AMD AシリーズAPUで自作PCユーザー向け(本当はメインストリーム向けというらしいが、実感としては自作PC向けといいたい)第1世代の「Llano」に続き、2012年5月には第2世代の「Trinity」をAMDは発表している。なお、その時点ではノートPC向け製品のみだった。
デスクトップPC向けに関しては、6月のCOMPUTEX TAIPEI 2012の段階で各マザーボードメーカーがSocket FM2、および、AMD A85チップセットを搭載したサンプルマザーボードを展示しており、「間もなくか?」という状況だったが、結局9月も終わろうとする現在まで登場していない。しかし、どういう理由からか、グラフィックス性能だけを検証できる評価機材を入手できた。非常に限られた情報になるが、その範囲において性能検証を行ってみた。
今回評価で使ったCPUは、既に発表済みのノートPC向けモデルと同じく、CPUコアは、Bulldozer系アーキテクチャの「Piledriver」を採用している。
| 型番 | A10-5800K | A10-5700 | A8-5600K | A8-5500 | A6-5400K | A4-5300 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 開発コード名 | Trinity | Trinity | Trinity | Trinity | Trinity | Trinity |
| CPUコア数 | 4 | 4 | 4 | 4 | 2 | 2 |
| スレッド数 | 4 | 4 | 4 | 4 | 2 | 2 |
| 動作クロック | 3.8GHz | 3.4GHz | 3.6GHz | 3.2GHz | 3.6GHz | 3.4GHz |
| ターボ時最大クロック | 4.2GHz | 4GHz | 3.9GHz | 3.7GHz | 3.8GHz | 3.6GHz |
| 1次キャッシュ | (64+64)×4KB | (64+64)×4KB | (64+64)×4KB | (64+64)×4KB | (64+64)×2KB | (64+64)×2KB |
| 2次キャッシュ | 2048KB×2 | 2048KB×2 | 2048KB×2 | 2048KB×2 | 2048KB×2 | 2048KB×2 |
| プロセスルール | 32ナノメートル | 32ナノメートル | 32ナノメートル | 32ナノメートル | 32ナノメートル | 32ナノメートル |
| TDP | 100ワット | 65ワット | 100ワット | 65ワット | 65ワット | 65ワット |
| DDR3メモリ | 1866MHz | 1866MHz | 1866MHz | 1866MHz | 1866MHz | 1600MHz |
| チャネル数 | 2 | 2 | 2 | 2 | 2 | 2 |
| グラフィックス | Radeon HD 7660D | Radeon HD 7660D | Radeon HD 7560D | Radeon HD 7560D | Radeon HD 7540D | Radeon HD 7480D |
| GPUコアクロック | 800MHz | 800MHz | 760MHz | 760MHz | 760MHz | 723MHz |
| DirectX | 11 | 11 | 11 | 11 | 11 | 11 |
| ビデオ再生支援 | UVD3 | UVD3 | UVD3 | UVD3 | UVD3 | UVD3 |
| ソケット | FM2 | FM2 | FM2 | FM2 | FM2 | FM2 |
| GPU Cores | 384 | 384 | 256 | 256 | 192 | 128 |
コアの数は2〜4基で、今回明らかになったラインアップでは、2コア、または、4コアモデルが登場する見込みだ。Llanoでは3コアモデルもあったが、2つの整数ユニットに対し1つの浮動小数点ユニットを共有するBulldozer系アーキテクチャのTrnityの場合、3コアは難しいとみられる。また、こうしたレイアウトのため、Llanoでは各コア毎に搭載していた2次キャッシュメモリを、Trinityでは2コアで共有することになる。容量は2コアあたり2Mバイト、4コアのモデルでは4Mバイトとなる。
Bulldozer系の第2世代となるPiledriverではCPUのコアクロックが向上した。Llanoで最上位モデルのA8-3870Kは、定格で3GHz動作だったのに対し、デスクトップPC向けTrinityの各モデルは、ハイエンドのA10からローエンドのA4ですべて3GHzを超えている。また、Turbo CORE機能もバージョン3.0となり、A10-5800K、A10-5700の2製品で最大4GHzを超える。
統合するグラフィックスコアは、Radeon HD 7000Dシリーズになる。LlanoであhRadeon HD 6000Dシリーズだったので、型番的には1世代新しい。ただし、Graphiccs Core Next(GCN)ではなく、Radeon HD 6000世代で採用したVLIW 4アーキテクチャだ。新旧最上位モデルで比較すると、TrinityのA10-5800KはRadeon HD 7660D、LlanoのA8-3870KがRadeon HD 6550Dとなる。GPUコア数はA10-5800Kが384基に対し、A8-3870Kは400基だったため、世代が新しくなって数を減らしたこととなる。一方で、GPUのコアクロックを引き上げている。A10-5800Kは800MHzに対し、A8-3870Kは600MHzだった。
プロセスルールは、32ナノメートルのHigh-Kメタルゲートで変更はない。また、TrinityのTDPレンジもLlanoと同等だ。今回公表されたモデルでは、100ワット、または、65ワットとなる。


同様に、VISION Engine Control CenterでA10-5800K(写真=左)とA8-5600K(写真=中央)でグラフィックス関連のスペックを確認して、Liano世代のA8-3870K(写真=右)と比べるTrinityへの移行を考えているLianoユーザーが一番気をつけたいのはCPUソケットの変更だ。Llanoでは、同時に立ち上がったSocket FM1に対応していたが、TrinityではSocket FM2を採用している。Socket FM1とSocket FM2はピン数が異なり互換性がない。Socket FM1はLiano限りで使命を終えることとなり、Trinityにアップグレードする場合は、CPUに加えマザーボードも交換しなければならない。


CPUを裏にしてLlanoとTrinityを並べた。左がFM1に対応するA8-3870で、右がFM2に対応するA10-5800Kだ。中央の島に対し、右上、右下、左上の3カ所で異なる。トータルではFM2のピンが1本だけ少ない(写真=左)。Socket FM1(写真=中央)とSocket FM2(写真=右)。レバー式で固定するのは共通で、CPUクーラーの装着方法も同じだ。AM3+/FM1用のクーラーユニットがそのまま装着できるデスクトップPC向けTrinityをサポートするチップセットとして、3モデルを用意する。すでにAシリーズをサポートしていたAMD A75、AMD A55と、今回登場するAMD A85Xチップセットだ。AMD A85XチップセットをA75と比較すると2点が異なる。1つはPCI Expressレーンの構成で、16レーンを8レーン2本に分割できるようになり、AMD A75では公式にサポートしていなかったCrossFireXをA85Zはサポートする。もう1つは、Serial ATA 6Gbpsのサポート数だ。AMDチップセットは、これまででもSerial ATA 6Gbpsに6ポートが対応するなどライバルに先行していたが、AMD A85Xではこれが8ポートまで拡大した。接続できるストレージの数を生かしてファイルサーバ的な用途を狙う場合も、これまでより大容量化が可能になるだろう。
ただし、CrossFireXや8ポートのSerial ATA 6Gbpsといった点を考えると、Mini-ITXやmicro ATXといった従来のAシリーズで人気だったフォームファクタではなく、ATXフォームファクタでの活用がメインとなる。


今回の評価で用いたマザーボードは、AMD A85チップセットを搭載するGIGABYTE「GA-F2A85X-UP4」だ。3基のPCI Express x16スロットを搭載し、このなかの2基でCrossFireXをサポートする(写真=左)。マザーボードに搭載する映像出力インタフェースは、DisplayPort、HDMI、DVI-D、アナログRGBを用意する(写真=中央)。データストレージ用のインタフェースでは、Serial ATA 6Gbps対応の7基を搭載する。6ポート一組で、1ポートは離れた場所にある(写真=右)Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.