新型コロナウイルスの影響で、リモートワークは(なかば強制的に)当たり前のものになってきた。基本は「Zoom」などのビデオ会議だろうが、「VR会議」という選択肢もある。
VRと聞くと、まだまだ先の話で縁遠いと思うかもしれないが、実際にはそうではない。既に国内にも、積極的に開発を進めている人々がいる。以前PC USERで、そんなVR会議システムの1つ「桜花広場」を開発している桜花一門さんを取り上げた。
昨今のリモートワーク増加の影響は、どう出てきているのだろうか? 前回の取材から1年を経て、VR会議の方向性はどうなっているのだろうか? 桜花氏から出てきたのは意外な話だった。
なお、本インタビューは当然のことながら、リモートで桜花広場を使って行われたことを申し添えておく。
前回の記事でも紹介したが、桜花広場について、改めて解説しておこう。桜花広場は、簡単にいえば「仮想空間でミーティングをするためのサービス」だ。
桜花広場は、仮想空間でミーティングするものなので、自分とミーティングをする相手は同じ「空間」を共有する。仮想の会議室に入って一緒に話すようなものだ。
「そんなの、別にビデオでの通話でもいいんじゃないの?」
そう思われそうだが、実際にはちょっと違う。
ところで読者の皆さんに質問だが、ビデオ会議の映像、本当に意味があるだろうか? ビデオ会議中、相手の顔を見ている時間はどのくらいあるだろうか? そこに顔があることで人は安心するけれど、それだけでは価値が薄い。桜花氏を含め、いわゆるVRクラスタの人々は、「VRと仮想空間がミーティングに向く」と推測している。理由は、身振り手振りやポインターでの「指さし」など、人の身体性を生かしたミーティングがやりやすくなるからだ。前掲の動画を見ていただければ、どんな感じになるのか分かっていただけるのではないかと思う。
2018年以降、「Oculus Go」「Oculus Quest」などの低価格で手軽なVR用ヘッドマウントディスプレイ(HMD)が出てきたこともあり、「VR HMDをかぶって簡単に会議ができるサービス」を検討する人々が出始めた。桜花広場もそうしたサービスの1つであり、桜花氏自身が「世の中から出社をなくす」をスローガンに開発を進めている。桜花広場自体は、Amazonでダウンロード版が販売されており、Oculus GoやOculus RiftなどのHMDや、Windows PCで利用できる。
さて、そんな桜花広場の今はどうなっているのか? リモートワークの増加もあって、多くの話があるのではないか? そう思って桜花氏に話を聞くと、面白い答えが返ってきた。
「そういう話もあるんですが、直近では『展示会が減っているのでリモート展示会をできないか』という声もありますね。まだ検討を始めたばかりですけど」
そして、VRによる会議の可能性を検討してきたはずの桜花氏から、ちょっと意外な言葉が出た。
「実はですね、最近、HMDを使わないPC版を推しているんです」
理由はシンプルだ。HMDを使うということは、必ずHMDがないと使えないということでもある。
「HMDが必要、ということになるとハードルが上がりますからね。参加者全員に強要するのは厳しい。なので最近は、普通のPCで使えるバージョンを推しているんです」
VRでなくなると意味がないのでは……と思われそうだが、実はそうではない。
あえて言っていなかったことがある。今回の取材は仮想空間を使う桜花広場で行われているが、HMDは使っておらず、普通のPCを使って行われたのだ。だが、そこでの対話はビデオ会議よりもある部分で質が高かった。
VR版の場合、自分のアバターの向きは「自分が向いている方向」、すなわち、自分が装着しているHMDの向きと一致していた。だから一体感があって分かりやすいとされてきたのだが、PC版ではゲームでキャラクターを操作するように、キーボード+マウスで操作する。移動は「WASD」キー、視界の変更はマウスかカーソルキーなのだが、要はFPSゲーム(ファーストパーソン・シューター)などに近い操作感だ。
「若い世代だと、『Minecraft』などをやるのに『WASD』キー+マウスという操作に慣れていたりもするので、意外とこれでもいけますね」と桜花氏は言う。
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