ブシャール氏は、「Livescribe 3はスマートフォンやタブレット世代のスマートペンだ」と話す。Livescribeが最初のスマートペンを発表した当初は、まだスマートフォンが普及する前。その後に登場したWi-Fiペンは最近のトレンド「IoT」(Internet of Things)――身の回りのモノが次々とインターネット接続を始めるトレンド――を先取りしたような製品だった。しかし、ここでブシャール氏は、大きく舵を切り直した。かつて実現していた注目機能を削ぎ落として、製品のシンプル化を進めたのだ。
「今日、ここまでスマートフォンとタブレットが普及した中、ペンがあまりに賢くてもユーザーは混乱するだけ」と同氏は語る。
確かにスマートフォンにも画面があり、ペンの側にも画面があるとなると、どの情報はどっちに表示されるのかとユーザーも混乱しかねない。Livescribe 3では、初代製品からの伝統であった、いかにもコンピューターペンのようなペン上の文字表示画面を取り払い、見た目は完璧に普通のペンにしてしまった。
「最高のデザインの製品にするために、伝統あるアナログペンのデザイナーたちに相談した」というLivescribe 3は、それまでのスマートペンとは打って変わった美しさを放つペンに仕上がっている。
唯一、デジタルっぽさを感じさせるのは、ペンのクリップ部分の根元にある小さなLEDが、通信可能な電源オンの状態には緑色に、スマートフォン/タブレット用のアプリとの通信中は青色に、そして録音中には赤色に光ることだけ。またUSB端子を隠すクリップ上のキャップが、タブレットに絵を描いたりするのに便利なスタイラスになっていることくらいだろう。
ちなみに中央に用意されたリングを時計回りにひねると、ペン軸が出て通信機能がオンになり、反対側にひねるとペンの電源がオフになるのと同時にペン軸が内側に隠れる、といったデザインもシンプルながらよく考えられている。
「Livescribe 3」はペンそのものの機能や魅力が、より大勢の人に伝わるように徹底してシンプル化を追求した(後継製品になればなるほど機能を詰め込む、テクノロジー製品としては珍しい進化だ)。
例えば、第1〜第2世代のスマートペンでは録音もペンに内蔵したマイクで行なっていたが、Livescribe 3ではスマートフォンやタブレットのマイクを使って行なう仕様になった。
これまでの製品では、ペンにマイクを搭載する都合上、どうしても紙とペンがこすれる音(ノートを取っている音)がノイズとして入ってしまったが、この仕様変更のおかげで、録音を行なうマイク(スマートフォン/タブレット)は、話者の近くに置きっぱなしにする、ということも可能になり、よりきれいな録音ができるようになった。「そもそも、今のスマートフォンは、これまでのスマートペンよりも、よほど優秀なマイクを内蔵している。その点でも録音音質の劇的な改善が望める」とブシャール氏はいう。
一方、ハードウェアの機能を削る一方で、スマートフォン/タブレット上で動作する連携アプリの機能は、それなりに進化をしている。
アプリには「ページ」「Feed」「ペンキャスト」という3つのモードがあり、画面上のボタンで切り替える。「ページ」はノートを紙のノートの見た目そのまま表示する機能だ。ノートを1ページ単位で印刷したり、メールに添付したり、PDF形式に変換してほかのアプリで開いたり、といったこともできる。
「ペンキャスト」は、録音データ付きのノートを管理するモードだ。このモードでは画面の下に「再生」ボタンが表示され、録音をそのまま最初から再生することもできれば、ノートの一部をタッチして、そこを書いたときに録音していたところから再生をする頭出し機能もある。
また、録音データ付きのPDFファイル(ペンキャストファイル)としてメールやメッセージ機能で送信する機能もある。ペンキャストのPDFファイルは、「Livescribe+」アプリで開けば、頭出し再生などの機能がそのまま利用できる。
ちなみにPC上でも、WebブラウザでLivescribe PlayerというWebページにアクセスしてファイルをドラッグ&ドロップすれば、頭出し機能が利用できるようになる。
ペンキャストファイルは、ファイル形式的にはPDF書類なので、好きなPDF表示ソフトで手書きした内容を参照することはできるが、PDFに埋め込まれた録音音声を再生したい場合だけ、この操作が必要になる。
実際にペンキャストがどんなものかを試せるように、筆者のEvernoteにて、ブシャール氏のインタビューの一部をペンキャストファイルとして公開した。是非ダウンロードして試してみてほしい。
ジル・ブシャール氏のインタビューの一部をLivescribe 3を使って録音+ノート取りをしたペンキャストPDSファイルを筆者のDropboxに置いた。 こちらのファイルをダウンロード後、Playerページで開いて再生してみよう。
ノート中の好きな部分をクリックすると、そこに対応した録音から再生される。再生をしている間、筆者が文字を書いている様子が緑色で再現されている点にも注目だ。なお、筆者の字がどうしょうもなく汚い点には目をつぶってほしい。
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