ジョブズ不在を乗り越えた過去最強のラインアップ――「iPad mini」「13インチMacBook Pro Retina」「薄型iMac」に見るアップルらしさ米Appleイベントまとめ(2/4 ページ)

» 2012年10月24日 21時18分 公開
[林信行,ITmedia]

ノートにはノートならでは、デスクトップにはデスクトップならではの強みを

13インチMacBook Pro Retinaディスプレイモデル

 まず発表されたのは「13インチMacBook Pro Retinaディスプレイモデル」だった。15インチMacBook Pro Retinaは、これまでで最高のディスプレイを備えたMacBook Proとしてさまざまなメディアで高く評価されていたが、アップルのノート型Macで1番の売れ筋は安価な13型モデルだ。今日、その13型モデルにも高精細なRetinaディスプレイモデルが加わった。

 新時代の到来を感じさせる超高解像度ディスプレイを搭載しながらも、光学式ドライブなどを取り除いたことで本体は20%ほど薄くなり、約1ポンド(約450グラム)軽量化。MacBook Proシリーズ史上、最も軽いモデルに生まれ変わった。

 もちろん、最大の目玉は何といっても、従来比4倍の解像度(409万画素)を13.3型ワイドのサイズで実現したことだ。これは15インチMacBook Pro Retinaディスプレイモデルに次ぐ、世界で2番目に高解像度なディスプレイを搭載するノートPCでもある。雑誌1冊ほどの画面サイズであるにも関わらず、フルハイビジョンテレビをはるかに上回る画素がその中に詰まっているわけだ。

 最新OSのMountain Lionが、ハードウェアの性能をフルに活用してくれるおかげで、例えば、ユーザーもMacBook Proも休んでいる間に、ファンの音を一切ならさず、その日作成した書類をすべて自動バックアップしてくれる「PowerNap」機能も利用できる。こうした性能だけでは語り尽くせない使い心地への配慮は、まさに新時代のノートPCといえる。

 そして価格。これまでの13型モデルは優れたコストパフォーマンスが魅力の1つとなっていたが、Retinaディスプレイを採用したこの新時代のノートも14万4800円から提供されることが明らかにされると、発表会場には大喝采が鳴り響いた(しかも本日から出荷開始だ)。

世界で2番目に高解像度のディスプレイを搭載した13インチMacBook Pro Retinaディスプレイモデル。眠っている間にソフトウェアアップデートやバックアップをしてくれる「PowerNap」ももちろん利用できる

 続いて、シラー氏は「miniを発表する、みなさんが期待している“あっちのmini”ではない」と言って、「Mac mini」の新モデルを紹介した。こちらはUSB 3.0を搭載し、Apple Online Storeからの購入時、BTOで「Fusion Drive」も選択できる。

 実は、このFusion Driveも今回の目玉の1つだ。最近のアップル製品は、HDDに比べて圧倒的に高速なSSD搭載モデルが増えてきた。しかし、SSDのフラッシュメモリはまだ高価で、どうしても容量が小さくなってしまうため、ディスク容量でHDDを選択する人も多い。Fusion Driveは、SSDのスピードとHDDの大容量の“いいとこ取り”をした、いわゆるハイブリッドドライブだ。どのアプリケーションがどのくらいの頻度で使われているかをOS側で監視し、よく使うものを自動的にSSDへ、あまり使わないアプリケーションを自動的に1TバイトのHDDへ移す仕組み。ハードとソフトの融合を目指すアップルならではといえる。

薄くて美しい新型「iMac」。最薄部はわずか5ミリだ

 ここまででもかなりすごいが、その後、不意打ちのようにして発表されたのが、事前のウワサがほとんどなかった新しいiMacだ。

 初代iMacの登場は今から14年前の1998年。それ以来、iMacは常にアップルの看板製品であり続けたが、進化を積み重ねて登場した今回の新型iMacは、正面から見た感じはこれまでのiMacそっくりなのだが、少し斜めから見ると非常に薄いことに驚かされる。最薄部の厚さはわずか5ミリ。巨大な液晶ディスプレイと、あまりにも薄い縁取りが、これまでになかった美しさと存在感を醸しだし、強烈なインパクトを持つ製品に仕上がっていた。

 Retina版MacBook Proなどにみられるディスプレイの薄型化技術に加えて、すでに多くの人がほとんど使わなくなった光学式ドライブを取り除いたことにより、この超薄型ボディを実現している。これまでの着実な進化をうまく積み重ねて、さらに上のレベルに到達する、という実にアップルらしい進化だ。

 こちらのiMacでもFusion Driveが用意され、容量は1Tバイトと3Tバイトが選べるようになっている。そして、これだけ大きな画面を備えているにも関わらず、消費電力は最大で50%ほど低減したという。なお、各製品の出荷時期は13インチMacBook Pro RetinaディスプレイモデルとMac miniが本日からなのに対して、新しいiMacは21.5インチモデルが11月、そして大画面の27インチモデルが12月からとなっている。

初代の「ボンダイブルー」から数えて8台目に当たる新型「iMac」。新技術でディスプレイを薄型化するとともに、反射率を75%も低減している点に注目だ

 ここで落ち着いて、1つ1つの製品の意味を考えると、アップルが非常にいい形で“アップルらしいモノ作りとは何か”に立ち返っていることが強く感じられる。

 例えば、ノート型Macはデスクトップに比べて液晶ディスプレイが小さくなるが、現在は高解像度のものが作れるようになってきた。そこで、Macは印刷のプロやビデオのプロにも愛用されるのだから紙の印刷の品質を上回り、ハイビジョンの映像を表示しても余裕がある解像度でDTPや映像編集をできるようにしよう、というのがMacBook Pro Retinaディスプレイモデルの立ち位置だろう。

 これに対して、iMacほどの大型液晶ディスプレイとなると、おそらくまだRetina化は難しい。それでは、ほかにデスクトップに残された価値は何かと考えた場合、大きいディスプレイと大容量のHDDだろう。とはいえ、ノート型Macははるか昔にSSD中心に移行しており、すでに驚くほどスピーディな処理ができるようになっている。そこで今回登場したFusion Driveが、これからのデスクトップ型Macの目玉になる。しかも、大きな液晶ディスプレイで、ユーザーやPCが置かれる部屋に必要以上の威圧感を与えないように、本体を極限まで薄くしてみせた。まさにアップル的ではないか!

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