新しいMacの発表だけでもかなり満足できるものだが、今回の主役はやはり何といっても「iPad mini」だ。だが、クック氏とシラー氏は、これを披露する前にもいくつか重要な発表を行った。
iPadは歴史上最も勢いよく売れている家電製品だ。2010年の夏に発売されてから2年強で、すでに累計1億台を出荷している。HPやレノボといったメーカーが販売するPC全モデルの合計台数よりも多い台数が毎四半期ごとに売れているという。
また、最近では他社からタブレット製品が出てきてiPadのシェアが下がってきたという報道もあるが、実際に使い勝手がよく、本当にユーザーが使っている率では圧倒的に他社を上回っているとクックCEOは説明する。調査会社がタブレットからのWebアクセスの頻度を調べたところ、91%がiPadであり、他社のタブレットはすべてをあわせても9%にしかならない、つまりほかのタブレットは、買ってはみたもののなんらかの理由で使われていない、ということを指摘した。
アップルは「ただ作るだけでは意味がなく、本当に人々が使いたくなるような製品に仕上げてこそ初めて製品として意味を持つ」と強く信じている会社だ。後述するが、この後のiPad miniの発表でも、既存の7型タブレットとの比較でその点が強調された。
それにしても、この勢いあるiPadはどこで使われているのか? iPadがとても伸びている市場の1つが教育市場で、米国では2500の教室がiPad上のiBooksを教科書として使っており、米国の高校のコアカリキュラムの8割がiBooks Authorで電子化され始めているという。本日アップデートがあった新しいiBooks Authorでは、フォントの埋め込みが可能になったほか、数式の表示やマルチタッチウィジェットの組み込みなどもできる。このほか、iPadは非常に幅広い分野でも活用されている。クック氏はそれら1つ1つの詳細までは踏み込まなかったものの、ビジネスマンからニュースリポーター、救急救命艇が活用している様子を写真で紹介した。「Fortune 500」と呼ばれる米国のトップ企業でも94%がiPadを導入している。
そして今回、2012年春に登場した「新しいiPad」からわずか半年強で、第4世代のさらに新しいiPadへ生まれ変わった。第4世代モデルは、「A6X」という最新チップを搭載して、CPUとGPUともに性能を最大2倍ほど高速化したうえ、テレビ電話機能に便利なフロント側のFaceTime HDカメラが720pのハイビジョン撮影に対応した。そしてLTE対応を強化し、新たにソフトバンクやSprint、そしてこれまでiPadを扱っていなかったKDDIからもLTE対応製品として出荷される。日本のユーザーにとっては、かなり大きなニュースだろう。
このほか、Wi-Fi通信の速度も2倍に高速化されたが、iPhone 5から搭載され始めた、新しい充電・周辺機器接続端子であるLightningに対応した点も目を引く。後で触れるiPad miniもLightningに対応したことから、旧来の30ピン端子を使う製品は、併売される旧モデルのiPad 2と、iPhoneの古いモデルだけになった。これにあわせて、カメラコネクションキット(USBアダプタとSDメモリーカードアダプタ)、HDMIアダプタとアナログRGBアダプタにもLightning用のものが発表された。
ちなみに、iPhone 5と第3世代のiPadを使い比べると、やはりA6チップを搭載したiPhone 5のほうが動作が速く、できることも多い(非常に個人的な例で申し訳ないが、筆者の大好きなサッカーゲーム「FIFA 13」(おそらくiOS用ゲームとしても最高レベルの高精細グラフィックスを使っている)は、第3世代のiPadではパワー不足に陥るせいか、AirPlayミラーリングが満足にできなかった。一方、A6を搭載するiPhone 5は問題ないので、A6を上回る「A6X」チップでは、どんなパフォーマンスが出るのかとても楽しみだ。
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