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» 2015年12月15日 15時00分 公開

牧ノブユキの「ワークアラウンド」:「どうしてこうなった……」という製品がロングセラーになる理由 (2/2)

[牧ノブユキ,ITmedia]
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「表からは見えにくい販路」の存在を疑う

 さて、話がやや脱線したが、こうした純正品信奉はあるにせよ、ロングセラーを続けられるとは到底思えない製品が、長期に渡って販売されているケースがある。こうした場合は、ユーザーの目に見えないところで、地道に売上を稼いでいる可能性がある。1つの可能性となるのが「法人需要」だ。

 法人市場では、本体とセットで、まとまった数の製品周辺機器やアクセサリが一気に納入されることがある。これがメーカーに縛りのない販社に舞い込んできた案件であれば、サードパーティー製品を組み合わせたほうが予算的に割安で、販社側としても高い利益率が見込めるのだが、まれに販社を経由せず、本体メーカーにこうした大口案件が直接持ち込まれることがある。

 本体メーカーにとっても、販社抜きで卸したほうが利益を確保できるので、案件の持ち込み自体は悪い話ではないが、厄介なのは、周辺機器やアクセサリの納入が付帯条件になっており、かつそれらを自社のラインアップとして持っていない場合だ。顧客側にとっては、仕入先が分散するよりは一社から納入できたほうが処理が楽なので、「こういう製品があれば本体とセットで買うんだけどな〜」と、ダメモトで持ちかけるわけである。

 こうなると本体メーカーとしては、難しい判断を迫られることになる。むげに断ってしまうとその大口案件自体を失うことになるし、販社経由で本体だけ買ってもらえるならまだしも、本体ごと別のメーカーに振り替えられてしまっては一大事である。とはいえ、純正でない周辺機器やアクセサリを本体メーカーがサードパーティーから仕入れて売るというのは、サードパーティーに頭を下げる構図になるため、さすがに難しい。

 ではどうするかというと、新たに「作ってしまう」のである。モノさえあればまとまった数がはけるのは分かっているので、それほど外見にこだわる必要もなく、スペックが要件を満たしてさえいればよい。重要なのは純正品であり、かつ期日までに指定の数がそろうこと。これさえ守れば、デザインなどは二の次なのだ。もちろんあまりにも技術的に難易度が高い製品であれば後々のサポートなども考慮して断らざるを得ない場合もあるが、既存の技術力やOEM/ODMのルートを生かして調達できるなら、みすみす逃す手はない。

 その上で、もしロットの都合で在庫ができてしまうようであれば、そのまま新製品としてコンシューマー市場に流してやればよい。最初からロングセラーにすることは考えていないから、特に爆発的に売れなくても構わないし、在庫がなくなったら受注発注の形で、オプションの1つとしてWebページの片隅に載せておくだけでよい。そのうちどこかの法人で同じように採用されるケースが出て来れば、そこでまたひともうけできる。

 あくまで推測でしかないが、冒頭で述べたバッテリー内蔵ケースも、こうした経緯で生まれた製品だったとすれば、あえて不自然なタイミングで投入されたことも含めて納得がいく。あの新製品の写真を見て、コンシューマー向けに売れるか売れないかという面だけを論じてしまいがちだが、実は既に売るアテがあり、コンシューマー市場に投入される段階で既に「勝ち組」だった可能性もある。

 いずれにせよ、普通に考えて売れそうにない製品が発表されたときは、表からは見えにくい、普通に考えると思い付かないような販路が存在しているケースは少なくない。文教を含めた法人市場以外にも、他社へのOEM、さらにはノベルティなど、目につきにくいだけで大口のマーケットは幾つもある。ユーザーとしての感覚だけを頼りにして近視眼的になっていないか、肝に銘じておく必要があるだろう。

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