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Skypeのリアルタイム翻訳が日本語対応 SFの世界に一歩近づいた?鈴木淳也の「Windowsフロントライン」(3/3 ページ)

» 2017年04月07日 06時00分 公開
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Microsoft Translatorの仕組みと料金体系

 前述のように、Microsoft TranslatorはAzureで提供されるCognitive Servicesの1つで、「音声認識によるテキスト変換」と「自動翻訳」の2つの機能を組み合わせたTranslator speech APIという開発者向けAPIサービスで実現されている。

 ライブ機能においては、音声認識でいったん言語をテキストに変換して翻訳後、Text to Speechによる音声出力で通訳が行われている。この仕組みは「TureText」と呼ばれており、Microsoft独自開発の技術だ。音声認識も翻訳も機械学習を使った最新の研究の成果であり、APIを利用することで誰でもこの仕組みをアプリやサービスに組み込める。

Microsoft Translator 09 ライブ機能は2種類のAPIの組み合わせで実現される

 2種類のAPIはそれぞれ「Microsoft Speech Translator」と「Microsoft Text Translator」と呼ばれる。これらをアプリやサービスに組み込んで利用する場合、一定の時間または文字数までは無料で、それを超えると従量課金か、一定水準までの利用が可能なサブスクリプション方式となる。

 もっとも、ユーザーとしてMicrosoft TranslatorとSkype Translatorを利用するぶんには無料なので、最新のリアルタイム自動翻訳機能がどこまで使えるのかが気になる方は、アプリを導入して試してみてはいかがだろうか。

Microsoft Translator 10 Translator APIを利用した場合の料金体系。Azureの料金体系は定期的に変更されるため、最新のものはCognitive Servicesの料金表を参照のこと

通訳者や翻訳者の仕事、英語学習の将来はどうなる?

 ところで、今後はMicrosoft Translatorのようなリアルタイム翻訳サービスが進化して広まることで、通訳や翻訳の仕事が減り、さらには小学校でも義務化された英語教育に対する熱が冷めることになるだろうか。

 Microsoftによれば、同サービスの狙いはこうした仕事やモチベーションの置き換えではなく、現状でコストや時間の制約により多言語対応が行き届いていない業務を補助することにあるという。機械翻訳の利点は何よりスピードが速いことだ。人間による翻訳にコストをかけられない場合、スピード優先の解決策として大きな効力を発揮するとしている。商談やスピーチなど、重要な場面での置き換えはまだまだ先の話だという考えだ。

 筆者としては、清書なしの素の翻訳精度がかなり向上していることから、例えば素早く大量の外国語の文章を読んだり、手作業で翻訳する前にざっと基になるテキストを入手したりするときなど、いろいろ使えそうだと考えている。恐らく、単純なニュースのような文章を翻訳する仕事は今後人手を離れていくだろう。

 一方で文学的、専門的素養を求められる翻訳や通訳においては、引き続きプロフェッショナルな人々による仕事が求められる。間違った解釈が致命的となる法律や契約関連の文書では、機械翻訳を利用したことによる損失について、Microsoftが肩代わりすることはないだろう。利用は自己責任となるが、必要なものには投資しろというコスト対効果を試される場面になる。

 Microsoftはもう1つ興味深い事例を紹介している。社内用Webページで2言語以上のバージョンが用意されているケースは全体の3%程度しかなく、残り97%は母国語のみの対応だ。一方、世界的なアプリケーションやサービスに占めるGDPあたりの比率をみると、英語圏(インドを含む)だけだと32%にとどまる。これが英語、中国語、日本語、フランス語、ドイツ語までの主要5言語に拡大すると64%となり、さらにスペイン語、ポルトガル語、ロシア語、イタリア語、韓国語まで加えた10言語では81%に達する。

 つまり、Microsoft Translatorがカバーしている主要言語に対応するだけでも、経済規模としては8割以上をカバーできることになる。機会損失を避け、安価で手早くビジネスチャンスを増やすためにサービスを活用してほしい、というのがMicrosoftからのメッセージだ。

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