とはいうものの、そうした機能を持つビジネスチャットツールが世の中にないのか、というと、そんなことはない。LINC Bizの動作デモを見る限り、機能面で他のビジネスチャットツールよりも豊富だ、という印象は持たなかった。正直、できることだけでいえば他社のビジネスチャットツールと大差ない、というか、他社ツールの方が豊富に見えた。
その点をどう考えているのか?
AIoTクラウドでLINC Bizのビジネスを統括する、クラウドソリューション事業部 ソリューション事業統括部長兼クラウド開発部長の音川英之氏は「カスタム開発による機能拡張を1つのウリにしていきたい」と話す。
ビジネスチャットはコミュニケーションツールだが、その上にはさまざまな可能性がある。コミュニケーションを軸にしたワークフロー構築はその典型だろう。業務報告やその集計といった業務はすぐに思いつく。ビジネスチャットツールの上で文書をやりとりしてもできるが、そこからさらに自動化が行えれば楽になる。また、社内問い合わせに関する自動化も、コスト削減や業務のスピードアップには効果的だ。ビジネスチャットがテキストワークである以上、いわゆる「ビジネス向けBotツール」との相性の良さは自明だ。
そこで同社は、自社で開発したビジネス向けBotツール「LINC Biz Bot」を同時に提供する。元々はシャープが家電機器向けで使っているBot技術を転用したものだが、シンプルにLINC Bizと連携できることがポイントとなっている。
ただ、ここまで来ても筆者はまだ「なぜシャープが、AIoTクラウドがビジネスチャットツールを作るのか」ということに懐疑的だった。世の中にビジネスチャットツールはあまたあり、それこそデファクトスタンダードも決まろうとしている。確かに、コスト面などで競争力を出すことはできるだろうが、並み居る強豪を押しのけてLINC Bizを採用するメリットが見えてこないからだ。
他のデファクトスタンダードは、すぐにサービスが終わることは考えづらい。また、特にMicrosoftは、音声認識や動画認識などの技術を活用し、ビデオ会議を内容で検索可能にする、などの対応も進めている。そうした企業の取り組みに対し、AIoTクラウドがどう対抗していくのか、見えなかったからだ。
その疑問を音川氏にぶつけると、彼はこう答えた。
「他社のチャットもあります。だからこそ『どれを導入すべきかのか』と考えた時、複数の企業とお付き合いがあり、そこでチャットツールが複数入り乱れる環境でこそ、LINC Bizを使ってほしい、と思っています」
現状はまだそうなっていないが、LINC Bizには、複数のビジネスチャットツールをまたぐツールにすることを想定しているという。LINC Bizを単体として使うのでなく、他社のビジネスチャットツールとの連携を考えているのだ。
そういう点も含め、カスタム開発や拡張がLINC Bizの強みだとすれば、まだ現状ではその価値が全て見えているわけではない、とも言える。有料プランのスタートがこれからであることなども含め、まだ評価を下す時期にない、とも言える。「シャープが手がける」「後発かつ日本内製」の価値をいかに伝えられるか、がんばりに期待したい。
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