紙とスマホを融合するデジタルペン「Livescribe 3」の魅力アナログとデジタルのマリアージュ(1/3 ページ)

» 2014年04月17日 12時17分 公開
[林信行,ITmedia]

 「テクノロジーが進んだら、その分、テクノロジー側が人間にあわせるべき」――これは1990年代半ば、アップルの研究所で副社長を務めていたドン・ノーマン博士も言っていたことだ。

 多くのテクノロジー企業は、デスクトップPCやノートPC、スマートフォンといった、1度作られた「型」を後追いして、その「型」の中で性能向上や機能の追加、低価格化の競争を始めてしまう傾向にある。しかし本当はそうではなく、製品コンセプトや操作方法の根本まで見直し、まさに最新の技術を活用することで、技術に詳しくない人が自然に利用できる製品を0から作り直すことのほうが世の中に与えるインパクトは大きい。

ペン型コンピュータの「Livescribe 3」と、付属のノート(モレスキン風のもっとオシャレなノートも別売している)。専用ノートに書いた内容が、Bluetoothで即座にスマートフォンやタブレットに転送され、文字認識される

 実は2007年1月、これに挑戦した製品が2つ発表されている。1つは言うまでもないだろう。みなさんもよくご存じの「iPhone」だ。それでは、もう1つは?

 米国ではそれなりの人気商品で、量販店などにいっても当たり前に売られているが、日本では権利関係もあって2013年になるまで発売されてこなかった「未来は今」を感じさせる製品がある。それがLivescribeの「スマートペン」シリーズだ。

 このLivescribeのスマートペンが、登場から7年目にして、史上最大規模の進化を遂げ、「Livescribe 3」として日本でも発売された。

圧倒的未来を感じさせるLivescribeの「スマートペン」シリーズ

 Livescribeは2007年以来、ペン型のコンピュータ、スマートペンを発売しているメーカーだ。製品ラインアップはいくつかある。2013年から国内販売が始まったので知っている人も多いと思うが、まだ知らない人がいたら、この記事は久々に驚きがいがある記事になるはずだ。

 スマートペンの一番基本的な機能は、紙のノートに記した内容をデジタルデータに変換して、PCやタブレット、スマートフォンで文字認識や検索をできるようにすること。最新のLivescribe 3でも、専用のノートに何かを描くと、描いた内容がそっくりそのままiPhoneやiPadの画面に表示される。

 例えば、今日の講義で「live」という単語が出てきて、それについて聞きたいと思ったら、アプリを起動して検索欄に「live」と打ち込む。するとこれまで専用ノートに書いた「live」を含む行がすべて一覧表示される。

 手書き文字が検索できるのは、手書き文字認識が行なわれているからで、ノートに書いた文章をテキストデータとしてコピーし、メールに張り付けたり、アナログな風合いを残した手書き文字のままがよければ、その状態でもコピー&ペーストできる。また、ノートを取りながら録音も行なっていた場合、「ペンキャスト」という画面に切り替えて気になる行を指でタッチすると、その行を書いていた時点から録音を再生してくれる。頭出しが不要でとても便利なのだ。

Livescrive 3には通常版(写真=左)に加えて、Evernoteサービス1年分の利用料と100ページのジャーナルノート、革製のノートカバーが付属するプロ版の2種類がある(写真=右)

 初めて聞いた人には魔法のように思えるかもしれないが、手書きの部分はAnoto(アノト)という技術で実現している。専用ノートに見えないくらい薄い色の小さな点がたくさん打たれており、これをペン先に隠されたカメラで撮影して、今ノートのどの場所にどんな内容が描かれたかを認識し、それをBluetootでiPhoneなどのスマートフォンに転送してする仕組み。あとは専用ソフトの側で、ノートのどの部分を何時ごろに書いたかというタイムスタンプの記録と何時何分何秒の録音かというタイムスタンプ付き録音を照合して参照できるようにしている。

 1度このペンを体験すると、話の順番を思い出しながら早送りや巻き戻しを繰り返して目当ての部分を探し出す必要があったICレコーダーは使う気がしなくなってしまう。それほど便利な商品だ。

 新商品が「Livescribe 3」という名前であることから分かるように、これは同社にとって3世代目のスマートペンにあたる。

 初代の製品は「Pulse Smart Pen」、または「Echo」ペンと呼ばれ、PCで専用アプリを起動した状態でペンをUSBポートに接続してノートを転送するというものだった。この専用アプリに手書きノートを取り込み、そこからノートをEvernoteに転送したり、画像ファイルなどとして書き出せた。また、ペンに簡単な文字表示ができる画面がついていて、アプリをインストールして楽しむこともできた。

 例えば、ノートに印刷された計算機のボタンを押すと、計算結果がペンの液晶画面に表示され計算機アプリや、ノートにピアノの鍵盤を描いて、それをペンで触れて演奏できるピアノアプリ、ペンにスペイン語の単語を書くと、英語に翻訳して読み上げてくれるアプリまで多種多様なアプリがあった。

 2代目の製品はWi-Fiスマートペンで、PCの助けなしにペン単体でインターネットに接続し、手書きしたメモをEvernoteに自動登録できるようになった。なお、Evernoteの手書き文字認識機能を使ってノートを検索したり、録音の再生も行えたが、PC用ソフトとの連携がなくなくなったのでアプリの追加はできなくなった。

 そして最新の3世代目が今回の「Livescribe 3」である。LivescribeのCEO、Gilles Bouchard(ジル・ブシャール)氏に話を聞いた。

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