「Xperia Tablet Z」開発者インタビュー(前編)――極限の防水スリムボディを徹底解剖する商品企画、デザイン、機構設計編(2/4 ページ)

» 2013年04月04日 10時30分 公開
[鈴木雅暢(撮影:矢野渉),ITmedia]

スマートフォンとタブレットでエコシステムの再構築を図る

―― Xperia Tablet Sと比較すると、純正アクセサリ接続用の「マルチポート」も廃止されました。豊富なアクセサリの資産があったのに、なぜマルチポートを省いたのでしょうか?

 マルチポートは、もともとタブレットのユーザーにアクセサリのエコシステムを広げる目的で実装されたのですが、スマートフォンとタブレットをソニーモバイルで展開していくことになり、スマートフォンも含めたエコシステムを再構築する必要があるとの結論に至りました。

 具体的には、スマートフォンのトレンドとして、MHL(Mobile High-definition Link)は外せないインタフェースに成長していますので、こちらに統合し、新たにエコシステムを構築していこうという方向転換です。

最薄部6.9ミリの薄型ボディながら、インタフェースも健闘している。横位置で正面から見て、上面には赤外線ポートとマイクを内蔵(写真=左)。下面にはカバーの下に、microSDカードスロットとMicro USB、スピーカー(L/R)を配置している(写真=右)

左側面にカバー付きのヘッドフォン/マイク兼用端子、電源ボタン、音量調整ボタン、オプションとなるクレードル用の充電端子、スピーカー(L)を用意(写真=左)。右側面にインタフェース類はなく、スピーカー(R)があるのみだ(写真=右)

下面(写真=左)と左側面(写真=右)のカバーを開けた様子。これらのカバーをしっかり閉じた状態では、防水防塵の仕様となる

―― ソニーモバイルでスマートフォンの企画を担当されていた田中さんは、このXperia Tablet Zが初めて手がけたタブレットとのことですが、スマートフォンとタブレットで、違いを意識されたことはありましたか?

田中氏 はい。開発当初に最も苦労したのは、ユーザーがどういう風にタブレットを使うのかがイメージしづらかった、ということがありました。

 スマートフォンは常に持ち歩くデバイスということで、サイズ感や機能が経験的にイメージできるのですが、タブレットは、モノ好きといいますか、ガジェット好きの方が使うものでもあり、またPCよりカジュアルなブラウジングツールとしてファミリーで使われるという一面もあります。ソニーとしてどちらを掘り下げていくのか、その辺りのターゲットの想定には悩みました。

―― 今回のメインターゲットはどちらに想定したのでしょうか?

田中氏 今回はソニーらしいデザインやスペックに興味を持っていただけるようなモノ好き、ガジェット好きの方を主なターゲットとして想定しました。

卓上ホルダーは下部にメタルパーツを配して、本体装着時にAV機器のようなイメージを演出した

 アクセサリの卓上ホルダーなどはソニーモバイルの製品としては、初めてメタルパーツを施すなど、所有欲を刺激するように、かなり力を入れて作っています。

―― SoC(System-on-a-Chip)がNVIDIA Tegra 3からQualcomm Snapdragon S4に変わりましたが、その理由を教えてください。

田中氏 スマートフォンとタブレットを並行して開発するうえで、最適な選択肢がSnapdragon S4だったということです。タブレットとスマートフォンでプラットフォームを共通化することにより、開発を効率化、スピードアップできることに加えて、タイミング的にこのSoCがちょうどよかったということも大きいです。消費電力が低く、放熱設計が比較的容易で、ボディの薄型軽量化を進めるうえでも好都合でした。

 また、データストレージは容量が32Gバイトですが、SDXC対応のmicroSDカードスロットをこの薄さで搭載しているので、大容量のデータを数多く本体に保存しておきたい場合、64GバイトのmicroSDカードを装着すれば、対応できるようになっています。

―― Micro USB経由の充電と、クレードル経由の充電、どちらがどのくらい速いでしょうか? また、PCのUSBポートからの給電はサポートしていますか?

田中氏 ソニーモバイルが発売している1.5アンペアの充電器を使う限りはどちらも差がありません。ドコモが販売している高速タイプの充電器を使うと、10分ほどクレードルのほうが早く充電できます。

 PCからの給電に関しては、通常のUSBポート(USB 2.0で500ミリアンペア、USB 3.0で900ミリアンペア)の場合、使用中はタブレットのほうの消費電力が大きくなってしまうので、スタンバイ時や電源オフ時のみ充電可能です。PC側で給電能力を強化していて、1.5アンペア供給が可能なポートであれば、使用中の充電もできます。

 ちなみに電源周りでは、Wi-Fiモデルのみバッテリーの「スタミナモード」(スタンバイ時にアプリの動作を抑え、通信機能をオフにすることで、待機時間を大幅に伸ばすモード)をサポートしている点も、ドコモ販売モデルと違います。

Wi-FiモデルとLTE/3Gモデル(ドコモ販売モデル)の違い
カテゴリー Wi-Fiモデル ドコモモデル
製品名 SGP312JP/B・W SO-03E(LTE/3G)
LTE/3G
側面パーツ(ブラックモデルのみ) 光沢調仕上げ 鏡面調仕上げ(増反射コート材に裏からブラックの印刷)
正面のロゴ SONY(左上) SONY(左上)、Xi(下中央)
My Sony会員登録 ○ (リーフ付属/Webショートカット)
販路 ソニーマーケティング NTTドコモ
ワンセグ ○(録画機能あり)
モバキャス(NOTTV)
卓上ホルダ(充電機能のみ) 別売(チルト角度調整可) 付属(チルト角度固定)
ACチャージャー 付属 別売
USBケーブル 付属 別売
microSD 別売 付属(16Gバイト)
ヘッドセット 別売 付属
ドコモアプリ
アプリ終了機能(タスクキラー相当のモード)
NFC簡単起動ウィジェット
スタミナモード

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