パナソニックが1月17日に発表したTOUGHPAD「FZ-G1」シリーズは、久しぶりに登場したTOUGHBOOK系列の新モデルだ。FZ-G1は、TOUGHPADのブランドを掲げているが、これまでのARM-Androidのタブレットデバイスではなく、スレートタイプながらも、インテルアーキテクチャとWindows 8 Proという“フルWindows”を導入しているので、そういう意味では、TOUGHBOOKの系譜といえる。
発表会がなかったので、世間の注目度はいまひとつだが、仕様をよくよく見ると、搭載するCPUや液晶輝度の向上、そして、強度を確保するためのボディ構造など、いろいろと興味深いポイントがある。FZ-G1の本体サイズは、270(幅)×188(奥行き)×19(高さ)ミリ、重さは約1.1キロと、厚さと重さ以外は、最近増えてきた“Clover Trail”世代のAtom Z2760(1.8GHz)を搭載するWindows 8導入タブレットPCと変わらない。厚さも従来のTOUGHBOOK CF-U1と比べれば、圧倒的に“薄い”。通常であれば、FZ-G1もAtom Z2760を搭載してもよさそうなボディサイズだが、パナソニックは、ここにCore i5-3437U vPro(1.9GHz、Turbo Boost Technology有効時で最大2.9GHz)を搭載した。通常のタブレットPCでもこのサイズにTDP 17ワットクラスのCPUを搭載するモデルはほとんどない。
この、TDP 17ワット級CPUの搭載を可能にしたのが、ボディに比して大型のファンだ。IP65の防じん防滴試験をクリアするFZ-G1にとって、ファンの内蔵はありえないと思うところだが、従来のTOUGHBOOKと同様に、ファンの中央軸ユニット区画への水とほこりの浸入を防ぐ形状のファンを採用することで、防じん防滴性能を維持しつつ、ボディ内部の冷却を可能にして、高性能なCPUの搭載を可能にした。FZ-G1では、薄いボディに内蔵するため、薄型にした新しい形状のファンを開発している。
屋外利用が多くなるFZ-G1では、日中の日差しの中で画面を見ることも多くなる。そのため、液晶ディスプレイの視認性を確保するために高い輝度の実現が求められる。しかし、その一方で、解像度を高くするとパネルに占める開口部の割合が少なくなって、高輝度の確保が困難になる。
FZ-G1は、10.1型ワイド液晶ディスプレイというそれほど大きくないサイズながら、1920×1200ドットの高解像度に対応する、にもかかわらず、最大輝度は800カンデラ/平方メートルを確保した。これは、開口部が大きいパネルを新規に用意し、バックライトのLEDも高輝度タイプを採用したほか、液晶パネルとタッチパネルの間隙に樹脂を充填するダイレクトボンディングによって太陽光など外光の反射率を4パーセントと通常のノートPCの3分の1に抑えることで実現した。なお、ダイレクトボンディングは、液晶ディスプレイに受けた衝撃を吸収する層としても利用できるので、耐衝撃性能の向上にも貢献する。
これまでのモデルから大幅に薄くなった(TOUGHBOOK比)ボディで、工場出荷時試験は120センチの26方向落下試験など、従来のTOUGHBOOKより厳しい条件をクリアする耐衝撃性能を実現した。薄いボディ(あくまでも従来のTOUGHBOOK比)で強度を確保するため、ボディ素材は、これまでと同様のマグネシウム合金を採用するほか、ボディ形状に凸部を設けることで、薄いボディでも強度を確保している。本体側面にエラストマー樹脂性のバンパーを設け、本体四隅にバルジを設けているのはTOUGHBOOKと同様だが、TOUGHPADでは、このバルジをTOUGHBOOKシリーズより大きく取っている(米国ではこの形状からドックボーン:犬が口にくわえている骨と呼んでいる)。
このように、FZ-G1は、これまでのAndroidを導入した堅牢タブレットデバイスの進化系というよりは、TOUGHBOOKのタブレットモデルとするのが相応しい構成だ。通常の環境で使うタブレットPCと比べたら、厚くて重いと思うかもしれないが、TOUGHBOOKを必要とする現場では、ずいぶん薄く軽くなった。それだけ、取り回しは容易になるが、これも、フィールドワークではオフィスユーザーが想像する以上に大きなメリットをユーザーに与えてくれる。では、実際にFZ-G1を過酷な現場で使って、ユーザーをどれだけ助けてくれるのか? については、また、機会を改めて紹介したい。
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