―― そこまで高画質にこだわるとなると、既成の液晶パネルでは選定が難しいと思います。Xperia Tablet Zでは、専用に液晶ディスプレイを新規開発したのでしょうか?
中川氏 その通りです。ノートPCやタブレットの液晶ディスプレイは、ディスプレイメーカーが先に大きさや解像度などの仕様を決めて、先にラインアップとして用意してあるのが一般的です。我々セットメーカーは少しだけチューニングできる場合もありますが、大抵の製品はそうした汎用(はんよう)品のラインアップから適したものを選択する、という作り方をしています。
しかし、今回のXperia Tablet Zでは我々が求める画質が先にあり、汎用品にはそれを満たすものが存在しなかったため、ゼロからフルスクラッチでディスプレイメーカーと共同開発することになりました。
最終的な画質の作り込みにおいては、「モバイルブラビアエンジン2」というソフトウェアで調整を行っていますが、ハードウェアの段階でも赤が色域のどの辺りにあるのか、緑がどのくらい鮮やかな緑なのか、色度の指定やガンマ特性なども仕様として要求しています。今回は画質だけでなく、薄さや強度なども含めて特注しました。
―― そのほか、開発に苦労した点はありますか?
中川氏 開発時に特に苦労し、こだわった点は、画面を消したときに画面の黒と額縁の黒を漆黒にそろえてディスプレイを消し込むことでした。特にディスプレイエンジニアとしてデザイン面でこだわった部分ですが、Direct Touchのためにガラス面に作り込んだタッチセンサーが邪魔になるなどして、真っ黒にすることが難しかったのです。ひたすら地道な作業なのですが、オプティコントラストパネルに関わる全材料の膜厚、光学特性をすべてチューニングして合わせていきました。目指したのは、「消しているときすら美しいディスプレイ」です。
―― 今回はカメラにも力を入れているそうですが、この薄さではハイスペックにまとまっているように思えます。
天野氏 Xperia Tablet Zの10.1型ワイド液晶ディスプレイは1920×1200ドットの高精細表示が可能です。本体内蔵のカメラで撮影した写真や動画をこの画面で見て、きれいに思える美しさを目指しました。
インカメラは約220万画素、アウトカメラは約810万画素ですが、いずれもソニー製の裏面照射型CMOSセンサーである「Exmor R for mobile」を使っています。薄型ボディに高感度、低ノイズのカメラを収めているのがポイントです。今回、Xperia Tablet Zに内蔵するにあたっては、約810万画素のカメラモジュールを専用に作りました。
―― それは最薄部6.9ミリのボディに収めるためでしょうか?
天野氏 そうです。従来の800万画素クラスのカメラモジュールはもっと厚みがあり、カメラの部分だけ張り出すようなデザインにするか、低画素のセンサーモジュールを搭載するかしかなかったのですが、今回は画質、薄さ、どちらも妥協できない要素だったため、新たに薄型のカメラモジュールを起こしています。
―― カメラのアプリも大きく変わっていますね。
天野氏 はい。カメラのハードウェアだけでなく、カメラアプリのユーザーインタフェースも使いやすいよう力を入れて作り込みました。画面上に余計なボタンなどを置かず、タブレットの大画面で見たまま、空間をそのまま切り取るようなイメージで使っていただきたい、という意図が反映されています。
また、写真撮影と動画撮影のシャッターボタンをすぐ近くに並べて置くことで、写真撮影中に動画を撮り始めたり、動画撮影中に写真を撮ったりと、モードの切り替えなしに写真と動画をどちらも自由に撮影できるよう工夫しています。
―― リアルタイムに9分割表示できるエフェクトもユニークです。
天野氏 撮影前に複数のエフェクトがかかった状態をプレビューしながら効果を選び、簡単に指で画面をなぞることで効果を替えたり、強度を調整したりできるので、楽しく便利に使っていただけると思います。
スマートフォンでは以前から入っている機能ですが、これだけの大きな画面でスムーズに動かすにはパフォーマンスの最適化が必要なので、タブレット向けに新規に画像処理エンジンのチューニングを行いました。
―― 画像処理エンジンはソフトウェアで処理しているのでしょうか?
天野氏 デジタルカメラの「サイバーショット」シリーズなどでは画像処理チップを搭載してハードウェア処理を行っているものを、スマートフォン/タブレットではソフトウェア処理で対応しています。つまり、サイバーショットと同じ画作りの技術を導入し最適化して、高画質を実現しているのです。ソフトウェアでの画像処理には、GPGPUを活用しています。
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