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» 2017年09月14日 06時30分 公開

本田雅一のクロスオーバーデジタル:「iPhone X」「iPhone 8」のどちらを選ぶべきか 実機で感じた決定的な違い (2/2)

[本田雅一,ITmedia]
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制約を取り払い、次の10年を見据える「iPhone X」

 一方、発表会で米Appleのティム・クックCEOが言及したように「iPhoneは過去10年で世の中を大きく変えた」存在だが、しかしその出発点は10年前であり、そこから積み重ねてきたさまざまなルールに縛られている。iPhone Xで廃止されたホームボタンもその1つだが、他にもたくさんの要素が考えられる。

 例えば、iPhoneのエコシステムを基礎部分で支える「アプリ」をシンプルに保つよう工夫をしていた。一例としては、ディスプレイのRetina化においては一気に画素密度を2倍にすることで、互換性と先進性の両方を担保するなどの工夫がある。

 もっとも、iPhone 6で5.5型の「Plus」が加わったことにより、このルール……開発側のインパクトを最小限に抑えながら進化していくやり方……にも破綻が生じ始めていた。ティム・クックCEOが「次の10年」について言及したのは、iPhoneシリーズを育てるために自ら課してきた制約を取り払い、新しいスタート地点を定義することで、新たなる推進力を得ようという意図があったからではないだろうか。

 彼は故スティーブ・ジョブズ氏の言葉を引用しながら「ボールを追いかけるとき、他の誰かを追いかけるのではなく、みんなが向かうところを目指して走る」といったニュアンスの言葉を話した。成熟したiPhoneのコンセプトを見直し、新しい目的地を目指すための新しい枠組み、それこそがiPhone Xだ(もちろん、Appleがそう言ったのではなく、筆者がそう感じたということにすぎないが)。

iphone x iPhone Xを発表する米Appleのティム・クックCEO

 iPhone 8は、iPhoneが10年で到達した成熟を味わえる製品だが、iPhone Xは大きく異なる。iPhone向けに開発されたハードウェア、ソフトウェアのプラットフォームや開発者コミュニティーを大部分で共有しながらも、互換性や操作の共通性などを意識して課してきた制約を外し、再設計した「iPhone Xという新しい製品シリーズ」と考えた方がいいだろう。

 制約を外せば、10年前よりはるかに進んだ「現時点の技術とビジョン」を元にプラットフォームを整理できる。今回のiPhone Xが、どこまでApple自身の考える将来ビジョンを反映できているのかは判断しかねるが、しかし新しい10年を進むためのスタート地点として用意した別モデルという印象は、決して外してはいないと思う。

 ただし、Appleのこの提案が開発者たちの心を捉えるかどうかは、まだ分からない。iPhone用アプリをiPhone Xに対応させるには、オリジナルiPhoneに対して3倍の画素密度や縦に伸びた新しいアスペクト比などをサポートせねばならず、ものによってはユーザーインタフェースの再設計なども必要になるだろう。

iphone x アプリをiPhone Xに対応させるには、従来と異なる画素密度やアスペクト比をサポートする必要がある

 iPhoneのAndroid端末に対する利点として、多くの端末で最新OSが動作し、最新機能を生かしたアプリを作りやすいという点があったが、あるいはiPhone Xがそうした部分を分断する存在になるかもしれない。

 一方でiPhoneとは別の製品シリーズとしてiPhone Xが定着し、開発者コミュニティーに定着してくるならば、「これからの10年の始まり」ともなり得る。iPhone Xは、顔の形状を認識する新しいセンシング技術を導入し、新たなジェスチャールールを盛り込んだ、マニアックな視点から言えば興味深い製品だ。

 プラットフォームとして見たiPhone Xという視点をいったん外すならば、サイズ感は程よく、しかし大画面で画質に優れ、iPhone 8と8 Plusの両方の長所を持ちつつ、さらに進んだ機能性を備える。もちろん、そのぶんだけ高価ではあるが、工芸品のように部品の合わせに隙間が感じられない仕上がりや質感は、その価格を払おうという層を満足させるものがある。

 定番製品としてのiPhoneの買い替えならば、iPhone 8シリーズをすすめるが、スマートフォンの未来を垣間見ようというならば、その原点となる「初代iPhone X」に触れるのも悪くはないだろう。

iphone x iPhone Xの背面。工芸品のように部品の合わせに隙間が感じられない仕上がりや質感は、満足感が得られるだろう
iphone x 発表会後のタッチ&トライでは、米Appleの最高デザイン責任者であるジョナサン・アイブ氏の姿も見られた

取材協力:アップルジャパン

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