「機械が人間に歩み寄る」時代に向けて――レノボ・ジャパン大和研究所の今までとこれから(2/2 ページ)

» 2016年07月06日 06時00分 公開
[井上翔ITmedia]
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ThinkPadは昔も今もこれからも「ビジネスツール」

 まもなく誕生から四半世紀(25年)を迎えるThinkPadは、「ビジネスツール(仕事の道具)」であることを一貫した開発理念として持っている。ITが進歩し、いつでもどこでも仕事がしやすい環境が整っていく中で、「お客様(ユーザー)がオフィスから離れても、生産性をより発揮できるようにするにはどうしたらいいのか」(内藤氏)ということを常に念頭に置いて開発をしているという。

 内藤氏がユーザーにこのような話をすると、「私は24時間仕事をするのは嫌だ」という反応もあるそうだ。しかし、真の意図は「今まで使い道がなかった時間、例えば電車・新幹線に乗っている時間や飛行場での待ち時間で仕事を効率的に済ませて、個人の時間を増やしてほしい」という点にある。

 この理念は、ThinkPadの開発者たちの間にも共有されている。内藤氏は「あなたが何(の開発)を担当していようとも、あなたが作ったThinkPadはあなたが説明できるように理解しなさい」と常に開発者に話をしているという。この理念はレノボ・ジャパンになってから入社した若手の開発者にも共有され、それを昇華したものとして「ThinkPad開発哲学の木」が生まれている(参考記事)。

ThinkPadの開発理念 ThinkPadは「ビジネスツール」であることが最大の開発理念である
ThinkPadの開発理念の木 ThinkPadの開発に携わる従業員に配布される「ThinkPadの開発理念の木」のプレート。従業員証と一緒に挟みこめるようになっている。以前の記事で紹介したものから少しデザインが変わっている

 先述の通り、2005年にIBMのPC事業はLenovoに買収された。「ThinkPadはこれからどうなってしまうのか?」という不安の声に対して、内藤氏は「3年間(2008年まで)は変わらない」と宣言し、実際に3年間はThinkPadに大きな変更を加えなかった。「本当は進化のために変えたかった」(内藤氏)部分もあったが、ユーザーの不安を払拭(ふっしょく)することを優先した結果だ。約束の3年経過した後は、守るべき点は守りつつ、時代の変化に合わせて変えるべき点は変えるようになった。

 このような取り組みの成果もあってか、IBMからLenovoに移管した後もThinkPadの販売台数は伸び続けている。

ThinkPadの特徴である堅牢(けんろう)性のテスト施設 ThinkPadの特徴である堅牢(けんろう)性のテスト施設。実際にユーザーのもとへ出向き使い方を調査した結果生まれたものだ
2005年レノボへ 「ThinkPadは変わらない」というメッセージを伝えるために、3年間はThinkPadに大きな変化を加えなかった

 Lenovo内部では、2012年以降に発売したThinkPadを「第5世代」と位置付けている。この世代では、タブレットやYogaタイプの2in1など、ThinkPadの形態の多様化が一層進んだ。一方で、ThinkPadの基本に立ち返る意味でクラムシェルモデルの強化も行っている。

第5世代ThinkPad 2012年モデル以降のThinkPadでは、形態の多様化が進む一方で源流であるクラムシェルモデルの製品力強化も行っている

大和研究所のこれから

 先述の通り、LenovoのノートPC全般の研究・開発の研究開発拠点となった大和研究所。Lenovoの「JAPAN TEAM」として、NECPCの米沢事業場とともにLenovo PCの技術開発をけん引し、日本の製造・開発の競争力のモデルとなるべく日々取り組んでいる。

 もともとメインフレーム(大型コンピュータ)を手元に置きたいという要望から生まれたPCは「生まれがオフラインデバイス」(内藤氏)だった。一方で、スマートフォンは「ネットワークがないと何もできない、クラウドの申し子」(同氏)でもある。両者が融合していく世の中では、オフィスではより効率的かつ使いやすいデバイスが求められる一方、家庭では機械が人間の方に歩み寄ってくることが現実味を帯びる。

 その時代に向けて、ユーザーを支え新しい提案をするためにどのようなスキルを身につけるべきか開発者たちと日々話しながら、新しい姿を模索していくという内藤氏。今後は「世の中にあるものを全て集めてきた」(内藤氏)疑似ホームを作り、実際の利用環境により近い状態での研究開発も行っていくという。

大和研究所の今後の取り組み 今後は、NECPCの米沢事業場と共同でPCの研究開発を進めると同時に、研究成果の他分野への応用を進める
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