“プロ級の色再現性”は安価な23型液晶でも健在か?――EIZO「ColorEdge CS230」を試す(後編)約6万円の“カラマネ”液晶を徹底検証(1/5 ページ)

» 2013年04月15日 19時30分 公開

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 前回に引き続き、EIZOの低価格なカラーマネジメント対応ディスプレイ「ColorEdge CS230」のレビューをお送りする。

エントリーモデルでも色管理ソフトウェアは上位機と共通

EIZOの23型フルHD液晶ディスプレイ「ColorEdge CS230」は、独自のハードウェアキャリブレーション機能を備えたカラーマネジメント対応モデルだ。2012年11月に発売。メーカー直販価格はディスプレイ単体で5万9800円から

 EIZOのカラーマネジメント対応ディスプレイ「ColorEdge」シリーズにおいて、ハードウェアの高画質化・表示安定化技術とともにアドバンテージとなるのが、同社独自のカラーキャリブレーションソフトウェア「ColorNavigator」だ。

 ColorEdge CS230では、ColorNavigatorを付属したモデル「CS230-CN」(同社直販価格6万4800円)、もしくはColorNavigatorと専用センサー「EX2」を付属したモデル「CS230-CNX」(同6万9800円)で利用できる。ディスプレイ単体モデルの「CS230」(同5万9800円)には付属しないので注意したい(簡易フォトカラーマッチングソフトウェアの「ColorNavigator Elements」は付属する)。

 通常のディスプレイとは異なる本格的なカラーマネジメント機能を期待して導入するならば、ColorNavigator付属モデルがおすすめだ。今回は最上位構成のCS230-CNXを試したが、7万円弱でプロ仕様のハードウェアキャリブレーション用ソフトウェアとセンサーまでそろうことを考えると、コストパフォーマンスは高いといえる。

「ColorNavigator」を起動した様子。あらかじめ3つの調整目標が用意されており、画面の案内に従うだけで、手軽に調整が行える。対応OSはWindows XP/Vista/7/8、Mac OS X10.4.11〜10.8だ

 さて、ColorNavigator(現行バージョンは6)はプロ仕様のカラーキャリブレーションソフトウェアだが、あまり難しく考える必要はない。初心者でも簡単に操作できるよう、あらかじめ3つの用途を想定した調整目標が登録されているからだ。

 3つの調整目標とは「Web向けコンテンツ作成用」(輝度80カンデラ/平方メートル、色温度6500K、ガンマ2.2)、「印刷用」(輝度80カンデラ/平方メートル、色温度5000、ガンマ2.2)、「写真用」(輝度100カンデラ/平方メートル、色温度5500K、ガンマ2.2)となっており、輝度と色温度が少しずつ異なる。

 Web向けコンテンツ作成用というのは、ネットコンテンツで標準的なsRGB規格に準拠した輝度と色温度だ。CRTを想定した古い規格なので、輝度は80カンデラ/平方メートルと低い。写真用と印刷用の調整目標では、さらに昼白色を意識した5000K(D50)近くまで色温度を下げている。5000KはPCの比較的色温度が高い(白が青っぽい)ディスプレイを見慣れていると、かなり赤っぽく感じるだろうが、一般社団法人日本印刷学会が印刷の色評価時に推奨する照明の色温度でもあり、古くから写真撮影(フィルムカメラ含む)や印刷に携わってきた方にとっては、これが「普通の白色」だ。

 特殊な環境で利用するのでなければ、これら3つの調整目標でキャリブレーションを行い、用途に応じて使い分ければよいだろう。個別に白の輝度、白色点(〜K、X/Yの数値)、黒の輝度(黒レベル)、RGBのガンマ値などを設定してキャリブレーションすることもできる(ただし、CS230に色域変換機能はないため、色域はsRGB相当の「モニターネイティブ」に限られ、違った色域の再現はできない)。

今回は専用センサー「EX2」でキャリブレーションを行った

 リストから任意の調整目標を選択し、調整ボタンをクリックすれば、後は画面の案内に従うだけで16ビット(6万5281階調)のLUT(ルックアップテーブル)を利用した高精度なハードウェアキャリブレーションが可能だ。

 手順としては、調整目標の指定、使用するセンサーの選択、センサーをディスプレイにセット、そして「実行」ボタンをクリックすることで、自動的に測色、調整、ICCプロファイルの作成、OSへの登録までが自動で行える。

 調整後の表示はカラーモードの「CAL」(Calibration)モードに割り当てられる仕様だ。常駐機能の「ColorNavigator Agent」を利用することで、ColorNavigatorを起動していなくても、Windowsデスクトップの通知領域やMac OS XのDockから調整済み目標の一覧を表示でき、用途に合わせて調整済み目標を手軽に切り替えられる。

CS230で「ColorNavigator」と「EX2」を利用し、「Web向けコンテンツ作成用」のハードウェアキャリブレーションを実行した様子。画面の案内に従って、センサーをセットして「実行」ボタンを押せば、後は自動的に計測から調整、ICCプロファイルの作成、OSへの登録までが行える。キャリブレーションの最後には、内蔵のコレクションセンサーが起動して計測を行い、以後は定期的な輝度と白色点のズレを自動で補正してくれる
3つの調整目標から任意のものを選択し、「調整」をクリックするとセンサーの選択画面が現れる(画像=左)。センサー(今回はEX2を使用)を画面の案内に合わせてセットしたら、「実行ボタン」をクリック(画像=中央)。後は自動で計測や調整が行われ、調整結果と作成したICCプロファイルの保存先が表示される(画像=右)

キャリブレーションの調整目標は、手動設定や目標物の測定、プロファイルの読み込み、既存の目標から作成といったこともできる(画像=左)。手動設定では、輝度や白色点(画像=中央)、RGB個別のガンマ(画像=右)を数値指定して調整目標とすることが可能だ(画像=右)

 ちなみに、キャリブレーション後の調整結果を手動で微調整することも可能だ。例えば、プリンタ側のプロファイル再現性が低かったり、印刷する紙の白色が違ったりする場合は、輝度、白色点、6色(RGBCMY色相/彩度)を微調整できるので、印刷時のカラーマッチング精度をより高めたい場合はこの機能を活用するとよいだろう。印刷用紙の白色点を測定することで、より紙と画面の色を近づける調整も行える。

調整結果を手動で微調整することも可能だ。白色点や輝度(画像=左)、6色個別(画像=中央)の調整も行える。調整用に独自のチャートも用意されている(画像=右)

 ColorNavigatorは、基本的に測定準備を終えたら、後はすべて自動調整なので、ユーザーに面倒な調整作業を強いることがなく、キャリブレーションの時間が短くて済み、誰が操作してもユーザースキルに依存せず高精度な結果を得られるのがメリットだ。

 調整後にディスプレイの調整状態が目標値とどの程度一致しているのかを検証する機能も持つ。カラーパッチの測定を行い、プロファイルと実測値の色差をΔE(デルタイー)の値で表示することが可能だ。さらに前編で紹介した通り、本体に内蔵された「コレクションセンサー」が自動で白色点と輝度を保持する表示補正を行い、定期的な表示補正まで自動化できるため、調整後の表示維持に手間がかかることもない。

キャリブレーション後にディスプレイの調整状態が目標値とどの程度一致しているのかを検証する機能も備えている。検証結果は日付別のグラフ(画像=左)と詳細表示(画像=右)が可能で、PDFファイルへの出力機能もある

 このようにColorNavigatorによるハードウェアキャリブレーション機能は、通常のディスプレイに市販のキャリブレーションセンサーを組み合わせたソフトウェアキャリブレーションと比較して、作業効率、調整精度、そしてメンテナンス性も大きく勝る。

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