それでは、Microsoftが自ら投入するWindows 10 S搭載ノートPCとして同時発表されたSurface Laptopに話を移そう。
これまでのSurfaceのラインアップとは異なり、標準的なクラムシェルノートPCの形状を採用し、第7世代Core i5/i7や2256×1504ピクセルの13.5型タッチディスプレイといったスペック、アルミニウムとアルカンターラ(スエード調の人工皮革)素材を組み合わせたスリムボディーなどを考慮すれば、999ドルからという価格は比較的手ごろだと考えている。
タブレット形状で画面を寝かせて利用できるSurface ProシリーズやSurface Bookシリーズに比べ、斜めの状態になる不安定なディスプレイ構造でのペンやタッチ入力になるという問題はあるものの、このクラスのクラムシェルノート製品でのタッチスクリーン対応は、PCのペン入力を推進してきたMicrosoftならではのこだわりだ。
発表会のデモンストレーションでは、USBメモリを使ってSurface Laptopを高速(30秒程度)にセットアップできることが紹介されたが、これも教育用途では魅力だろう。
ただ1点、筆者が気になったのが、Surface Laptopのスペック表にある下記の表記だ。
Windows 10 S
Prefer to run non-Store apps? Easily switch to Windows 10 Pro for free until Dec 31, 2017
Introductory offer: Includes 1 year of Office 365 Personal5
Surface Laptopは6月15日以降に出荷が開始されるが、少なくとも米国では発売から半年はWindows 10 Proへの無料アップグレードが保証される。米国でWindows 10 Proのライセンスは199.99ドルで販売されており、この施策は実質的に200ドルの値引きに等しい。期間限定で割引販売するテコ入れ策にしても、これではWindows 10 Sが機能限定版であり、その点で魅力に乏しいことを認めてしまってるようなものだ。
かつての機能限定エディションがたどってきた道を考えれば、現在停滞しているWindowsストア普及の起爆剤として、Windows 10 SやSurface Laptopを展開するという意図が弱いように見える。最終的にはライセンス収入が得られるWindows 10 Proへの誘導を図りたいという意図も見え隠れしており、教育分野ではない一般向け市場での動向に不安を覚えるところだ。
もう1点気になったのが、「Windows Mixed Reality(MR)」のサポートについてだ。Windows 10 Sの発表会で「将来的にはVR HMD(ヘッドマウントディスプレイ)を使って教室でも3D体験を楽しめる」という点をアピールしていたが、そこまで到達するには時間がかかるかもしれない。
なぜならば、今回発表されたSurface Laptopを含むWindows 10 S搭載デバイスの下位モデルの多くは、Windows MRの最低動作スペックを満たしていない可能性が高いからだ。主に搭載するメモリの容量とGPUのスペックがネックとなり、Chromebook対抗をうたう低価格デバイスではWindows MRの利用が厳しいと予想される。
一般向けにWindows MR搭載デバイスが販売される段階では、現状のデベロッパー版から要求スペックが下げられるようだが、詳細は不明だ。Windows MRの一般向けリリースと搭載製品の発売時には、接続して利用するPC側の要求スペックがどうなるのかにも注目したい。
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