「Xperia Tablet Z」開発者インタビュー(後編)――超薄型と高画質を両立できた謎に迫る液晶ディスプレイ、カメラ、総括編(1/3 ページ)

» 2013年04月05日 10時30分 公開
[鈴木雅暢(撮影:矢野渉),ITmedia]

←・前編 防水防塵の超薄型軽量ボディを解剖する

 前回に引き続き、「Xperia Tablet Z」のインタビューをお届けする。

ソニーモバイルコミュニケーションズが開発した「Xperia Tablet Z」は、約6.9〜7.2ミリ厚、約495グラムと薄型軽量を徹底追求した10.1型Androidタブレット。IPX5/7相当の防水性能とIP5X相当の防塵性能も確保している

ボディの薄型化に貢献しながら、画質も追求した液晶ディスプレイ

―― ボディを薄型化するため、液晶ディスプレイ部分も従来比で約20%薄型化したと聞きました。液晶ディスプレイを先代機の9.4型から10.1型に大型化し、表示解像度を1280×800ドットから1920×1200ドットに高めながら、薄型化のハードルをどのようにクリアしたのでしょうか?

液晶ディスプレイ設計担当の中川氏

中川氏 Xperia Tablet Zでは我々が「Reality Display」と呼ぶ高輝度・高精細の液晶ディスプレイを採用しましたが、同時に薄型化も積極的に行いました。

 薄型化で決定的な貢献をしているのは、タッチセンサー層を保護ガラスに一体化したことです。我々はこれを「Direct Touch」と呼んでいますが、タッチセンサーを液晶ディスプレイの保護ガラスの裏に直接作り込むことで、従来機に存在したタッチセンサー単体としての部材をなくしています。

 Direct Touchの導入メリットは、保護ガラスとタッチセンサーの一体化による薄型化だけではありません。光の反射を軽減して視認性を高め、タッチの精度も向上させる効果を持ちます。

 さらに、先代機に採用した「オプティコントラストパネル」も継承しました。これは液晶パネルと保護ガラスの間をクリアな樹脂で埋めて空気層をなくしたものです。Direct Touchと同じように、光の反射と拡散が抑えられ、照明下でも視認性が高く、鮮やかな色彩を映し出すとともに、タッチ精度の向上にも貢献しています。

 そのほか、保護ガラス、液晶パネルのガラス、バックライト部材など、液晶ディスプレイを構成する部品のほとんどすべてを薄型化しました。

1920×1200ドット表示の10.1型ワイド液晶ディスプレイは、高輝度、高コントラストで発色にもこだわった(写真=左)。「Direct Touch」と「オプティコントラストパネル」の採用により、光の反射と拡散を抑え、コントラストや発色を高めつつ、保護ガラスと表示面の距離を縮めることで、タッチ操作の精度も上げている(写真=右)

―― Direct Touchは従来機でどうして採用しなかったのでしょうか?

中川氏 タッチパネルの製造技術が向上して、これまで困難だったことができるようになったことが大きいです。以前から技術自体はあったのですが、この大きさ(10型クラス)では歩留まりが非常に悪く、製品化はできませんでした。スマートフォンでは先行していたのですが、タブレットでもこのXperia Tablet Zから導入できるようになりました。

―― 先代の「Xperia Tablet S」ではタッチパネルのセンサーチップをデュアルで搭載して精度を上げたり、飛散防止フィルムを取り除いて手触りを向上させたり、といったこだわりがありましたが、Xperia Tablet Zのタッチ感はどうでしょうか?

中川氏 今回のセンサーチップはシングルですが、センサー密度はむしろ先代機よりも細かくなっており、従来より高精度に仕上げています。飛散防止フィルムについては、画質、タッチ感度、強度、もろもろのバランスを考慮したうえで装着しました。

 機構設計の担当が説明したように、今回はボディの強度を確保するアプローチが変化しています。従来機ではボディ内部の中央付近に背骨となるような金属のフレームを入れて強度を確保していましたが、今回は表面の外装に強度の高い素材を使い、外装の固さで中身を守っています。いわば、甲殻類のようなイメージですね。

 ガラスの強度自体は先代機と遜色ないレベルにありますが、それでも万全を期して飛散防止フィルムを装着するという判断をしました。手触りを少しでもよくするため、表面のコーティングは多くのサンプルを試して最適化しています。

従来比で色域は約2倍に広げた。特に赤から青にかけての色鮮やかな表現が可能になっている

―― 液晶ディスプレイの色域が従来比で約2倍に向上していますが、どのように実現したのでしょうか?

中川氏 技術的には、液晶ディスプレイの色域を広げることはそう難しくありません。内部のカラーフィルターを濃く厚塗りしていけば、バックライトから突き抜けてくる色は鮮やかになります。ただし、カラーフィルターが厚いと、そのぶん輝度が下がってしまいます。輝度をキープしようとすれば、バックライトをさらに明るくする必要があり、消費電力が増してしまいます。

 つまり、従来は消費電力の増加によるバッテリー駆動時間への悪影響や製造コストの問題もあり、タブレット業界自体がそういう画質重視のディスプレイを載せる方向には進んでいませんでした。

 その一方で、Xperiaスマートフォンは多くの方から画質を高く評価していただいています。そのXperiaの冠がつくタブレットなのだから、Xperia Tablet Zではノウハウをすべて盛り込んで、画質を徹底的に上げていこうと考え、色再現性の高い液晶ディスプレイにこだわりました。

―― ディスプレイデバイスで一般的な色空間の規格として、sRGB、Adobe RGB、NTSCといったものがありますが、どの辺りをターゲットにしているのでしょうか?

中川氏 sRGB、Adobe RGB、NTSCといった特定の規格を目標にしたわけではありません。もちろん、それらは頭には入れていて、大きく逸脱しないようにはしていますが、Xperiaには独自の色表現の基準があり、そこを目指しています。

 今回はNTSC比で〜%といった数字も公表していません。ただし、せっかく色再現性の高い液晶ディスプレイを作ったので、「従来比2倍」というアピールの仕方で高画質化をお伝えしています。

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