液晶ディスプレイ部の背面には下向きに4つの映像入力が並んでいる。映像入力端子はDisplayPortを2基、HDMIとDVI-Dを各1基装備している。DisplayPort 1.2で接続する場合は4Kの60Hz表示に対応するが、HDMIおよびDVI-Dでの接続時は4Kの30Hz表示に限られる(2560×1600ピクセルまでなら60Hz表示ができる)。こうした制限は、現在販売されている他の4Kディスプレイと同様だ。
ただ細かいところだが、FlexScan EV3237は4Kの60Hz伝送方式としてSST(Single Stream Transport)方式を採用しているため、4Kの信号を2系統(1920×2160ピクセルの2画面)に分けて送るMST(Multi Stream Transport)方式に比べて、構造がシンプルで描画の問題や制限も発生しにくい(まれにDisplayPort 1.2搭載でもSST非対応のグラフィックスカードがあるため、事前に確認しておきたい)。
そのほか、USBハブ用のUSB 3.0アップストリームポート、音声入力のステレオミニを背面に、USB 3.0ダウンストリームポート3基(うち1基は急速充電対応)、ヘッドフォン出力を左側面に搭載。正面からは見えないが、背面の下部には1.0ワット+1.0ワット出力のステレオスピーカーも下向きに配置されている。
画面の下フレームには、電源ボタンをはじめ、OSDメニュー、輝度/音量調整、EcoViewメニュー、PinP/PbyP、表示モードの切り替え、入力信号の切り替えの7ボタンが並ぶ。電源以外のボタンを押すと、ボタンの直上に操作ガイドが表示されるため、ボタンの機能を覚える必要はなく、手軽に扱える。この仕組みにより、物理ボタンから機能名などの刻印を省いたシンプルな外観に仕上げている。
「EcoView」メニューでは、環境光に応じてディスプレイの輝度を自動で最適化する「Auto EcoView」、入力信号の白レベルに応じて輝度を自動調整する「EcoView Optimizer 2」、ユーザーの離着席を人感センサーで検知して省電力モードのオン/オフを自動で行う「EcoView Sense」といった機能が利用可能だ。
また、表示を紙に似た雰囲気に近づけられるPaperモードを使えば、色温度を自動で下げることでブルーライトを抑制し、目にかかる負担を低減してくれる。このようにユーザーの負担を強いることなく、疲れ目対策と消費電力の抑制を自動的に行う機能が多数備わっているのは、FlexScan EVシリーズ全体の大きな魅力だ。
そのほかUSB接続により、Windows PC上からディスプレイの各種調整が可能なソフトウェア「Screen Manager Pro」も用意されている。
FlexScan EV3237をしばらく使ってみて、感嘆したのは使い心地のよさだ。31.5型と広い作業スペースや140ppiの精細表示がもたらす快適さは言うまでもないが、開封から設置、セッティング、運用まで、一貫して滞りなく進めることができた。
そんなことは当たり前と思うかもしれないが、実はこれがうまくいかない製品も少なくない。まだ出始めの4Kディスプレイは製品が成熟しておらず、互換性などで思わぬトラブルが生じることもあり、筆者も実際にほかの4Kディスプレイを複数台テストしたが、一度ならず痛い目を見てきた。
それだけに、FlexScan EV3237の総合的に安定した高品質は実に好印象だ。しかも、画面表示の測定でも良好な結果を残しており、死角が見当たらない。EIZOダイレクトでの直販価格は18万5000円(税別)と高価だが、予算さえあれば、現状で最もおすすめできる完成度の高いPC向け4Kディスプレイと言える。
なお、EIZOディスプレイはFlexScan EV3237も例外ではなく、標準で5年間保証(使用時間3万時間以内)が付いてくるため、中長期でしっかり運用することを考えると、価格の見方も変わってくるかもしれない。
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