ボディーの大型化により、内部構造が大きく変わっているのも1つの特徴だ。これまでのNUCはシステムボードにプロセッサがはんだ付けされており、ボード1枚で機能が完結していた。しかしQuartz Canyonの場合、CPUやチップセットをあらかじめ組み込んであるカード型のモジュールユニット「Compute Element」を、シャシー内のベースボードにある専用スロット(PCI Express x16形状)に差し込むことで動作する。
メモリとストレージはCompute Element側に取り付けるが、ベースボードには別途PCI ExpressスロットやM.2スロットが用意されており、こちらにグラフィックスカードなどを装着することで機能拡張が可能だ。
既に述べている通り、CPUはモバイルワークステーション向けのXeon E-2286Mだ。モバイル向けとはいえ、8コア16スレッド構成で定格動作クロックは2.4GHz、ブースト時の動作クロックは5GHzに到達するなど、特にブースト時の動作クロックの高さが目を引く。
ECCメモリの搭載やvProにも対応しており、小型化と高性能を両立したワークステーションを組み上げるのに適したSKUと言えるだろう。内蔵グラフィックスは「Intel UHD グラフィックス P630」で、グラフィックスカードを使用しない場合は背面のHDMI 2.0aポートから映像を出力する。
Compute Element内のメモリスロットは、最大容量64GB、DDR4-2666サポートのSO-DIMMスロットを2基用意。ストレージ搭載用のM.2スロットは、Compute Element側に2スロット(PCI Express x4またはSATA3接続)、ベースボード側に1スロット(PCI Express x4接続)を備え、計3基のM.2 SSDが利用可能だ。
電源ユニットは、FlexATX規格で容量500W、80PLUS PLATINUM認証の「FSP500-30AS」を標準で備える。PCI Express用の補助電源コネクターは8ピン×2を用意しており、補助電源が必要なグラフィックスカードも搭載できるが、カード長(約200mm)によってはそもそもシャシーに入らない可能性がある。
この世代のNUCと互換性のあるASUSのGeForce RTX 2070搭載カード「DUAL-RTX2070-O8G-MINI」のような製品もリリースされているので、こうしたグラフィックスカードを取り付けることで、従来のNUCを大きく上回る性能のマシンを組み上げられるわけだ。
インタフェースについては、ケースのフロント側とCompute Element背面にポートが用意されており、背面にはUSB 3.1 Gen 2 Type-Aポートが4基、Thunderbolt 3(USB 3.1 Gen 2)ポート2基の他、Intel製のギガビットLAN「i219-LM」「I210-AT」を利用できる。
前面部分にはUSB 3.1 Gen 2 Type-Aポートx2に加え、SDXC対応カードスロットを備えているのがNUCらしい。加えて、無線機能としてWi-Fi 6対応の無線LAN、Bluetooth 5.0を利用できる。
国外での販売価格はおよそ1700ドル前後だが、ベアボーンキットであるため、最低でもメモリとストレージ、OSを別途用意する必要がある。構造が独特ではあるものの、各パーツの組み込み方法を図解で示したクイックスタートガイドが付属することもあり、組み立て自体はそれほど困難ではないはずだ。
一般的なデスクトップPCと比較しても高水準の性能を発揮しつつ、グラフィックスカードを搭載できるPCとしては最小クラスのフットプリントを誇るため、限られたスペースでワークステーションを使いたいユーザーには強く刺さる製品と言えるだろう。
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