林信行が語る9.7型iPad Proの魅力“本命サイズ”のiPadが厳しいプロの要求に応えるべく進化した(4/4 ページ)

» 2016年03月31日 02時00分 公開
[林信行ITmedia]
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海外長期滞在で真価を発揮する内蔵Apple SIM

 iPad Proは、とにかく何から何まで新しい。実は通信機能も大きく変わっている。中でも大きく変わったのがWi-Fi+Cellularモデルで、背面の処理の仕方など外観上の違いに加え、性能や機能面にも大きな変化が現れている。

背面のデザインも変更されている

 iPad Air 2や12.9型iPad Proが20のLTEバンドにしか対応していないのに対して、23に対応し、LTE Advancedという理論上は倍の300Mbpsというスピードが出るLTE仕様にも対応している。

 そして最も目を引くのがApple SIMという通信用のSIMカードを1枚内蔵している点。これが役立つのは海外に長期の出張/旅行に行くときだ。実は日本は恵まれている国で、数日間の短期の海外滞在ならNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクのどのキャリアでも1日あたり3000円を切る上限料金で、普通にiPhoneやiPadの通信を行うことができ、それほど悩む必要はない。

現地の電話会社との短期通信契約が可能

 ただ、iPhoneもiPadも両方となると、3〜4日の滞在で通信料が1万円を超えるし、1週間以上の滞在では通信料がバカにならなくなってくる。そんなとき、新iPad Proでは、システム環境設定から現地の電話会社との短期通信契約を結ぶことができるのだ。

 まだまだ整備中で、使える電話会社も限られているが、今後、充実してくれば海外でiPadの使い勝手を大きく向上させてくれることだろう。仕事で海外に行くことが多い人にうれしい新機能だ。

2つの別売りアクセサリーが真の魅力を引き出す

 2015年に登場した12.9型iPad Proは、映画を楽しむときの迫力は最高だし、写真をチェックしたり、絵を描いたりするのにも最強のタブレットだ。ただ。それほど絵を描くことがない筆者には少し大きいサイズだった。

 iPadでAudio Noteというアプリを立ち上げて録音しながらメモ、という使い方も9.7型の製品ならなんとか成り立つが、12.9型では持っている手が疲れてきてしまう。ゲームをプレイする場合も、12.9型だと長時間プレイでは腕にかかる負担も大きい。

 以前のレビューでも触れたが、「デスクやヒザの上に置いて使うことが多くなる」のが12.9型iPad Proだ。そういう使い方が中心になる人にとって、これ以上に快適なiPadはないと思う。ただ、もっと色々な用途にiPadを使っている筆者のような人間や、教育機関、ビジネス導入では、おそらくこのiPad Proが中心となっていくだろう。

iPad Proを選択する理由の1つがApple Pencilだ

iPadと個別に持ち歩く必要があるApple Pencilだが、たまたまスマートカバーに近づけたら磁力でくっついた。それではと本体にくっつけてみたら、こちらもくっついた。こうやって持ち運べるわけではないが、将来これがなんかのヒントになってスマートな持ち運び方法につながればと写真を入れることにした

 両手でそれなりに長時間ホールドしていても、それほど負担にならないし、立ち姿勢で、片手でiPadを持って、もう片方の手でApple Pencilで書き込む、といったスタイルも自然に成り立つ。iPad Air 2と比べて少し高価な9.7型iPad Proを教育機関に勧めたい最大の理由はApple Pencilの存在だ。

 実際、筆者もミーティングなどのメモはmazecというメタモジの手書き文字認識技術を使って、Apple Pencilで行うことが増えた。IT業界の人なら、会議中に話している人の目を見ず、カチャカチャとキーボードを叩くことにも慣れっこかもしれないが、そうしたやりとりを不自然に感じる人も多い(筆者自身その1人だ)。

iPadの文字入力は有効にするキーボードが少ないほど快適になるが、日本語系キーボード1つ、英語系キーボード1つに加えてもう1つだけ追加するとしたらMetaMojiがApp Storeで提供しているmazec手書き文字入力だろう。インタビュー中などはキーボードで文字を打ち込むよりも自然にメモが取れる

 まるで紙と鉛筆のようなiPad ProとApple Pencilの組み合わせは、より人間的なメモ取りを実現する手段としてふさわしい。まだ、Apple Pencilの書き味を試したことがない人がいたら、ぜひ一度、試してみてほしい。デジタルなのに、あまりデジタルを感じさせない、ものすごく自然な描き味を持つ素晴らしいアクセサリーだ。

 学校だけでなく、ビジネスの現場でも、議事録やメモには、文字だけでなく図を描き込んだりすることは多いだろう。そんなとき指だとどうしても大ざっぱな絵しか描くことができない。しかし、Apple Pencilなら、かなり狙ったとおりの絵が描ける(もちろん、利用者のそもそもの描画力にもよる)。

 ある程度の長文をタイプするときにカバーにもなるスマートキーボードを使えることもiPad Proの大きな魅力だろう。まだiOSの日本語文字入力そのものがMacのOS Xのレベルには至っていないので、これで長文の記事を書く、という気にはなかなかなれないのだが、そうしたことは筆者を含め、Appleに取材にいった他の日本人ジャーナリストもフィードバックしており、これまでの12.9型iPad Pro登場後も、少しずつ改善されている。現在でもMacと勝手が違うだけで、受け取ったメールに少し長めの返信をするといった大半の用事では十分こなせるレベルになりつつある。

スマートキーボードはキーボードを使って文字入力をするにはちょうどいい傾斜だが、例えば飛行機の機内などで映画を見るためにキーボードを裏側に隠してスタンドとして使おうとすると傾斜がつきすぎて倒れやすい問題がある(背面カバーのシリコンケースをつけているとかなり直角に近い状態で不安定だ)。機内で映画を楽しむことも多い人は別途スマートカバーも用意したほうがいいかもしれない

2つのプロシリーズが生み出す今後の事例に期待

 見た目こそ似ていても、驚くほど大きく変わった製品だけに、かなり長いレビューとなってしまった。Apple、これからも9.7型のiPad Proと並行して、iPad Air 2の提供も続ける模様だが、筆者はちょっと背伸びをしてでもiPad Proを入手すべきだと思う。そのほうが、圧倒的に長く使い続けられるし、年月の差で割り算をすれば価格差は十分に埋められると思う。

 もっとも、すぐに実戦投入ができるかと問われると、必ずしも断言はできない。筆者も実際の仕事でいきなりフルに活用を始めたが、マインドマップ系のソフトなどいくつかの愛用のサードパーティ製アプリで、使っている途中に落ちてしまう、という症状が出た。

 こうした症状は、いつも製品発売後、数週間後にはソフトウェアアップデートで収まっているのでほとんどの人には関係ないと思うが、数カ月くらいひっぱることもある。この辺りはネット上で実際に購入した人たちの情報なども確認しながら判断しよう。

 いずれにせよ、9.7型iPad Proの登場で、iPadの状況がいよいよ面白くなってきた。登場以来、あらゆる業界に変化をもたらしてきたiPad。12.9型と9.7型の2種類が出そろったiPad Proは、今後どんな業界に変化をもたらしてくれるのか、今から楽しみでならない。

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