「タブレットにはタブレットに適する入力UIを」――QWERTYキーボードとフリック操作を組み合わせ、タブレットでの文字入力に最適化したという入力インタフェース「Blossom」が「SFC Open Research Forum 2012」(11月22〜23日、東京ミッドタウン)で展示されていた。
Blossomは、日本語ローマ字入力用のインタフェースだ。スマートフォンなどでよく見られる、フリック動作を使う日本語入力は「か」のボタンを押してフリックし、か行のかなを入力するのが一般的なスタイルだが、Blossomは、QWERTYキーボードでフリック操作を行い、かなを入力する。
「s」を押すとキーの周りに「さ」「し」「す」「せ」「そ」の選択肢が表示され、その方向にフリックすると入力できる仕組みだ。同様に「m」を押してフリックすればま行のかなを、「h」なら、は行のかなを入力できる。QWERTYキーボードはキーの数が多いので、「が」や「ぱ」といった濁音や半濁音のかなもワンアクションで入力可能とするのがポイントだ。「きゃ」のように小文字を入力する場合は、まず「k」をシングルタップした後に、「y」をフリックすればよい。
Blossomには「半角/全角」キーのような、かなと英字の入力切り替えボタンはない。半角英字を入力する場合は各キーをシングルタップして入力する。誤動作を防ぐため、一度でもフリック操作を行う(かな入力を行う)と、その後の入力は自動的にかな入力に固定される。かなの変換を確定すると、かな固定が解除される。
会場では、iPadを用いてBlossomの入力を試すデモが行われていた。記者も文章を入力してみたが、予想以上にサクサクと文字を入力できた。QWERTYキーボードでフリック操作という、これまでになかった方法に戸惑うと思ったが、仕組みが単純かつ、キー配置には慣れているので、迷いなくキーに指が伸びた。
「タブレットのソフトウェアキーボードは使い勝手が悪いと思うんです」とBlossomを開発した慶應義塾大学総合政策学部3年の桜井雄介さんは話す。
スマートフォンやタブレットの普及に伴い、液晶ディスプレイに触れて文字入力を行う機会が増えた。スマートフォンでは、フリック入力のほか、Googleが「Godan」(日本語入力用のキー配列)を開発するなど、日本語入力に最適化したインタフェースを探る動きがあるが、タブレットにはそういった動きがまだ少ないという。
「QWERTYキーボードは古くからPCで使われている入力スタイル。タブレットなのにPCと同じことをしては、上手くいかないことも多くなる。では、スマートフォンと同じにすればいいかというと、それも違う。スマートフォンのUIを、画面サイズが異なるタブレットにそのまま適用するのも難しい。タブレットにはタブレット専用のUIが必要なんです」(桜井さん)
会場で展示したものは第2弾のプロトタイプとのこと。今後は、さらにソフトの改良を進め、BlossomをAndroidアプリとしてリリースしたいという。リリース時期は「2013年春にGoogle Playストアで公開、が目標です」(桜井さん)。タブレットの利用スタイルを変えるかもしれない、新たな入力ソフトの登場に期待したい。
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