前述のように、通常のFast RingとSkip Aheadにおける最大の違いは、Inbox Appの最新版をMicrosoftストア経由で受け取れるかという点にある。通常のFast RingではInbox Appも含めてビルドが更新され、こうした個別対応が行われなかったためだ。
今回、MicrosoftはWindows Insider Program参加者らの要望を受け、Skip Aheadではない、通常のRing(Fast、Slow、Release Preview)のユーザーでもInbox Appの個別アップデートを利用できる仕組みとして「Windows App Preview Program」の提供を開始した。
現在対象となっているのは次のアプリ群だ。
App Preview Programの利用方法は簡単で、各アプリの設定画面または「About」ページの中にある「Join preview」を選択するだけでいい。以後、プレビューが利用可能になったタイミングで通知され、最新版をダウンロードできるようになる。Skip Aheadでは標準機能として盛り込まれているため、この操作を行う必要はない。
モバイル広告プラットフォームのAdDuplexがまとめた2018年2月時点のWindows 10のバージョン別シェア状況を見る限り、ほぼ9割近いユーザーが最新バージョンのOS環境を維持しており、Microsoftが描く「Windows as a Service(WaaS)」の試みは一定の成功を収めているようにみえる。
一方で、ユーザーが毎年2回やってくる大型アップデートの季節で長時間PCが操作不能になる状況は、変わらずストレスだといっていいかもしれない。Fast Ringで頻繁にアップデートを受け取るユーザーはさらに実感していることだろう。
先ほど「Skip Aheadの季節が到来」と表現したが、これは“さらに”頻繁にアップデートが配信されてくることを意味しており、Fast Ring参加者はPCの操作不能時間がさらに伸びることになってしまう。
こうしたストレスの低減が重要なことはMicrosoftも前から把握しており、2016年末には「Unified Update Platform(UUP)」を発表した。これは差分アップデート方式を採用し、大型アップデートなどでのファイルサイズを最大3割程度まで縮小する仕組みだ。これまで例えば3GBのアップデート配信サイズだったものが、1GB程度まで縮小することになり、ネットワークへの負荷やダウンロード時間が短くなる効果が得られる。
Creators Update(1703)の時点で導入が行われ、多くのユーザーは既にFall Creators Update(1709)導入時に恩恵を受けているはずだ。
また米Windows Centralの2月14日の報道によれば、このアップデート作業をいったん中断することも可能になるという。
これはWindows Insider Programの責任者であるドナ・サルカール氏が同誌に語ったもので、何らかの理由でアップデートのダウンロードが中断しても(Wi-Fiの切断など)、途中の状態からダウンロードを再開できるようになるという。
大型アップデートや最新ビルドのWindows Updateでの適用において毎回問題となるのが、GB単位の大型ファイルを落とすのに非常に時間がかかることだ。単純に回線速度が速いだけではダウンロードは完了せず、アップデート開始から割と待ち時間を要する。
もし途中で中断した場合はエラーとなり、最初からやり直しとなるため、移動が頻繁にあるタイミングではPCをアップデートできない問題があった。UUPと合わせ、「アップデートが大きい」という問題はだいぶ解消されることになりそうだ。
そして今回サルカール氏が報告しているのは、アップデート時間そのものの短縮だ。「アップグレード時間をせめて3時間から1時間程度に短縮できないか」というユーザーの声に対し、同氏は開発チームに要望をプッシュしているところだと明かしている。
ファイルサイズの縮小とダウンロード作業の快適化と合わせ、アップデートのプロセスそのものを見直すことで、Windows Insider Program参加者だけでなく、WaaS(Windows as a Service)の対象となるユーザー全てのメリットとなる。非常に楽しみな動きだ。
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