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» 2013年04月10日 17時15分 公開

“6万円切りでカラマネ対応”の23型フルHD液晶――EIZO「ColorEdge CS230」を試す(前編)プロ御用達ブランドがここまで手軽に(1/3 ページ)

EIZOのカラーマネジメント対応ディスプレイ「ColorEdge」シリーズに、6万円を切る入門機が登場。これまでのプロやハイアマチュアではなく、写真やイラスト好きで色にこだわる幅広いユーザーに向けた新モデルだ。普通のディスプレイとは一体どこが違うのか?

・→ “プロ級の色再現性”は安価な23型液晶でも健在か?――EIZO「ColorEdge CS230」を試す(後編)

個人ユーザーにも「カラーマネジメント対応ディスプレイ」の恩恵を

カラーマネジメントに対応したEIZOの23型フルHD液晶ディスプレイ「ColorEdge CS230」。2012年11月に発売。メーカー直販価格は5万9800円から

 個人的に気になっていた23型フルHD液晶ディスプレイ「ColorEdge CS230」を試用する機会を得た。膨大な数の23型ワイド液晶ディスプレイが市場に存在する中、この製品に注目したのは、EIZO(2013年4月1日に「ナナオ」から社名変更)が発売した新機軸のカラーマネジメント対応ディスプレイだからだ。

 カラーマネジメント対応ディスプレイは、色再現性を最優先するプロフェッショナルやハイアマチュア向けの高価な製品ジャンルのため、これまでPC USERではあまりレビューしてこなかったが、CS230は色にこだわる写真好きやイラスト好きのクリエイティブな個人ユーザーをターゲットにしてきた。つまり、プロ御用達ブランドが一般ユーザーにまでその裾野を広げるべく投入した戦略的な新モデルなのだ。

 ColorEdgeシリーズ史上で圧倒的な最安値となるCS230は、カラーマネジメント対応ディスプレイとしてどれほどの仕上がりなのか、その実力をチェックする。

 とはいえ、通常の液晶ディスプレイと同じように評価するのでは、その導入メリットが伝わりにくいだろう。まずは前提として、カラーマネジメント対応ディスプレイとは何か、ColorEdgeシリーズとは何か、といったところから話を始めたい。すでにご存じの方は、次のパートまで読み飛ばしていただきたい。

少々長い前置き――カラーマネジメントとColorEdgeの価値

 本記事でいうカラーマネジメント(色管理)とは、異なるカラーイメージング機器間(デジタルカメラ、ディスプレイ、スキャナ、プリンタなど)で色の情報を正しく伝達し、同じ画像データを扱う場合に入力から出力までのワークフロー全体を通じて、可能な限り同じ色が再現できるように調整することだ。

 「可能な限り」と書いたのは、機器間の色合わせには限界があるためで、例えば自ら発光して表示を行うディスプレイと、印刷されたインクを反射光で視認するプリンタでは、色の再現方法から違っていることから、完全に同じ色には見えないだろう。

 しかし、見た目をできるだけ近づけてその状態を常に維持できれば、画面で見る色と、印刷した色のイメージが違っていて何度も刷り直すという手間はなくなり、色を扱う作業の効率が格段に上がる。プリントのトライ&エラーの回数が減ることは、コストダウンにも効果大だ。常に同じ色環境で作業できるということは、出力の品質を一定に保つうえで高い信頼性が得られることも意味する。

 こうした色を扱う作業の効率や信頼性を高めるためには、通常の液晶ディスプレイでは十分に対応できず、カラーマネジメント対応のディスプレイが最適だ。ColorEdgeシリーズが「カラーマネジメント対応」をうたう理由の1つには、高度なハードウェアキャリブレーションに対応していることが挙げられる。

 一般にディスプレイのキャリブレーションとは、キャリブレーションセンサーとソフトウェアを組み合わせて、表示の目標値となる白色点(色温度)、ガンマ、輝度を設定し、ディスプレイの表示をキャリブレーションセンサーで測色したうえで目標値に一致するように調整を行うことだ。調整結果はICCプロファイルとして書き出し、OSのディスプレイ設定に登録することで色再現性を向上させる。

 この際、ユーザーが画面の指示を見ながら手動で輝度、コントラスト、RGB各色の明るさなどを調整し、GPUのドライバでRGB出力レベルを上げ下げすることで目標とする表示に近づけるのが「ソフトウェアキャリブレーション」だ。通常のディスプレイでも手軽にできるキャリブレーション手法だが、ユーザーのスキルによって精度にバラツキが出てしまい、またPCのRGB出力を調整するため、ディスプレイ表示において階調の減少や色かぶりが発生する場合もある。

独自のカラーマネジメントソフトウェア「ColorNavigator」と専用センサー「EX2」を使って、CS230をキャリブレーションしている様子。ハードウェアキャリブレーションなので、手作業で輝度やRGBゲインの値をいじる必要はまったくない

 これに対してColorEdgeシリーズのハードウェアキャリブレーションは、EIZO独自のカラーマネジメントソフトウェア「ColorNavigator」でキャリブレーションセンサーをコントロールし、16ビット(6万5281階調)のLUT(ルックアップテーブル)を利用した高精度なキャリブレーションが簡単に実行できるというものだ。

 ColorNavigatorで目標値を指定するだけで、測色、調整、ICCプロファイルの作成、OSへの登録までが自動で行えるほか、手動による微調整や診断機能まで持つ。目標値に対してPCからのRGB出力ではなく、ディスプレイ内部の出力を自動で最適化するため、ユーザーによる精度のバラツキが発生せず、RGBの階調が滑らかに再現できるというメリットがある。

 このように、ColorEdgeシリーズは独自のハードウェアキャリブレーションを実現しており、さらに数々の高画質化技術、表示安定化技術も盛り込むことで、プロフォト、プリプレス、映像制作、3DCG、デザイン全般など、常に高い色再現性を求められるプロの現場で高い支持を集めてきた。

 一方、個人ユースではここまで高度な色管理環境が不要と思うかもしれないが、そんなこともない。簡単な例を挙げると、デジカメで撮影した写真を印刷したら、「ディスプレイの色とプリントの色がかなり違ってしまった」という失敗は、多くの方が経験したことがあるだろう。こうした失敗を減らし、時間と用紙を有効活用するのに最適なのが、カラーマネジメント対応ディスプレイであり、その代表的なブランドであるColorEdgeなのだ。

 ColorEdgeの既存モデルは個人で購入するには高価(低価格化した最新の24型モデル「CX240」でも直販価格で9万4800円から)だったが、5万円台から購入できるCS230の登場によって、グッと手が届きやすくなったことに注目したい。

ColorEdge CS230は選べる3モデル展開、おすすめは……

 さて今回取り上げるCS230は、「CG」「CX」「CS」の3つのシリーズで構成されるColorEdge新ラインアップのエントリーモデルだ。ColorEdgeとしてのカラーマネジメント機能を維持しながら、色域をsRGB相当に、画面サイズと解像度を23型ワイドのフルHD(1920×1080ドット)に抑えることにより、直販価格で6万円を切るシリーズ最安値を実現した。

 製品ラインアップは、前述の高度なカラーマネジメントが行える独自ソフトウェア「ColorNavigator」および専用キャリブレーションセンサー「EX2」を付属したモデルの「CS230-CNX」、ColorNavigatorだけが付属するモデルの「CS230-CN」、ディスプレイ単体でColorNavigatorが別売となる単品モデル「CS230」の3つに分かれる。同社直販のEIZOダイレクトにおける販売価格は、CS230-CNXが6万9800円、CS230-CNが6万4800円、単品のCS230が5万9800円だ。

ColorEdge CS230のラインアップ。左からColorNavigatorとEX2がセットの「CS230-CNX」、ColorNavigatorだけが付属する「CS230-CN」、ディスプレイ単体(ColorNavigator Elements付属)の「CS230」

 今回は最上位構成のCS230-CNXを試用したが、すでにX-Riteの「i1」シリーズや「ColorMunki PHOTO/DESIGN」、Datacolorの「Spyder3/4」など、ColorNavigatorに対応する市販のキャリブレーションセンサーを所有していれば、CS230-CNでも問題ない。単品モデルのCS230は、ColorNavigatorが付属しないため、ColorEdgeならではの魅力を存分に味わうには少々物足りないだろう。

 3モデルとも、画面と写真プリントとのカラーマッチング(色合わせ)を手軽に行える専用ソフトウェア「ColorNavigator Elements」が付属するが、これは本当に初心者向けに機能を簡略化して分かりやすく作ったものなので、業務向けに開発されたColorNavigatorとの差は大きい。

 特にPCにある程度詳しい方には、せっかくカラーマネジメント対応ディスプレイを導入するのならば、ColorNavigatorとともに使うことをおすすめしたい(ColorNavigatorのライセンスだけ追加購入することも可能)。

プロ向けの上位モデルとほぼ同じ機能を利用できる高度なカラーキャリブレーションソフトウェア「ColorNavigator」は大きな魅力だ(画像=左)。写真プリントとディスプレイ表示のカラーマッチングが手軽に行える「ColorNavigator Elements」は、初心者向けに4ステップで作業が完了するように作り込まれている(画像=右)

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