36〜37度と体温と同じレベルにとどまっている。実際に操作している手には、わずかに暖かさを感じる程度で、汗がじんわりと出てくるといった現象は起こらなかった。総じて快適にキーボード入力が行える状況といえるだろう。

アイドル状態で10分経過後に測定。キーボード面の最高点は33.6度、最低点は27.4度で、中央付近で相対的に温度が高いが、まったく気にならないレベルだ(写真=左)。Webページを巡回しテキスト入力を20分経過した後に測定。キーボード面の最高点は34.3度、最低点は27.8度で、アイドル時とほぼ同様の傾向といえる(写真=中央)。3DMark Vantageを3回ループ実行した後に測定。キーボード面の最高点は44.6度、最低点は28.8度で、負荷をかけ続けると、排気口のある左側面、キーボード左半分がやや熱を帯びる。しかし、パームレストはこの時点でも温度が低い(写真=右)

InfReC Thermography R300

InfReC Thermography R300

 NECAvio赤外線テクノロジーの「InfReC Thermography R300」は、研究開発や高度な診断・検査向けの赤外線サーモグラフィー装置だ。

 測定温度範囲はマイナス40度〜500度(2000度までオプションで対応)、温度分解能0.03度、空間分解能1.21mradと、クラス最高水準の画質と感度を実現している。ホールドしやすい約105(幅)×193(奥行き)×121(高さ)ミリのボディに、チルト調整や反転表示が可能な3.5型の液晶モニタを搭載。記録メディアにはSDメモリーカードを採用し、動画撮影も可能だ。熱画像、可視画像、合成画像の動画を同時に撮影できる。

メーカー:NECAvio赤外線テクノロジー

価格:186万9000円(税込み)



高い性能と薄くて軽いボディでギリギリのバランス

 ThinkPad T430sは、その末尾の“s”が示すように、T430の性能を維持しつつ、より薄く、より軽いボディを実現して携帯性を高めることを意図したモデルだ。本体サイズと重さ、そして、本体に用意するインタフェースの種類とベンチマークテストで得られた結果は、その意図が十分に実現していることを示している。

 そして、「買い換えるThinkPadがなくなった」と心配するベテランのThinkPadユーザーが一番気にするだろう、アイソレーションタイプの6列レイアウトを導入したキーボードについては、そのレイアウトの使い勝手、キーを押す感触など、従来の7列キーボードとまったく同じとはいわないが、使い勝手が大きく変わる、もしくは、使いやすさを損なう変化ではないことを伝えておきたい。

 市場の変化やボリュームのあるユーザー層の変化に合わせて、ThinkPadシリーズも変わっていくことは避けられない。ただ、ThinkPad T430sで起きた変化は、従来のThinkPadユーザーも十分受け入れられるのでないだろうか。

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