“プロ級の色再現性”は安価な23型液晶でも健在か?――EIZO「ColorEdge CS230」を試す(後編)約6万円の“カラマネ”液晶を徹底検証(3/5 ページ)

» 2013年04月15日 19時30分 公開

まずは目視でCS230の表示を確認

 それでは実機の表示品質をチェックしていこう。まずは目視での確認だが、初期状態のUser 1モードやsRGBモードでも表示がかなり安定している。ColorNavigatorに用意された3つの用途別調整目標でキャリブレーションを行っても、輝度と色温度が少しずつ変わるだけで、全体の均一感ある表示傾向は変わらない。色域は調整目標にかかわらず、sRGB相当となる。

 IPS方式の液晶パネルは視野角が広く、通常の横位置表示はもちろん、90度画面を回転しての縦位置表示でも画面の両端でコントラストや色度がズレて見えることがない。

視野角が広いIPS方式の液晶パネルを採用しており、上下や左右から画面を見ても、コントラストや色度が崩れにくい

アスペクト比16:9のフルHD液晶パネルを採用するため、縦位置表示はかなり縦長になるが、画面の上端と下端で見え方が変わるようなことはなく、広視野角で安定した表示だ

 レビュー前編で取り上げた数々の高画質化技術と表示安定化技術、そして工場出荷前の細かな個別調整が生かされ、画面の輝度ムラや色度ムラがほとんど気にならない均一性の高い表示だ。画面の右下と左下にわずかな輝度落ちが見られるが、この程度の輝度落ちは競合機種にも多く存在する。作業中はタスクバーやアプリケーションのウィンドウが表示される場所なので、実用上問題にはならないはずだ。

 16ビットLUT(ルックアップテーブル)の約278兆色という膨大な色数から最適な8ビットの約1677万色(DisplayPort接続時で対応GPU/ソフトウェア環境がそろえば、10ビットの約10億7374万色)を選択して表示する仕組みなので、階調の表現力も高い。黒にごく近い暗部はわずかにつぶれるが、カラー/モノクロのグラデーションパターンは実に滑らかな表示だ。階調表現力が低い汎用(はんよう)ディスプレイでは難しいモノクロ写真の現像やレタッチも十分対応できる。

「Web向けコンテンツ作成用」の調整目標でキャリブレーションを行い、グレー単色(画像=左)、モノクログラデーション(画像=中央)、カラーグラデーション(画像=右)を表示した例。表示の均一性と階調表現力は高い

 動画の再生品質については、オーバードライブ回路搭載モデルながら応答速度が10.5ms(中間階調域)にとどまり、動画を滑らかに再生する高画質化技術などは備えていないので、スクロールする字幕などでは少々残像感がある(均一性や階調性の高い表示は健在だが)。しかし、個人レベルでの動画編集や映像コンテンツ再生では通常気にならないレベルだろう。

マイクロスコープで液晶パネルの画素形状を確認してみた。画素形状から察するに、UH-IPS系パネルを採用しているようだ。なお、マイクロスコープで画面をそのまま撮影すると、ノングレアパネルの表面処理によって、画素形状がぼやけてしまうので、透明なフィルムを画面に貼って撮影した

 ディスプレイ表面は非光沢のアンチグレア仕上げを採用しており、外光やユーザーの姿が画面にはっきり映り込むことがなく、照明が画面に反射する場所に置いても問題なく利用できる。

 一方、アンチグレア仕上げは表面処理の乱反射や粒状感が問題視されることもあるが、CS230でも白や淡い色など明度が高い表示では、表面にうっすらと光の粒々が細かく反射している様子が見られる(アンチグレア仕上げの液晶パネルでは、乱反射がひどいほうではない)。筆者はこうしたアンチグレア仕上げ特有の表示傾向があまり気にならず、目の疲れを感じにくいほうだが、敏感な方は店頭で実機を見て判断していただきたい。

 目の疲れに関しては、LEDバックライトのチラツキ感が気になるという一部のユーザーに配慮し、調光方式を従来機から変更している。通常のLEDバックライトは発光素子の細かな点滅間隔で明るさを制御する「PWM調光」だが、CS230のLEDバックライトは素子に流す電流の増減で明るさを制御する「DC調光」なので、光の点滅とそれに伴うチラツキ感は発生しない。調光方式でも表示の安定化を追求しているのは好印象だ。

 ただし、DC調光は構造上、低輝度に設定することが難しく、また低輝度での色再現性に難があるため、CS230はOSDメニューで設定できる最低輝度が50カンデラ/平方メートルにとどまっている。もっともカラーマネジメント対応ディスプレイは、80〜120カンデラ/平方メートル程度の輝度で使われることが大半なので、問題になるケースは少ないだろう(EIZOの推奨輝度は60〜120カンデラ/平方メートル)。

 ちなみに、24型WUXGA(1920×1200ドット)の上位モデル「ColorEdge CX240」(同社直販価格は9万4800円から)は液晶パネル表面に別注のフィルムを貼り付けることで、黒の表現力が向上しており、CS230よりさらに黒浮きを抑えたコントラストの高い表示に仕上がっている。このフィルムのおかげか、表面の乱反射が大幅に抑えられ、平滑な表示を実現しているのも見逃せない。

 また、CS230はsRGB相当の色域だが、CX240はAdobe RGBカバー率97%、NTSC比101%の広色域表示に対応している。CS230とは価格差に見合った違いがあるので、予算に余裕があれば、CX240を検討していただきたい。

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