「Xperia Tablet S」の防滴・薄型軽量・長時間駆動はいかに実現したか開発者ロングインタビュー前編(3/3 ページ)

» 2012年11月27日 11時45分 公開
[鈴木雅暢ITmedia]
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ウォークマンの設計思想から生まれた、薄すぎるバッテリー(バッテリー部門)

―― 今回は薄型化しつつ、バッテリー駆動時間が延びました。

VAIO&Mobile事業本部 Tablet事業部 商品設計部 清水俊秀氏(電源設計・バッテリー開発導入担当)

清水氏 企画からはバッテリーを10時間持たせたい、メカからはボディを薄くしたいと、相反する要望を受けました。そこでさまざまな検討を重ねた結果、バッテリー容量を5000ミリアンペアアワーから6000ミリアンペアアワーに増やす一方、バッテリーの厚みを6.55ミリから3.25ミリへと大幅に薄型化することに成功しました。

―― 見るからにものすごく薄いですが、どのようにしてここまで薄型化したのでしょうか?

清水氏 理由はいろいろありますが、最も大きいのは設計思想の違いです。我々はウォークマンのチームから来ているのですが、薄型化のノウハウには長けており、その設計思想はサイズが大きいPC(VAIO)のチームとは大きく異なります。

 形からしても、先代のカートリッジ式に対し、今回はハーネスタイプ(ケーブル配線)を採用していますし、バッテリーの温度を検知するための温度計も本体側に逃がすなど、バッテリー容量に寄与しない部分は極限までそぎ落としました。

 タブレットでは、ユーザーがバッテリーを取り出すことを想定する必要がないので、ボディ外側のカバーを含めてトータルで安全性(難燃性、強度など)を確保するという発想です。難燃性を確保するシートは液晶ディスプレイ側の面にだけ貼ってあり、反対側はアルミニウム合金の裏面カバーと密着させることで、剛性と難燃性を両立しています。

 そのためにはボディのメカ設計と密接に連携して開発を行うことが重要なポイントになりますが、多大な協力のもとに実現できました。

―― なるほど。ボディもバッテリーパックの一部ということですね。確かにこの発想は新鮮です。

清水氏 バッテリーモジュール単体で安全性を確保するPCの発想とは決定的に異なる部分ですね。もちろん、Xperia Tablet Sでも安全性はしっかり確保しています。国内外の規制をクリアするだけでなく、より厳しい社内基準をきちんと満たしたうえで、ギリギリまで追い込んでいます。その過程ではかなり危ない実験もやりました。

―― このバッテリーモジュールですが、分解して単体で外に出して触っていると実は危ないのでしょうか?

清水氏 いきなり燃えたりはしません。ただし、外部から強い力が加わったり、何か液体がかかったり、そういう場面を想定すると不安はあります。

―― それにしても、6000ミリアンペアアワーでこの薄さには驚かされます。

清水氏 バッテリーセルも今回新規に設計してもらいました。先代機もバッテリーセルはソニーエナジー・デバイスというグループ企業で内製しています。こうした薄型で面積が大きい形状の大容量バッテリーセルというのはこれまで経験がありませんでしたが、Xperia Tablet Sのためにお願いして開発を進めてきました。

―― バッテリーは何セルで構成されているのでしょうか?

清水氏 2セルです。左右1セルずつですね。ウォークマンや携帯電話は1セルで動きますので、これまでこういう設計手法での複数セルのバッテリーパックという概念がなく、そこの設計も苦労した部分ですね。

内蔵バッテリーは、先代のカートリッジ式(右)に対して、簡素なハーネス式(左)を採用した。バッテリーの厚みは従来の6.55ミリから3.25ミリへと大幅に薄型化する一方、容量は5000ミリアンペアアワーから6000ミリアンペアアワーへと増加させている。バッテリーセルはソニーエナジー・デバイス製で左右2セルを内蔵。これもXperia Tablet Sのために新規開発されたものだ

バッテリーは容量に寄与しない部品を極限までそぎ落としている。中央に大きく配置されたバッテリーは、本体カバーとセットで難燃性や強度を確保する構造だ(写真=左)。バッテリーの温度センサー(オレンジ色の細いケーブル)も本体側に逃がしている(写真=右)


 インタビュー後編では、電気設計、ディスプレイ、タッチパネル、オーディオの各担当者へのインタビューをお届けする。

→・後編 「Xperia Tablet S」はAndroidタブレットの限界を超えていく

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