「Xperia Tablet Z」開発者インタビュー(前編)――極限の防水スリムボディを徹底解剖する商品企画、デザイン、機構設計編(3/4 ページ)

» 2013年04月04日 10時30分 公開
[鈴木雅暢(撮影:矢野渉),ITmedia]

「1枚の薄い板」にするための徹底したこだわり

―― ボディのデザインコンセプトを教えてください。

Xperia Tablet Zのデザインを手がけた杉山氏

杉山氏 Xperia Tablet ZではスマートフォンのXperia Zと共通で「OmniBalance design」(オムニバランスデザイン)というデザインテーマのもと、親和性を持たせたデザインに仕上げています。

 ボディは最薄部で6.9ミリという薄さを実現していますが、タブレットというデバイスは、最終的には画面(コンテンツ)だけが残って、ハードウェアはどんどん薄く、存在をどんどんなくしていく方向で進化していくのではないか、と考えています。

 ソニーとして「それを先取りする」という表現が適切かどうかは分かりませんが、いち早く「きれいな1枚の薄い板」を作りたかった、世の中に送り出したかった、ということが背景にあります。

 「オムニ」というのは、ラテン語で「全方位(方向性をなくす)」という意味があります。方向性のあるデザイン自体が、今のタブレット/スマートフォンにはマッチしないのではないかと考え、縦向きと横向きで同じように使えて、持ち方も好きなように持てるようになっています。

余計な装飾を排し、ミニマルな外観を追求したフルフラットなボディは、縦でも横でも同じように見て使える「オムニバランスデザイン」を追求。ボディカラーはブラックとホワイトを用意する。裏面はどちらもマット調、側面は光沢仕上げ、角はラバー風の素材と、極薄ボディながら細部までこだわっている

―― 確かに、実にシンプルで「黒い板」という印象を受けます。

杉山氏 「1枚の薄い板をどう作るか」ということを大きなテーマに、極力ノイズが少なくシンプルで、全方位に対してバランスの取れたシンメトリーなデザインを目指しました。また、画面を消したときに真っ黒な1枚の板に見えるよう、液晶ディスプレイの表示面とフレームの黒色を合わせて消し込むという点にもこだわっています。電源を入れると、1枚の板の中からふっとコンテンツが浮き上がるイメージです。

 ただ、あまりにシンプルすぎて何もない板を作っても無個性になってしまい、お客様に響きません。今回はサイドにもクリアプレートを張っているのですが、どこから見ても同じような造形になっているのがポイントです。感覚的なことで分かりづらいかもしれませんが、プレートの直線的な造形の流れをエッジの緩やかな丸みで吸収してあげる、というようなイメージでデザインしています。

液晶ディスプレイがオフの状態では、画面とフレームの境目がほとんど見えない1枚板のようなシンプルな外観になる(写真=左)。電源ボタンを押すと、映像がふっと浮かび上がる良質なユーザー体験を意識したという(写真=右)

―― シンプルな造形の中で、電源ボタンが印象的ですね。

スピン加工を施したアルミの電源ボタンがデザインのアクセントになっている。ちなみにカメラリングはステンレス製だ

杉山氏 オムニバランス、つまり方向性がないというコンセプトではありますが、操作時には電源ボタンを押して起動させるという所作が必要です。正面に何も置かないぶん、側面に1点、目を引くものを作りたかったということもあり、今回は意図的にアイコンとして、アルミのスピン加工の入ったキーを目を引くように配置しています。

―― デザインでほかに苦労した点はありますか?

杉山氏 今回は最薄部で6.9ミリという薄さに加えて、防塵、防水にもしなければなりません。そのため、コネクタ類にすべてキャップを付けているのですが、フタの部分でデザインの流れを途切れさせないことには強くこだわりました。これはもうギリギリの部分なのですが、設計さんにもお願いして実現しています。

 また、背面の軽量強化グラスファイバーの仕上げにも苦労しました。ブラックのほうは、触感をよくしたいということから背面にソフトフィール(ゴム触感)のトップコートをかけて指あたりのよさ、持ち心地のよさを向上させています。ホワイトのほうは軽くパールを入れて、女性の感性にも響くような高級感を演出しています。

 そのほか、細かいところではドコモモデルとWi-Fiモデルで側面の表面仕上げを少しだけ変えています。ドコモモデルは鏡面調仕上げで増反射コート材に裏からブラックの印刷をしました。Wi-Fiモデルは鏡面までいかず、増反射コート材を使わない光沢調の仕上げとなっています。

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