HGSTは、5月1日に秋葉原のPCショップ「オリオスペック」で、ユーザーとのミーティングイベントを開催した。イベントでは、HDDとSSDの開発者が、ヘリウム充填HDDの開発経緯とメリットの紹介に加えて、まもなく出荷を開始する予定のNVM対応SSDの概要について説明した。
HGSTの木下尚行氏は、ヘリウムガス充填HDDについて開発経緯と仕様的な優位点を紹介した。2007年に将来予想されるストレージ需要の成長率とそれまでのHDDにおける容量増加率を比べて、求められる容量に対してHDDの容量増加ははるかに少ない状況から、記憶密度とは別の方法によるブレイクスルーの道を探り、HGSTの別部署がヘリウムガスを利用していることからヒントを得て開発に取り組んだという、きっかけを紹介した。
分子のサイズが小さくて軽いヘリウムガスを使うことで、空気を充填する場合と比べて回転するブラッタの振動を抑えることができ、そのおかげで、プラッタの厚さを薄くすることが可能になるという。従来の3.5型HDDでは、最大でも5枚のプラッタを収容するのが限界だったが、ヘリウムガスを充填することで7枚のプラッタが収容できるようになり、その結果、容量も飛躍的に増やすことができた。
なお、プラッタが従来と比べてどれだけ薄くなったかについて具体的な数値は非公開としている。木下氏によると、「半分まではいかないが」とのことだ。
木下氏は、振動の軽減によってHDDの発生音を抑制し、また、軽くて状態が安定したヘリウムガスを充填することで、回転部の摩擦を抑えて稼働部の負荷を軽減すること以外に、HDDのボディを密閉したことで、HDD内部への湿気や誇りなどの侵入を防ぐことによって、動作の安定性と耐久性を向上することが可能になったことも「副産物のメリット」として紹介した。HGSTでは、3月24日に平均故障間隔(MTBF:Mean Time Between Failure)が250万時間を達成したと発表している。
ヘリウムガス充填のHDDとしてHGSTは「Ultrastar He」シリーズを投入している。現在のラインアップは容量6Tバイトの「Ultrastar He6」と容量8Tバイトの「Ultrastar He8」を出荷しているが、さらに大容量の製品として10Tバイトモデルを用意している。ただし、10Tバイトモデルでは、記憶方式に重ね書き(SMR)方式を採用するため、シーケンシャルアクセスでは高速転送となるものの、ランダムアクセスにおける転送レートでは書き込み処理で性能を発揮できなくなる。そのため、SMRを採用する10TバイトHDDは特定用途に向けた販売に限定し、一般的な汎用HDDとしては扱わないことになるという。
なお、2.5インチサイズ以下の小型HDDに対するヘリウムガスの導入については、小型HDDを搭載するデバイスでは大容量に対する需要が少なく、ヘリウムガスモデルを用意する必要性がないと述べ、製品を投入する考えはないことを明らかにしている。
HDDの印象が強いHGSTだが、SSDのラインアップも擁している。主に、データセンター向けのハイエンドモデルで、性能を重視する個人ユーザー向けに秋葉原のパーツショップでも扱っている。HGSTの最新SSDとして4月に出荷を開始しているのが「HGST Ultrastar SN100」だ。NVMe準拠のデータセンター向けモデルで、HH-HL(Half-Height、Half-Length)のアドインカードモデルはすでに出荷を始めていて、2.5インチモデルが5月から出荷を開始する予定だ。
Ultrastar SN100の特徴として挙げるのが、NVMe対応だ。従来のSSDでは、転送レートを高めるためにPCI Express接続を採用していたが、共通の規格がなく、メーカーがドライバなどを独自に用意していた状況だった。NVMeによってPCI Express接続で規格を共通することになり、OSでドライバを用意できることで導入が簡単になるほか、NVMe対応2.5インチドライブではホットスワップをサポートしているので、データセンターでトラブルが発生したドライブの交換をシステムを止めることなく行えることをメリットとして訴求していた。
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