デザインとブランドは強固に結び付く――究極のビジネスツール「Think X1」ファミリー発表会(中編)ThinkPadは「芸術」である

» 2016年02月12日 12時15分 公開
[井上翔ITmedia]

 レノボ・ジャパンは2月9日、「Think X1」ファミリーの発表会を開催した。これに合わせて、Lenovoのチーフデザインオフィサーで、IBM時代からThinkPadのデザインに携わっているデイビッド・ヒル氏が来日した。

 ヒル氏はThinkPadのデザインの歴史と、それを踏まえたThink X1ファミリーのデザイン上の特徴を報道陣に向けて説明した。

ThinkPad X1ファミリー ThinkPad X1ファミリー。左から「ThinkPad X1 Carbon(第4世代)」「ThinkPad X1 Tablet」「ThinkPad X1 Yoga」
ThinkCentre X1 ThinkCentreで初めて「X1」を名乗る「ThinkCentre X1」

「時」はクオリティを究極的に確立する

Lenovoのヒル氏 Lenovoのヒル氏

 ThinkPadのデザインを語る上で外せない人がいる。リチャード・サッパー氏だ。1980年にIBMのチーフインダストリアルデザインコンサルタントとなり、1992年の初代ThinkPad(ThinkPad 700C)のデザインを担当した。「時の試練を耐え」(ヒル氏)、現在のThinkPadに至るまで貫かれる「Japanese Bento Box(松花堂弁当)」をモチーフとしたデザインコンセプトは、サッパー氏の代表作の1つだ。

 ThinkPadにとどまらず「ドイツの繊細さ、イタリアの粋、高いクオリティ」(ヒル氏)を持つデザインを数多く生み出したサッパー氏は、2015年12月に亡くなった。氏は生前、「時は、あるモノの真のクオリティを究極的に確立できる数少ない要素の1つである(Time is of the few things that may ultimately establish the true quality of an object)」という言葉を残している。

 「黒い長方形のシルエットと、真ん中に赤い“点”(TrackPoint)がある」(ヒル氏)ThinkPadのデザインは、ロゴ類を一切隠した状態でもひと目でThinkPadだと分かるものとなっている。サッパー氏の言葉の言葉を借りれば、ThinkPadは「時によって究極的なクオリティを得た」存在なのかもしれない。

ThinkPadのデザインの基礎を確立したリチャード・サッパー氏 ThinkPadのデザインの基礎を確立したリチャード・サッパー氏は、2015年12月に亡くなった

ThinkPadのデザイン手法は「ポルシェ911」のデザイン手法と似ている

 先述の通り、ThinkPadのデザインコンセプトは1992年から変わっていない。しかし、時が進めば「弁当箱」に入れる中身は変わり、それを「食べる」ユーザーの嗜好(しこう)も変化する。

 そのため、LenovoではThinkPadの新モデルのデザインにおいて「常に進歩し続けるための、革新的な洗練(revolutionary refinement)」(ヒル氏)を意識しているという。1から新しいデザインを立ち上げるのではなく、時代の要請に応じて少しずつ改良していく、というアプローチを取るのだ。ヒル氏は、このアプローチがポルシェの「911シリーズ」とまさしく似たものであるした上で、「一見遠回りだが、この(アプローチ)方がより良いものが作れる」と胸を張る。

松花堂弁当をモチーフにしたデザインコンセプト 1992年に生まれた松花堂弁当をモチーフにしたThinkPadのデザインコンセプトは……
2016年まで貫いている 2016年に至るまで貫いている。このことが、ロゴが無くても「ThinkPadだ」と分かるアイデンティティを構築した

デザインとブランドは強固に結び付く

 約24年に渡ってデザインコンセプトを堅持してきたThinkPadは「歴史の中でアイコン的なデザインの地位を確立」(ヒル氏)した。実用性、フォルム、文化的な意義を帯びるそのデザインは、ThinkPadのブランドそのものと切り離せないものとなっている。耐久性、品質、パワー、生産性といったThinkPadのブランドイメージは、デザインによって強化されているというヒル氏は、その結びつきを「(ブランドかデザインの)どちらか一方を話していても、もう一方がどうしても頭に浮かんでしまう」ほどに強固なものであると説明する。

ThinkPadのブランドとデザインは強固に結び付く ThinkPadのブランドとデザインは、お互いを想起させるほどに強固に結び付いている

 「デザインは、いつアート(芸術)に昇華するのでしょうか」と問いかけたヒル氏は、デザイナーの「芸術は絵画や彫刻だけではない」と続ける。そして、「芸術とは、その完璧な『型』を見つけた発想(考え)である(Art is an idea that has found its perfect form)」というデザイナーのポール・ランド氏の言葉を引用し、自身の考えを示す。ヒル氏は、発想が「型」となって現れている例として京都の桂離宮を示した。

ランド氏の言葉と桂離宮 ランド氏の言葉を体現している存在の1つが、京都の桂離宮だという

 ただし、ヒル氏は「デザインや芸術は『型』だけではない」とも語る。ポルシェ911のデザイナーであるフェルディナント・アレクサンダー・ポルシェ氏の「デザインは単なる芸術ではない、それは機能の優雅さなのだ(Design is not simply art, it is elegance of function)」という言葉を引用しつつ、「機能美」もまた芸術であると熱く語る。つまり、他のライバルにない機能性や使いやすさを提供することもまた「芸術」であるということだ。

機能美もまた芸術 フェルディナント・アレクサンダー・ポルシェ氏のせりふを引用しつつ、機能美の必要性を語る

ThinkPadのデザインは「完璧」を求め続ける

 「型」と「機能美」は一見すると相反する存在にも見えるが、2つが組み合わさることで、「強い印象(Emotion)」をユーザーに与えられるのだという。ヒル氏は、「Think X1ファミリーのデザインは、芸術の仲間入りをしていると思う。時を超えること、洗練されていること、目的(意図)を持っていること、ユニークであること、考え抜かれていること、優雅であること、熟達していること、正確であること、無類であること、完璧を求めること――芸術の要素を全て満たしている」と、自信を持って説明する。

とりわけ、「完璧を求めること(seeking perfection)」は「完璧の追求者(pursuit of perfection)」をうたって登場したThinkPad X1シリーズの前身「ThinkPad X300」から脈々と受け継がれるX1ファミリーの魂ともいえる概念だ。Think X1ファミリー、そして他のThinkPad・ThinkCentreの「単に変わるだけでは不十分で、より良くしていく」旅は、まだまだ続くことになる。

完璧を追い求めるThinkPadの旅はまだ続く 完璧を追い求めるThinkPadの旅はまだ続く

 「完璧の追求者」の最新版であるThink X1ファミリー。どこがどう、より「完璧」になったのだろうか。次回は、レノボ・ジャパンでThinkプラットフォームグループ部長を務める大谷光義氏のプレゼンテーションをお伝えする。

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