「少子化も悪いことではない」
そう語るのは、本イベントを主催した日本アダルトVR推進機構の吉田健人氏だ。イベントを開催したきっかけを尋ねると、「初めてアダルトVRを体験したときに、すごい感動を覚えました。この感動をいろいろな人に知ってほしいと考え、開催に踏み切りました」(吉田氏)と力説する。
アダルトVRフェスタ01の存在は、イベント開催がアナウンスされてから各メディアに取り上げられて反響を呼んでいた。「当初は小規模で“知る人ぞ知る”といったイベントを想定していましたが、かなりの反響を頂いてびっくりしています。(VRはアダルトとの相性がいいにもかかわらず)誰も公にしてこなかった点が響いたのではないでしょうか」(吉田氏)と、話題を呼んだ要因を分析する。
「日本アダルトVR推進機構は、エロをバーチャルで完結することを目標としています。実際に体験していただいて、実際の性行為と比べていただきたい。現実世界は性行為(に至るまでのプロセス)に対するコストが高すぎる。そして、人間には心があるので、そのプロセスによってさまざまな不幸が起こってしまう。性による不幸をなくしたい。(VRアダルトによって)性機能を人間社会から分離すれば解決できるのではないかと考えた」(吉田氏)
後半を解説すれば、快楽を目的とした性行為はVRで全て済ませることによって、そこに至るまでに発生する不幸な出来事が取り除ける。「性欲を切り離した、本当の意味で人と人が対等に交われるようになる」といったニュアンスが含まれている。現時点では「そんなバカな」と一蹴されることが想像できるが、VR技術の進歩によって現実との境目が薄れれば薄れるほど、無視できない意見ではないだろうか。
VRによってアダルトコンテンツはどのように変化していくかという質問に対しては、「これまでは“見る”というものだったが、“体験する”に変わる。現時点では没入感を高めることに注力しているが、将来的には映像にインタラクティブ性(双方向でコミュニケーション)が生まれるようになると思うし、現実で性行為を行わなくても、バーチャルでできるようになる」とコメント。先ほどの話がここでつながってくる。
「VRの技術は海外が2年以上先を行っているといわれているが、アダルトに関しては日本独自のノウハウがあり、海外に対してのアドバンテージになるはず」(吉田氏)と、アダルトが日本のVR技術をリードする要因になるとの見方も示した。
では、クリエイター側はどう考えているだろうか。本イベントにフルVRのアダルトゲーム「なないちゃんとあそぼ!」を出展していた同人クリエイターチーム「VRJCC」のメンバーの1人は、「これまでアダルトゲームなんて作った事も興味も無かったが、友人の家でOculus Riftを使ってアダルトコンテンツを見せられたときに、(興味の無かった自分ですら)すごい興奮を覚えた。これはすごいモノに違いないと思った」と熱弁している。
主催者の吉田氏が「1つの到達点」と評価していた、フルVRのアダルトゲーム。センサーの代わりとしてスマートフォンを人形に取り付けることで、人形の体勢をトラッキングし、ゲーム内のキャラクターに反映する。映像だけでなく触覚によって没入感を高めるアプローチだ。こちらの作品は夏のコミケで販売予定というイベントに参加していたクリエイターは誰もが熱意にあふれ、VRコンテンツを生み出すことに夢中になっている様子だった。特にアダルトに関しては、あまり表に出ないコンテンツでありながら、体験型のハードウェアに対して相性抜群なコンテンツであることは間違いない。風俗産業にすらインパクトを与える可能性も考えられる。VRとアダルト、人々の“性”にどう刺激を与えるか。アダルトの動向はVRの分野において、もはや無視できないところまで来ている。
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