昔からPCを仕事道具に使っている筆者は、文字入力中心の仕事をしていることもあり、またキー操作でほとんどの作業を進められることもあって、タッチパネル機能のない「LaVie Z」(NECパーソナルコンピュータ)をモバイルPCとして使っている。
生産性や日々の移動における疲労度などを考慮すると、これが今のところのベストな解だと思う。文字の入力量が多い筆者の仕事では、スマートフォンだけで用が足りることはなく、それはこれまでのタブレットでも同じだった。
単に入力しやすいキーボードを買ってきて組み合わせればよいというものではなく、タブレットのユーザーインタフェース全体の枠組みが、クリエイティブな作業に向いていないからだと考えている。その点、WindowsはタブレットでもノートPCと同じように使え、その性質はWindows 8.1 Updateで強化され、ノートPCのOSとしてはもちろん、タブレット+キーボードの組み合わせにおいても生産性は一般的なタブレットよりも高いと思う。
これはライフスタイルに依存する部分だが、もしあなたが「ノートPCとタブレットのどちらを持ち歩くのか」に迷っている、あるいは「両方とも持ち歩くのもいいかも?」と迷っているならば、Suraface Pro 3の1台だけで済んでしまうかもしれない。
このメッセージはマイクロソフト自身が発信しているもの(すなわち、商品企画時に考えたシナリオ通り)でもあるが、実際にノートPCとタブレットのははざまで悩んでいる、そしてPCのクリエイティビティは捨てられないと思っている人には、刺さるコンセプトの製品だと思う。
しかし、視点を変えて「ノートPCでいいよ。タブレットなんていらない」――そう思っていた人も、改めてタブレットを評価してみるべきだ。iPadが使い方に合わないと感じ、タブレット全体を否定してしまっていた人も、あるいはSurface Pro 3ならばピンと来るかもしれない。「ノートPCはもういらない。タブレットだけでいいじゃないか」――そう本気で迷える製品に仕上がっていると思う。
かつてノートPCの性能が向上し、自宅でデスクトップPC、出先でノートPCと使い分けていたのをノートPCだけに切り替えた時期があった。Surface Pro 3の登場は、ノートPCとWindowsタブレットの間を曖昧にする一方、コンテンツプレーヤー的な性格の強いiPadとの違いも明確になった。
今回はほんの3日ほどの試用ではあったが、USB 3.0ポートの少なさ(1ポート)やメモリカードスロットがmicroSDのみという点を除けば、ハードウェアの大きな不満は感じなかった。着実に改良を重ねてきた成果が出ているということだろう。
前モデルまでは使いにくさがあったマグネット式のACアダプタプラグも、形状が変更されて“スルッ”と取り付けられる。このため、旧モデルとACアダプタの互換性はなくなる(新ACアダプタにも従来通り、USB充電用ポートは装備されている)。
世の中を見渡すと、これまで世界的にあまり売れていなかったこともあってか、Surfaceシリーズの後を追うメーカーは目立っていない。完全な失敗とは言えないものの、マイクロソフト自身が新たな商品カテゴリを切り開くという目的を達成できているとは言いがたい。
しかし、Surface Pro 2の25倍ものプリオーダーが入っているというSurface Pro 3は、今度こそ新たなジャンルを開拓する製品になるだろう。本機には多くのフォロワーが生まれるのではないだろうか。しかし、それらがSurface Pro 3の単なるマネではなく、より進んだ製品になることを望みたい。
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