Windows 10大型アップデート「April 2018 Update(1803)」の一般向け配信が、4月30日(米国時間)にスタートした。開発段階では「Redstone 4(RS4)」と呼ばれてきた、2018年春の分の大型アップデートだ。正規のWindows 10ユーザーは同日以降、ローリングアップデート方式で順次無料でのダウンロードおよびアップデートが可能となる。
同アップデートに関しては、以前に配信されたソフトウェアの登録情報から「Spring Creators Update」の名称がうわさされたり、バグ問題の発覚で当初の配信予定日から2週間近く遅れてしまったり、しまいには一部のリーク情報で5月上旬配信への延期がささやかれたりと、リリース直前に混乱もみられたが、最終的に「April」の名称を死守する形で“4月内”の配信に滑り込ませることができた。
もっとも、April 2018 Updateを前回の大型アップデート「Fall Creators Update」と比較すると、エンタープライズ向けを除き、多くの一般ユーザーにとって目新しい変更点が少ないかもしれない。
その理由としては、主に欧米圏で提供される機能やサービスに対応したものが多く(特に「米国のみ」というものが非常に多い)、日本のユーザーが恩恵を受ける機会が少ないという事情がある。音声アシスタント「Cortana」の機能強化や、「Edge」ブラウザのコンテンツ連動機能といった日本のユーザーが利用できないアップデートは、今後の拡充に期待したいところだ。
一方で、同アップデートにはユーザーインタフェース(UI)まわりで細かい変更が複数あり、OSの根幹に関わる部分でのメリットは享受できる。
新機能のうち、今回最大の目玉が「タイムライン(Timeline)」だ。過去30日をさかのぼって作業ファイルをたどれる機能で、「うっかり保存した場所を忘れてしまった」「ファイル一覧からどれが直前まで作業していたファイルか分からない」といった状況に陥ったとき、素早くサムネイルを選択して元の作業に戻ることができる。
このタイムラインで注目すべきは「デバイスをまたいで作業ファイルを呼び出せる」という点だ。Microsoftアカウントでひも付けられたものであれば、たとえAndroidやiOS上で作業していたOffice 365やEdgeブラウザのファイル履歴であっても、クラウドでの同期を経て作業ファイルにたどりつける。つまり「時間と場所を選ばずにファイル編集が可能」だというわけだ。
また作業ファイルだけでなく、Edgeブラウザでの閲覧履歴やMicrosoft純正アプリでの作業内容なども自動的に同期されるため、Microsoftアカウントさえ共通ならばPCをまたいで作業をそのまま引き継ぐこともできる(逆にいえば、Microsoftアカウントにログインして作業しなければ、こうした機能は利用できない)。
残念ながら、シェアが高いブラウザのChromeなど、同機能に未対応のアプリは履歴として残らないため、今後タイムラインがどれだけ快適に利用できるかは、各社のアプリやサービスの対応にかかっているといえる。
タイムラインと並んで作業ファイルを共有する仕組みとして、April 2018 Updateでは「近くの共有(Nearby Share)」機能が搭載されている。これは、近くにあるWindows 10デバイスを見つけて、簡単にファイルを共有できる仕組みだ。Apple系デバイスで利用できる「AirDrop」機能をイメージすると分かりやすい。
ただし、Apple系デバイスの場合、iPhone同士やiOSデバイスとMac間でのファイル転送にAirDrop機能が非常に重宝するのに対して、Windows 10のこのデバイス間ファイル共有機能はPCとPCをつなぐことのみが目的となる。
かつてMicrosoftがiPhoneやAndroidスマートフォンに対抗すべく投入した「Windows 10 Mobile」デバイスは、既に市場への終息宣言を出し、Microsoftからの製品提供も終了(現在は各小売店やメーカー在庫のみ)しているため、仕方がないところだ。
タイムラインとの併用を考えれば、「近くの共有」に与えられた役割は「アカウントが異なるWindows 10搭載PC同士でのファイル転送」という比較的限られた状況のもので、恐らく利用する機会はそれほど多くない。
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