ThinkPadの開発を主導する大和研究所では、2012〜2013年頃に「ThinkPadのあり方」についての討議が行われたという。この時期は、「2in1」や「タブレット」が普及し始め、タッチ操作に舵を切った「Windows 8」「WIndows 8.1」が登場した頃合いである。
PCの使い方が多様化する中で、誕生から20年を迎えたThinkPadの進むべき方向を検討した結果、ユーザーのニーズやイノベーションが「土」となり、ThinkPadという「木」をはぐくむ、という構図で開発哲学を図示した「開発哲学の木」が生まれた。この図は、ThinkPadの開発に携わる研究者などの社員証の裏に貼られていて、迷った時に見返せるようになっている。
この哲学を実践するべく、大和研究所では「Wow+」という取り組みを始めた。研究者は、ThinkPadの開発者であると同時に「ユーザー」でもある。そこで、ThinkPadユーザーとしての研究者の要望や不満を「ペインポイント」としてまとめ、それをもとにタスク(解決すべき課題)を洗い出し、解決していこう、というのだ。この取り組みを初めて以来、約1600個のペインポイントが集まったという。
この取り組みを通して生まれたタスクの1つが、「KY解決班」だ。名前で察しが付くとおり、「ThinkPadにもっと空気を読んでほしい」(大谷氏)という問題意識から生まれたものだ。
このタスクでは、「脇に(ThinkPadを)抱えている間は、画面が消えていてほしい」「キッチンでレシピを見ている最中にタブレットの画面が消えてしまう…」「あたりが暗くなってきたらキーボードが光ってくれればいいのに」といったペインポイントを、ThinkPadに搭載されている各種センサーを活用することで解決していった。この「成果」は、ThinkPad X1シリーズにおいて新機能として実装されている。
ThinkPad X1シリーズでは、他にも研究者がこだわり抜いた新機軸が盛り込まれている。レポートの中編で出たリチャード・サッパー氏の「時は、あるモノの真のクオリティを究極的に確立できる数少ない要素の1つである(Time is of the few things that may ultimately establish the true quality of an object)」という言葉は、デザイン面だけでなく技術面でも実践されている。
3回に渡ってお伝えしてきた「Think X1」ファミリーの発表会レポートは、今回で最終回となる。
記事掲載日(2月16日)現在、ThinkPad X1 Tablet、ThinkPad X1 YogaとThinkCentre X1のカスタマイズモデルが直販サイトで販売中だ。また、2月19日からはThinkPad X1 Carbonのカスタマイズモデルが直販サイトで販売開始する予定だ。Think X1ファミリーが気になる人は、まずレノボ・ジャパンのWebサイトでチェックしてみてほしい。
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