一度諦めた「夢」が現実に――ハウステンボスがIntelのドローンを採用した理由

» 2017年07月24日 19時45分 公開
[井上翔ITmedia]

 ハウステンボス(長崎県佐世保市)は、米Intelとhapi-robo st(東京都港区)と共同で「インテル Shooting Star ドローン・ライトショー」を8月5日まで開催している。光るドローン300台が佐世保の夜空を一糸乱れずに舞う――このショーの最大の魅力だ。

 ハウステンボスは以前からドローンを利用したエンターテインメントショーの開催を検討し、諦めた過去がある。「夢」が再びよみがえり、現実となった背景には、何があったのか。

今回使われたドローン Intelの3代目エンターテインメントショー用ドローン「Intel Shooting Star」。今回のショーでは、Shooting Starが300台使われる
ハウステンボスの富田直美取締役CTOとIntelのナタリー・チェン ジェネラルマネージャー 今回のイベントの“仕掛け人”であるハウステンボスの富田直美取締役CTO(左)と、Intel ドローンライトショー担当ジェネラルマネージャーのナタリー・チェン(Natalie Cheung)氏。富田氏はhapi-robo stの社長も兼任している
実際のショーの一節(その1) 7月22日に行われたショー初回の一節。Intelロゴを形づくっているのがドローンであることが形状からそれとなく分かる
実際のショーの一節(その2) 別の一節。「HTB 25」という文字からも分かる通り、今回のイベントはハウステンボスの25周年記念の一環でもある

一度は諦めた「夢」

 ハウステンボスの富田氏は、中国DJI製のドローンを日本で初めて操縦した人物としても有名だ。自らを「ドローン・ラジコンの神」と称するほどに、ドローンやラジコンに対する深い知見も有している。

 「3Dの絵を描き、音楽と一緒に舞うこと」こそがドローンの“究極の姿”であると語る氏は、あるネット動画をきっかけに「天才チームを集めて」(富田氏)エンターテインメントショー用ドローンの自社開発を検討した。しかし、相当な額の先行投資と莫大(ばくだい)な時間を必要とすることが分かり、自社開発は断念することにしたという。

笑いを交えて語る富田氏 笑いを交えていきさつを語る富田氏

そして「夢」をかなえるパートナーと出会う

 エンターテインメントショー用ドローンの開発を断念した富田氏。彼の「ドローンが3Dの絵を描き、音楽と一緒に舞う」という夢をよみがえらせるきっかけとなったのが、Intelのエンターテインメントショーに特化したドローン「Shooting Star」との出会いだ。

 2016年1月、ロボット開発会社(現在のhapi-robo st)の設立を検討していた富田氏は、「CES 2016」のIntelブースでRealSenseを用いたロボットやドローン(参考記事)を見かけ、Intelをはじめとする関連企業とのつながりを得た。

当時出展されたYuneecの「Typhoon H」 CES 2016でIntelが出展したYuneec製のドローン「Typhoon H」。IntelのRealSenseカメラを使って障害物を避ける機能を備えている

 その後、2016年6月にオーストラリア・シドニーで開催された「Drone 100」をきっかけに、Intelはドローンを使ったライトショーに本腰を入れ始めた。それを見た富田氏は「自分で夢をかなえなくても、誰かかなえてくれるものなのだ」と、Intelに対する期待を高めていった。

 そしてShooting Starが登場した後の2016年12月、国内初のドローンショーをハウステンボスで実現すべく、富田氏はIntelへの働きかけを開始した。まず、米国にいるIntelのドローンライトショー関係者にテレビ会議でハウステンボスがどういう場所なのかを説明した。次に、Intelのドローンライトショー担当ジェネラルマネージャーであるナタリー・チェン(Natalie Cheung)氏と、Shooting Starの開発担当者をハウステンボスに招き、いかにドローンショーに最適な場所であるかをレクチャーした。

 結果、チェン氏らにはハウステンボスが理想的な場所であることを分かってもらえた。しかし、相手はグローバルに活動するIntelである。「なぜ日本なのか?」「なぜハウステンボスなのか?」という点を中心に、Intel上層部との「ハードな話し合い」(富田氏)が何度も持たれたという。

 その結果、ハウステンボスが日本初のドローンライトショーの会場として選ばれたのだ。

ドローンショー会場周辺の様子 ドローンライトショーの会場周辺の様子。ハウステンボスが海と隣接した広大な私有地を保有していることがショーの実現に有利に働いた

 ドローンショーの夢を一度は諦めたハウステンボス。しかし、IntelのShooting Starと出会うことで夢は現実となった。

 一方で、Intelがエンターテインメントショー用ドローンに力を入れる理由はどこにあるのだろうか。Intelの立場から見たドローンショーへの取り組みと、実際の近未来・ドローンショーの様子は別記事でお伝えする。楽しみにしていてほしい。

取材協力:インテル株式会社

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